『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて

『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて

市民、地域とともに築く港

 鳥取港は東から「千代地区」「賀露地区」「西浜地区」という3つの地区からなっている。千代地区は千代川の付替工事によって埋立地として造成された。古くから港の中心を形成していたのは賀露地区だ。西浜地区も漁業、観光拠点として新たに整備された。鳥取港の現況について鳥取県県土整備部空港港湾課の田所篤博課長にお話を聞いた。「現在、鳥取港では、直轄事業の第一防波堤の延伸工事や、新たな西浜航路の整備が進められています。今後、耐震強化岸壁などの整備も展開されますが、平成2年に千代地区が供用され、西浜地区も漁業地区として平成11年に稼動しているので、港湾としては概成されたといえます」。これからはその港を活かす「仕組み」の整備がテーマということだ。西浜地区には商業施設と美しい砂浜が整備された。賀露地区の町並みを活かした海沿いの遊歩道も完成間近だ。千代地区では車の数も増えている。「新しく整備された港が開放され、人の流入も活発になり町は随分とにぎやかになってきました」。こうした状況は望ましいことだが、地域住民や漁業関係者に多少戸惑いがあることも否めない。整備、開発のスピードとそこに暮らす人々の想い、そのバランスが大切だという。しかし、市民からは港湾管理に対する要望も寄せられ、自由な意見のやりとりができる「いい関係」ができあがっているという。「賀露の人たちは港や海岸に対する関心がとても高いんです。海水浴場の運営や、イベントについても市民と連携しながら進めています。対話をくり返すことによって港全体の活性化につなげていきたいと思っています」(田所課長)。

 港湾の整備を現場において維持管理し、入出航の手続きなどを担当するのは鳥取県鳥取港湾事務所だ。ここで港を訪れる多くの船を見守ってきた伊藤亮所長にお会いした。「鳥取港はコンパクトで穏やかな港です。それでも、新しい漁港エリアや貨物船が入出港する千代地区は活気がありますよ。取扱貨物は砂や石材などの建設資材が主で、これらを運ぶ1万2千t級の船が頻繁に入港しています」。ただ欠点として少々狭いことがあげられるという。大型の船舶は自力で回頭することが難しい。さらに小型の漁船やプレジャーボートが港内にひしめいている。民家も少なくない湖山川の川岸にも多くの船が係留されている。これらを一括管理するため、350隻近い小型船を収容可能な新しいボートパークの整備にも着工した。「西浜地区から緑地を経て賀露地区のボートパークまで、鳥取港全体が“公園”といえるような港になればいいですね」。伊藤所長の言葉が心に残った。

鳥取県県土整備部空港港湾課田所 篤博 課長

平成11年にオープンした千代地区のボートパーク

第一防波堤のケーソンも千代地区で製作されている

千代地区の25t吊りクレーンも休む時がない

鳥取県鳥取港湾事務所 伊藤 亮 所長

湖山川のほとりにも多くのボートが係留されている

「海友館」では鳥取港の最新情報を楽しみながら知ることができる

賀露地区と西浜地区を結ぶ親水緑地