『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて
沖縄の物流・観光の拠点として県民の生活と経済を支える那覇港。港からは島を縦断する一本の国道が北に向かって伸びている。この国道58号線を辿りながら、様々な表情をもつ沖縄の海を訪ねてみた。
那覇港〜沖縄本島
表情豊かな那覇港で進められる県内初の港湾土木プロジェクト
南北約100Kmにわたって太平洋にゆったりと横たわる沖縄本島。ほぼ南端に位置する那覇市が島の「心臓部」であるとするならば、西側の海岸線に沿って北上する国道58号線はさしづめ島の「背骨」ともいえる幹線道路だ。その起点となる那覇港は県内で最大の商業港で、南から那覇ふ頭、泊ふ頭、新港ふ頭と、大きく3つの港区が隣接し、それぞれに特徴のある表情を見せてくれる。
那覇港は15世紀頃から日本、中国、朝鮮、その他南方諸国との中継貿易港として発展した。本格的な近代港湾としての開発が着手されたのは明治中期で、1915(大正4)年には1200t級の船舶が3隻同時に係留できる桟橋が完成した。戦後米軍に接収され大幅な改良工事が行われ、現在では新港ふ頭の水深-13mのバースを始め30を越える係船施設が整備されている。
なだらかな曲線が美しい泊大橋のたもとにある泊ふ頭の漁港。色鮮やかなミーバイ(アオブダイ)や、シロイカ、エビ等を満載して戻って来た漁船が、誇らしげに大漁旗を翻しながら次の出港を待つ。昼下がりのふ頭には家族連れの姿も見られ、のどかな佇まいに心がなごむ。打って変わって、泊漁港の北側、フェリーの発着場所となる新港地区は、那覇港でも最も活気にあふれているエリアだ。東京、大阪方面への船が引っ切りなしに出入港を繰り返し、工業製品を中心に、あらゆる物資を積載した貨物船舶で常時賑わっている。コンテナを搬送する大型トレーラーやフォークリフトが行き来し、巨大なガントリークレーンが絶え間なく動き続ける。
その新港で巨大な港湾プロジェクトが進められている。港と市街の慢性的な交通渋滞を解消するために、那覇ふ頭の港口部の空港側と対岸の三重城側を、海底のトンネルで直接結び付ける臨港道路計画だ。あらかじめ製作されたトンネル本体となる巨大な沈埋函8函を海底で連結し、全長724mにおよぶ海底トンネルを施工する「沈埋トンネル工法」が採用されている。現在、1号函のコンクリート打設が新港の那覇沈埋函製作工事事務所で行われている。五洋建設・新日本製鐵・三井不動産建設共同企業体の太田信之所長にお話しを伺った。「県内では初めての工法を採用する大型のプロジェクトですから、県内外からも大変な注目を浴びています。見学者数や取材依頼も1000人を超えました」と係留されている沈埋函の上で教えてくれた。「鋼鉄製沈埋函を海上で浮かせた状態でコンクリートを打設していくので、函の傾斜や変形を測定しながらコンクリートを均等に流し込んでいく工程は細心の注意が必要です」と語る太田所長は大阪、名古屋でも沈埋トンネル工事に携わってきたベテランの技術者だ。3月の1号函完成を目指して工事は順調に進められている。
昼下がりの泊漁港。静かな港は市民の憩の場でもある
那覇港に注ぐ国場川にかかる明治橋。ここを起点とする国道58号線は、沖縄本島の西海岸線にそって北端の辺戸岬、奥に達する
コンテナヤードからオフィス街へ抜け高台に向かうと、リゾートホテルが林立するエリアに出る。港湾部は物流、観光の拠点だ
物流、観光の拠点であるばかりか、発電所やコンベンションセンターなどが集中する那覇港の夕景