『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて

『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて

開かれた港として生まれ変わる高知港

 「港を起点に単独で整備を進めていくのではなく、町から港をみつめ、人と港をつなぐ、これからの港湾整備にはそんな視点が必要ではないでしょうか」。お話しを伺った高知県港湾空港局の坂本良一港湾課長は次世代に向けた高知港整備のビジョンをこのように語る。市民生活とリンクした港づくり、その中心となるのが昨年から展開されている「高知港ハーバーリフレッシュ」だ。

 この計画は高知港に潮江、弘化台、三里の3つの交流拠点を形成するため、それぞれのエリアに特色を持たせたウォーターフロントを構築しようとするものだ。加えて高知港の港湾計画では現在整備が進む「高知新港」の機能を最大限に活かすため、浦戸湾内の物流機能を除々に新港にシフトして全体としてさらに機能的、合理的な港の創造を目指している。「ハーバーリフレッシュでは開かれた港を実現するために昨年度から地域住民と港湾関係者、市、県、国が一体となって委員会形式でプロジェクトを展開しています」(坂本課長)。

 「潮江地区」は市街地に近接し、「土電」と呼ばれ親しまれている路面電車やバスを利用して市民が訪れやすい環境が整っている。ここでは「集いの空間・遊びの空間」として市民が楽しめる場の創出を目指す。高知の台所ともいえる中央卸売市場がある「弘化台地区」は「食の空間」として地場の食材を核にした多面的な食文化の発信拠点として期待されている。「高知新港」を擁する「三里地区」は広大な土地を舞台として最も自由に夢を描けるエリアと言えるだろう。ここは「国際交流」「太平洋」をキーワードに「文化交流・体験学習の空間」と位置付けられている。

 さらに重要な課題である港の安全性の確保について、坂本課長はこう語る。「高知は地震による津波の被害を受けやすいんです。室戸、足摺まで両手を広げるように”いらっしゃいませ”とばかりに太平洋に臨んでいるのですから。そうした自然災害を最小限に止めるための防災システムとして『津波高潮防災ステーション』の構築が策定される予定です。」実際広大な浦戸湾を取り囲む防潮堤や、河川と港を隔て市街地への浸水を防御するいくつもの排水機場が町を護っている。これからは避難経路を示すサイン計画や、救援物資輸送の拠点整備など、港における確実な防災システムが進められるという。

 「ハーバーリフレッシュ」は、今年2月に第2回目の調査検討委員会が開催され、企業活動との共生、3地区の役割分担などについて活発に意見が交換された。計画自体は始まったばかりだが、徐々に形を現していく高知港の未来に期待が膨らんでいく。「決して短時間で実現する計画ではありませんが、新しい高知港を創造するため、市民と一緒に考えていこうと思っています」(坂本課長)。

災害から町を護る排水機場は港内に8ヶ所整備されている

フェリーふ頭は耐震強化岸壁として整備された

国際定期コンテナ航路が2航路就航する高知新港のコンテナヤード

高知ICと新港を結ぶ臨港道路

輸入促進と高知県産業の活性化をサポートする高知FAZ(輸入促進地域)

古くから県内随一の海水浴場として親しまれる種崎海水浴場