Umidas 海の基本講座

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潮汐のメカニズム
月の引力と、月と地球が同一の軸を中心とした公転運動の遠心力とは互いにつり合っている。しかし、月に面した地表では月への距離が重心よりも近いため、引力の方が大きくなって月の方へ引き寄せようとする力が働き、月とは反対側の地表では月からの距離が遠いため遠心力が勝り、月から離れる方向に力が働く。そのため月に面した地表、反対側の地表の双方で、水面を高めようとする起潮力が働く。


潮名

潮の干満の大きさなどの状態を表現する用語。

大潮
潮の干満の差が大きな状態、新月や満月の前後数日間。旧暦の1日または15日頃。

小潮
潮の干満の差が小さい状態で、上弦や下弦の前後数日間。旧暦の8日または23日頃。

中潮
大潮と小潮の間の期間で、旧暦の3日〜6日、12日〜13日、18日〜21日頃。

長潮
上弦、下弦を1〜2日過ぎた頃、干満差が一段と小さくなり、満潮・干潮の変化がゆるやかで長く続くように見える小潮末期。旧暦の10日と25日頃。

若潮(潮変わり)
長潮を境に大潮に向かって、潮の干満差が次第に大きくなる。このように潮が再び大きくなる状態を「潮が返る」といい、長潮の翌日を若潮または潮変わりと呼ぶ。

満潮と干潮はなぜ起こる?

 海岸の波打ち際が、時間とともに陸側へ深く入り込んだり、逆に沖へ遠ざかったりといった現象は、だれもが体験的に知っているだろう。しかし、なぜこのようなことが起こるのかという問いに対して、明解な答えを返せる人は、どれだけいるだろうか。
 潮の満ち引き、つまり海面の周期的な上下変化を潮汐という。満潮・干潮の時間や潮位の差などは、海水の慣性や海流、湾岸の形状などさまざまな要因によって左右されるが、潮汐の基本的な発生要因は月と太陽の力だ。
 月と地球はそれぞれ万有引力で引き合っているが、同時に月と地球との相互運動による遠心力が働いているため、両者の距離は常に一定に保たれている。つまり、地球は自転しているため、月の引力に引っ張られている反対側では、それと同等の遠心力が働いていることになる。そのため、月に面した海水が引力によって上昇して満潮になると、その裏側の海水も遠心力により満潮になる。すると当然両方の中間にあたる部分では、海水が満潮部分に持って行かれて干潮になるという仕組みだ。そして、地球は1日に1回自転しているため、満潮と干潮が1日に2回ずつやってくることになる。しかし、月の公転時間が地球の自転の時間とずれているため、満潮と干潮は毎日ずれていく。
 海面を引き上げる引力を起潮力という。太陽にも当然、起潮力はあるが、月よりも太陽のほうが、地球からの距離がずっと遠いため、地表での太陽の起潮力は月の約1/2に過ぎない。厳密に言えば、起潮力は天体からの距離の3乗に反比例する。上記の説明では話を単純化するため、月と地球の関係に絞ったが、実際に海面に働くのは、月と太陽それぞれの起潮力を足し合わせたものとなる。このことを念頭に置いて考えてみると、満潮と干潮だけでなく、潮の満ち引きの大きさの変化についても説明がつく。


釣り人の大きな関心事

 満潮時と干潮時の水位の差を潮差という。潮差が地球から見える月の形に関係することは昔から知られている。満月や新月のころ潮差が大きく、上弦と下弦のころは小さくなるのである。月の形は太陽がどの角度から照らしているかによって変わることはいうまでもない。つまり、月と太陽と地球の位置関係によって、潮差は決まるのである。
 月と太陽と地球が一直線に並んだとき、すなわち満月と新月のときに起潮力が最大となり、潮差が最も大きく開く。これを「大潮」という。反対に、地球から見て月と太陽が直角に位置するとき、すなわち半月のとき、両者の起潮力が打ち消し合って「小潮」が起こる。
 この大潮と小潮の時期がいつごろかということは、漁業関係者や釣り人にとって大きな関心事だ。一般に大潮のときには釣果がよいのである。その理由は、釣りを趣味とする読者には、いわずもがなだろう。潮差が大きくなると潮の流れが速くなり、プランクトンなどが流されやすくなる。すると、それを捕食する小型の魚介類や、さらに大型の魚介類も活発に動くようになり、釣り餌や仕掛け、漁網などに捕らわれやすくなるのだ。釣具店には週単位・月単位の地域ごとの潮汐・潮見表が置かれ、釣りの雑誌にも掲載されている。

大潮のメカニズム 小潮のメカニズム


潮の満ち引きと潮汐利用
 満月の夜には狼男に変身……というのは創作上の話だが、月の形に関わりの深い潮汐については、満潮の時に生命が誕生し、干潮時にあの世へ旅立つといわれる。実際、カニは年に1回、満月で大潮の満潮時に卵を生む。科学的に解明されているわけではないが、生命の根源である海の状態が何か大きな力を及ぼすと考えれば、あながち否定できない気になる。
 沖縄では干潮から満潮に移り変わる間に結納を始めて、満潮までに終わらせる風習がある。このため、日中に良いタイミングで潮が満ち引きする日に合わせて結納の日取りを決めるという。
 海外には風習ではなく、より合理的に潮汐を利用している例がある。それは潮汐発電だ。湾に大きな貯水池を作り、満潮時に海水を貯めて水門を閉じておく。すると干潮時には貯水地の水位と海面の水位には高低差ができるため、ここで水門を開けると水は勢いよく海へと流れる。この時、海と貯水池の間に設けられた水車が回転し発電されるという仕組みである。また、貯水池の水が流れ切った後に水門を閉じておけば、満潮時には今度は海水の水位の方が高くなる。この時に再び水門を開けると干潮時とは逆の流れが生まれ、これも発電に利用できる。
 世界最初の潮汐発電所はフランスの北西部ブルターニュ地方にあるランス潮汐発電所で、1966年に完成した。ここは平均8mという大きな潮位差に恵まれ世界で最大の規模を誇る。
 日本では潮位差が充分に大きな場所がなく、潮汐発電は実現していない。

カニは満潮時に産卵するといわれている