『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて

『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて

未来に向けた神戸港の再生

 中突堤を中心とした地区は、最も「神戸港らしい」エリアといえるだろう。四国、九州への定期旅客船や大阪湾クルーズ客船などの拠点だ。ユニークな「神戸海洋博物館」のあるメリケンパーク、港のランドマークとなっている「神戸ポートタワー」も旅情を誘う。対岸の商業施設「モザイク」や、レストランとして解放されているレンガ倉庫周辺にも、訪れる人の流れが絶えない。「神戸の特性を上手に活かしながら市街地と連動した『みなとまち神戸』の形成を進めています」と語るのは、神戸市みなと総局
 技術本部の豊田巖計画課長だ。海と船に親しめる都心ウォーターフロントの創造を基本テーマに掲げ整備を進めているという。「神戸の平地はとても狭いんです。水辺から山まで最も距離の短いところだと約2km程度しかない。そこに幹線道路、鉄道が走り、人口が集中しているんです。国際会議場や展示場など文化的な施設を新たに街の中に整えることが困難な状況にあったのは事実です」。土地を求めて海に目を向けるようになったのも必然といえる。昭和40年代、急激に発展したコンテナ物流に対応する港湾機能の拡充も大きな課題だった。その象徴となる整備事業が「六甲アイランド」「ポートアイランド」の人工島造成だ。現在ではコンテナ基地として神戸港の物流を担うと同時に、都市機能を擁する海上都市として市民生活を支えている。「ポートアイランドの中央より東側を物流空間、西側を親水空間として港湾空間を再構築する計画を進めています」。計画の西側、親水ゾーンでは種々の計画と連携した産業の育成、親水施設の整備を目指す。御影石の突堤が美しい新港地区の突堤付近もにぎわいのある空間の創出が期待されている。東側の物流ゾーンは岸壁の増深やコンテナヤードの集約などを含め、既存の施設を有効活用することで物流機能のさらなる強化が可能だという。
 さらに、ポートアイランドと新港突堤を結ぶ沈埋工法による海底トンネル「港島トンネル」も開通した。ポートアイランド南の沖合約3km造成中の神戸空港も平成17年度に開港予定だ。震災から10年、神戸港は「復興」を越え、新たなステージに向けて飛翔を続けている。豊田課長は神戸港のポテンシャルはまだまだ高い水準を維持していると語る。「神戸港は歴史、伝統のある美しい港です。港湾労働者の技術、荷役に関する事務処理能力、梱包などの特殊技術など港湾運営におけるあらゆるノウハウも有している。どんな貨物でも取扱うことができる、そして豊かな暮らしが芽吹く港であると自負しています」。

親水性を重視した再開発が進む神戸港西側のウォーターフロント

神戸市みなと総局 技術本部
豊田巖 計画課長

ハーバーランドはにぎわいのある水辺として市民に親しまれている

ポートアイランドはオフィスビルやホテル、住宅などが建設され、海上都市の様相を呈してきた

日本の物流を担う六甲アイランドのコンテナターミナル

夕暮れ時には水際のプロムナードに人々が集う

写真/西山芳一

COLUMN

21世紀の物流を担う新しい港湾の誕生スーパー中枢港湾「阪神港」

 平成16年7月23日、「阪神港」が「スーパー中枢港湾」として正式に指定された。海外のハブポートを凌ぐポートサービスを実現するこの制度の導入が期待を集めている。
 「スーパー中枢港湾」とは、シンガポールや韓国・釜山などアジアの主要港に匹敵する国際物流拠点づくりを目的として国土交通省が策定した指定制度。大型公共事業の展開にメリハリをつけて重点的かつ効率的に港湾を整備しようとするものだ。スーパー中枢港湾に指定されると、港湾施設の集中整備に加え、港湾運営に関する規制緩和などが優先的に実施される。これによって入港後コンテナターミナルから貨物を搬出するまでの日数を現在の3〜4日から1日に短縮。さらに利用コストも3割減とすることを目標に掲げた港湾整備がスタートする。大阪、神戸港を含め北九州港、博多港など9港が応募し、最終的に神戸港と大阪港が連携する「阪神港」と「京浜港」(東京港・横浜港)、「伊勢湾」(名古屋港・四日市港)の3港が選定された。
 1977年に世界2位だった神戸港のコンテナ貨物取扱量は、阪神・淡路大震災の影響や利用コスト高などで2002年は29位(外貿コンテナ貨物量325万TEU)に後退。これを5年以内に約400万TEUまで拡大する計画を示していた。さらにポートアイランド二期地区におけるターミナルオペレーターの事業内容が明確に示されたことを背景として初の「スーパー中枢港湾」に指定された。今後、神戸港は連携する大阪港とともに手続きの一元化、トータル港湾コストの削減、大水深岸壁(−16m)やアクセスの整備により、海外主要港に負けないコスト、スピード、サービスの提供を目指していく。

写真:ポートアイランド二期地区のコンテナターミナル