『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて

『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて

「ハブポート構想」のステージとなる響灘地区

 平成8年3月、北九州市は港湾計画のマスタープランとして「北九州港響灘環黄海圏ハブポート構想」を策定する。これは西日本や環黄海地域から発生する北米、欧州向けのコンテナ貨物を中継する港湾機能の確立を目指した北九州港整備の根幹をなす長期計画だ。地理的に見ても大陸に近く、成長著しいアジア諸国と日本、そして世界をネットワークする北九州港の挑戦はこのハブポート構想から始まっている。コンテナ物流が主流となったいま、船舶は大型化の傾向にあり、大量輸送を旨とする船は寄港数を制限して物流コストを抑えようとする。その結果、貨物は基幹となる港に集約され、そこから改めて他の港に分散、回送される。後背地の貨物だけではなく、こうしたフィーダーサービス(供給網)によって近隣諸国の貨物を集積し、本航路との結節点となる港湾を「ハブポート」という。「ハブ」とは車輪の車軸をさす。自転車の車輪に例えれば車軸から伸びるスポークは各港へ展開する航路ということになる。北九州市は東アジア物流における車軸、ハブポートの構築を目指している。北九州市港湾局の久保田裕明企画調査係長に構想の概要を聞いた。「近年、中国や韓国のコンテナ量が急増し、日本の港に寄港せずに直接北米に向かうようになったんです。そこで環黄海圏のコンテナを一旦ここ北九州港に集積し、北米航路の船に積み替えるためのハブポートを創ろうというチャレンジが始まりました」。北米航路のうち日本海側を北上して津軽海峡を抜けた方が、太平洋側を回るより最大で2日間の輸送日数短縮が可能になるというメリットもある。
 この構想のメインステージとなるのが響灘の臨海埋立地だ。2000haに達する響灘地区の東西をまたにかけた広大な物流基地で、−15m〜−16mの岸壁を6バース有する高規格コンテナターミナルの整備が平成32年の全体供用を目標に進められている。完成すれば全体で約150万TEUのコンテナを取扱うことができると期待されている。その第1期事業となる「ひびきコンテナターミナル」の供用開始が目前に迫っている。現在、海面処分場として浚渫土を活用して造成された岸壁が4バース概成、ヤードの舗装も完了した。ガントリークレーンの設置が年明け早々に行われ、来年春にはコンテナターミナルとして供用される予定だ。現在のコンテナ拠点である太刀浦のコンテナターミナルは中規模クラスの船による中国、韓国、台湾といったアジア航路に対応、響灘地区は北米、欧州を結ぶ基幹航路を支える大型船の拠点となる。ハブポート実現に向けた基盤整備は着々と進行している。

ハブポート構想の中核となる響灘地区の全体構想(イメージ)(資料:北九州市港湾局)

新門司地区には国内各地を結ぶ長距離フェリーの基地が整備されている

北九州市港湾局 久保田裕明 企画調査係長

環黄海圏(資料:北九州市港湾局)

太刀浦地区には北九州港全体の90%のコンテナが集中する