『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて

『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて

波穏やかな国際物流拠点仙台港区

 仙台港区は比較的若い港湾と言える。昭和39年に新産業都市の指定を受けたのを機に工業港として港湾計画が策定された。太平洋の荒波が打ち寄せる砂浜を開削し陸側に大きく掘り進める掘込工事が開始されたのは昭和42年。東北地方における流通港湾の必要性が高まったことを受け、工業基地としての機能に商港機能が追加されて4年後に開港した。

 幅300〜400mの中央航路と泊地が4km近く掘り込まれた上に港口と沖合の防波堤に護られた仙台港区は波穏やかな理想的な物流港と言えるだろう。北米、中国、韓国、東南アジアをダイレクトに結ぶ国際コンテナ定期航路の他、東京、横浜港を結ぶ内航フィーダー航路(特定のコンテナ港を結ぶ航路)も充実しており、東北地方の貨物が低廉なコストで直接海外に輸出入される。この港区の優れた物流機能を象徴するのが南側の港口部に近い「高砂コンテナターミナル」だ。平成8年から供用を開始したこのターミナルは国際、国内の主要航路の拠点となっている。昨年水深−14mの2号岸壁が供用を始め、5万t級の大型コンテナ船にも対応できるようになった。平成13年度のコンテナ取扱貨物量は前年比12.4%の伸びを記録し、港区でも最も活気のあるエリアだ。今年2月に高さ68m、総重量約800tの東北では最大級、3基目のガントリークレーンが完成し、一層効率的な荷役作業が可能となった。

 「南側が工場地帯、対岸の北側には物流施設や発電所などのエネルギー基地が集中しています」という松澤班長の言葉どおり、この高砂コンテナターミナルから港奥部に向かうと製鉄、ゴム、食品などの工場が整然と建ち並んでいた。回り込むように北側に渡ると雷神埠頭、フェリー埠頭、中野埠頭と物流埠頭が続く。港口北側に並ぶタンク群は精油所と東北電力新仙台火力発電所だ。南側と北側に港湾機能が効率的に分散して配置されている。

 また仙台港区はこのエリアが輸入促進地域(FAZ)に指定されているため、貿易をバックアップする施設も多い。その中でも仙台港国際ビジネスサポートセンター「アクセル」とみやぎ産業交流センター「夢メッセみやぎ」は港区のシンボルともいえる施設だ。前者は貿易状況の広報活動や、輸出入製品の紹介の拠点となっており、企業のオフィスや展示施設として「アクセル」の愛称で親しまれている。またメッセは人、情報、モノが集う未来に開かれた交流拠点だ。7,500㎡を越える東北最大の展示ホールを初め会議棟や屋外展示場が整備され、見本市やコンベンションが開催されている。どちらも近代的な建物で港のランドマークになっている。

 仙台港区の最奥部の「中央公園」は憩いの水辺として市民に解放されている。広大な園内には展望台、時計台、広場はもちろん、テニスコートや野球場など運動施設も整備され、休日ともなると多くの家族連れでにぎわっている。港区内にはこの他にも公園や緑地が点在している。「仙台市街から少し距離があるためまだまだ知られていない面もありますが、この港区には公園や干潟など自然と触れ合えるスポットも多いんですよ」と語るのは同土木部港湾振興室の大沼繁幸班長だ。確かにコンテナターミナルの南は美しい海岸で多くのサーファーでにぎわいを見せているし、その隣には自然の生態系を維持した蒲生干潟が広がっている。ここはシギ・チドリの飛来地として全国的にも重要な場所で、他にも貴重な種類の鳥も観察される。「魚釣りができるポイントもありますし市民にもっと港に親しんでもらえるよう広報活動にも努めています」(大沼班長)

フェリー埠頭は仙台港区の北側に位置する

高砂コンテナターミナルは仙台港区の心臓部だ(写真:宮城県土木部港湾課)

波穏やかな仙台港区にはエネルギー基地も整備される

中央公園から仙台港区の港口部を臨む

自然の生態系が残る蒲生干潟

みやぎ産業交流センター「夢メッセみやぎ」

高砂コンテナターミナルの裏手は絶好のサーフポイント

仙台港国際ビジネスサポートセンター「アクセル」