『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて

『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて

効率的、機能的な港湾を目指して

 名古屋港の年間貿易額は約10兆円、日本全体の貿易額の約10%を占め、さらに貿易黒字額の44%にあたる4兆円という金額をはじき出している。まさに日本経済を支える国際総合港湾といっても過言ではない。
 その名古屋港の中心に位置する金城ふ頭は、港の商港機能の中枢となっており、総面積191万㎡、岸壁の総延長は6,350mに達する。完成車を中心とした広範な外貿貨物を扱っており、このふ頭だけで年間2,800隻もの船が接岸する。名古屋港の象徴でもある自動車運搬船も接岸する。5万tを超える船体は水面から25mの高さを持ち、巨大なビルが海上に浮いているような錯覚を起こす。さらに国際展示場や、船舶情報を管理する船舶運航情報センターなども擁する複合的なふ頭だ。
 その西側に隣接するのが飛島ふ頭だ。ここは水深−15mの岸壁、オーバーパナマックス型船に対応した大水深コンテナバースを有し、北米、ヨーロッパ航路の船舶を中心に利用されている。ふ頭の南側では新しいコンテナターミナルの整備が始まっていた。名古屋港管理組合企画調整室の大森直樹課長にお話を聞いた。「水深−16m、延長700m、奥行きは500mにもなる広大な高規格コンテナターミナルの1バース目の整備に平成14年着工したところです」。完成すると現在検討が進められている国内初の自動荷役システムの導入など、次世代型の画期的なコンテナターミナルが出現する。
 さらに次世代に向けたハード、ソフト両面の整備も進められている。「鍋田、飛島ふ頭において名古屋港のコンテナ機能の二大拠点化を図り、さらなる効率化を実現します。金城ふ頭は、今後車の積出バースとしての機能を強化します」。各々のふ頭が持つ機能を集約し、全港レベルでより効率的な荷役、物流システムの構築に取り組んでいるという。「公共コンテナバースを長期リースで提供し、利用者が自ら経済的にコンテナバースを運営できるようにする構想もあります」。これらの施策に加え、ターミナルシステムの高度化などITの推進や、24時間フルオープンなどによって、港湾コスト3割削減を目指している。
 貿易額では日本一の名古屋港も、世界レベルでコンテナ取扱量をみると29位。アジア主要港に大きく水を開けられている。わが国港湾の共通課題である高コスト構造は、名古屋港にも当てはまるが、これが大きな要因になっていることは否めない。24時間眠ることなく稼動する経済的な港、新生名古屋港が近い将来新しい日本の港湾の姿を見せてくれるかもしれない。

名古屋港管理組合 企画調整室 大森直樹課長(左)と、同 小池信之主幹

ガーデンふ頭は市民の総合親水エリア

最新の耐震強化岸壁でもある鍋田ふ頭

航路整備には大型の浚渫船がフル稼動している

港区の中央に位置し今も再開発が進む名古屋港の中枢、金城ふ頭