特集



仙台塩釜港(仙台港区)2011年5月18日撮影
3月11日の東日本大震災で甚大な被害を受けた東北・北関東地区の各港湾施設が、本格的な復旧・復興に向けて動き出した。被災した各港湾ごとに設置された復旧・復興協議会は、それぞれの港湾の復旧・復興方針などを盛り込んだ「産業・物流復興プラン」を作成。国土交通省東北地方整備局の東北港湾復旧・復興基本方針検討委員会(委員長・稲村肇東北工業大学工学部都市マネジメント学科教授)も、各港湾で出された同プランを総合的に調整した「東北港湾の復旧・復興基本方針」を固めつつある。津波防災対策に向けた、これまでの国の動きなどを整理するとともに、各港湾の復旧・復興方針をまとめた。(日刊建設工業新聞社)
2年以内に本格復旧を目指す
●物流基盤となる港湾施設の早期復旧を●
東日本大震災では、日本観測史上最大のマグニチュード9.0という巨大地震と、それに伴う大津波によって東日本太平洋沿岸各地で未曾有の被害が発生した。太平洋沿岸の各港湾施設も地震による地盤沈下、岸壁・エプロンの陥没、沈下だけでなく、大津波による防波堤の倒壊、コンテナ・完成自動車のふ頭用地への散乱ならびに航路泊地への流出など大きな被害が生じた。さらに荷役機械の浸水、上屋・倉庫の損壊、水域施設の埋没・洗掘、臨港道路を含む背後交通網のがれきによる寸断なども発生し、物流機能は完全に麻痺した。
震災後の懸命な応急復旧活動により、現在では一部の港湾施設の利用が可能になっているものの、その機能は十分とは言えず、港湾背後地に立地する企業物流に支障が生じている。東日本の太平洋沿岸地域の早期の復興には、物流基盤となる港湾の早急かつ計画的な復旧・復興が不可欠な状況となっている。また、地盤沈下や防波堤などの被災により、港湾背後圏が津波や高潮に対し脆弱な状態になっていることから、住民の安全・安心な暮らしを確保するためにも、まちづくりなどと連動した防災機能の強化が求められている。
●「対象の津波高を高くした整備は現実的ではない」●
国は、こうした港湾施設の甚大な被害を踏まえ、各種の検討組織を立ち上げ、今後の津波対策のあり方などの検討を進めている。最も早く津波対策の基本的な考え方が示されたのは、政府の「東日本大震災復興構想会議」(議長・五百旗頭真防衛大学校長)が6月25日に発表した「復興への提言〜悲惨の中の希望〜」だ。
提言では「この規模の津波を防波堤・防潮堤を中心とする最前線のみで防御することは、もはやできないことが明らかになった」との認識を示し、その上で「減災」の考え方に基づき、「これまでのような専ら水際での構造物に頼る防御から、『逃げる』ことを基本とする防災教育の徹底やハザードマップの整備など、ソフト面の対策を重視せねばならない」とし、ソフト・ハードの両面からの総合的な防災を求めた。
その翌日の6月26日に中間とりまとめを発表したのが、内閣府の中央防災会議が5月末に設置した「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」(座長・河田惠昭関西大学教授)。約1カ月の間に4回の会合を重ね、提言という形で今後の津波防災対策の基本的な考え方を示した。それによると、今後の津波防災対策について「切迫性が低くても東北地方太平洋沖地震や最大クラスの津波を想定し、様々な施策を講じる検討が必要」と指摘。ただし、「海岸保全施設の整備の対象とする津波高を大幅に高くすることは、施設整備に必要な費用、海岸の環境や利用に及ぼす影響などを考慮すると現実的ではない」とし、住民の避難を軸に、土地利用、避難施設、防災施設の整備などのハード・ソフトのとりえる手段を尽くした総合的な津波対策の確立が急務とした。
さらに、海岸保全施設等は「比較的頻度の高い一定程度の津波高に対して、引き続き整備を進めていくことを基本とすべきである」とし、従来の考え方を踏襲しながら比較的頻度の高い一定程度の津波高を想定した施設整備を提案した。また、仮に設計津波高を超えても「施設の効果が粘り強く発揮できるような構造物の技術開発を進め、整備していく必要がある」とも指摘している。
○東日本大震災復興構想会議(事務局・内閣官房)
- 東日本大震災による被災地域の復興に向けた指針策定を検討
- 6月25日に「復興への提言〜悲惨の中の希望〜」を作成
- 今後の地震動推定・被害想定のあり方、今後の地震・津波対策の方向性などを検討
- 6月26日に「中間とりまとめ〜今後の津波防災対策の基本的考え方について〜」を作成
- 秋頃に専門調査会とりまとめを行う
- 7月6日「津波防災まちづくりの考え方」を作成
- 全国の港湾における津波防災対策の総合的な方針の策定
- 7月6日に「港湾における総合的な津波対策のあり方」(中間とりまとめ)を作成
- 今年末に答申
- 被災地における海岸保全施設の復旧の基本的考え方
- 6月27日に「堤防高さの設定方法や堤防・護岸の復旧工法」を審議
- 9月に最終報告
- 8月中に「産業・物流復興プラン」を策定
- 8月18日に東北港湾の復旧・復興基本方針をほぼ固める
●二つのレベルを想定して対策を検討●
同専門調査会と並行して、5月から津波対策のあり方を検討していた交通政策審議会港湾分科会防災部会(部会長・黒田勝彦神戸大学名誉教授)も、7月6日に「港湾における総合的な津波対策のあり方(中間とりまとめ)」を発表。中央防災会議の提言を踏まえた上で、津波対策の構築には「津波の規模や発生頻度に応じて防護の目標を明確化して対策を進める必要がある」とし、二つのレベルの津波を想定した対策を求めた。
一つの目のレベルとなる「発生頻度の高い津波」に対しては、できるだけ構造物で人命・財産を守りきる「防災」を目指すとし、その津波防災施設の計画・設計にあたっては「堤内地への浸水(防潮堤からの越流)を防止するもの」と定義。二つ目のレベルとなる「発生頻度は極めて低いが影響が甚大な最大クラスの津波」に対しては、最低限人命を守るという目標のもとに被害をできるだけ小さくする「減災」を目指すとし、堤内地への浸水は許容するものの、土地利用や避難対策と一体となった総合的な対策を講じるという考えを示した。
被災防災施設の復旧計画の手順としては、被災前の防波堤・防潮堤の機能を基本にして、その配置や天端高を変えた複数の代替案を設定し、それぞれの案についての津波シミュレーションを行って浸水域、浸水深などを算出。その上で都市の土地利用・施設配置の代替案と突き合わせ、必要な防護目標(①人命を守る②財産を守る③経済活動を継続させるなど)の達成度や費用対効果を評価して策定するとした。
海岸を所管する農林水産省、水産庁、国土交通省の3省庁が事務局となる「海岸における津波対策検討委員会」(座長・磯部雅彦東大大学院教授)も5月から、海岸保全施設の復旧の基本的な考え方の検討を開始。6月27日に開いた会合では、堤防高さの設定方法や堤防・護岸の復旧工法などを審議、了承した。これを受け、農林水産省ら3省庁は、7月8日に被災した海岸保全施設の復旧にあたっての設計津波の水位の設定方法を各海岸管理者に通知した。
通知によると、設計津波の水位を設定する際には、まず過去に発生した津波の高さを歴史的文献や、土木学会など各機関が実施した痕跡調査などを活用して確認し、過去の津波実績とシミュレーションで出た津波の高さを地域海岸(ユニット)ごとにグラフ化し、堤防で防ぐ対象とする津波の高さを確定するとした。対象とする津波は一定の頻度(数10年から百数10年に一度程度)で発生が想定される津波群とし、この津波水位を基に、環境保全、周辺景観との調和、経済性、維持管理の容易性、施工性、公衆の利用などを総合的に考慮し、海岸管理者が最終的な高さを決定するとしている。この通知を受け、宮城県や東北地方整備局、東北農政局らで構成する宮城県沿岸域現地連絡調整会議は、9月9日に宮城県沿岸域の海岸堤防高を決定した(表1参照)。
地域海岸名 | 設計津波の水位(対象地震) | 新設定 | 被災前堤防高 |
唐桑半島東部 | 10.3(明治三陸地震) | 11.3 | 4.5〜6.1 |
唐桑半島西部① | 10.2(明治三陸地震) | 11.2 | 4.0〜4.5 |
唐桑半島西部② | 8.9(明治三陸地震) | 9.9 | 2.5〜3.2 |
気仙沼湾 | 6.2(明治三陸地震) | 7.2 | 2.8〜4.5 |
気仙沼湾奥部 | 4.0(明治三陸地震) | 5.0 | 2.8〜4.5 |
大島東部 | 10.8(明治三陸地震) | 11.8 | 1.8〜4.5 |
大島西部 | 6.0(明治三陸地震) | 7.0 | 1.5〜4.5 |
本吉海岸 | 8.8(明治三陸地震) | 9.8 | 2.5〜5.5 |
志津川湾 | 7.7(想定宮城県沖地震) | 8.7 | 3.6〜5.1 |
追波湾 | 7.4(明治三陸地震) | 8.4 | 2.6〜4.5 |
雄勝湾 | 5.4(明治三陸地震) | 6.4 | 3.1〜5.9 |
雄勝湾奥部 | 8.7(明治三陸地震) | 9.7 | 4.1〜5.9 |
女川湾 | 5.6(明治三陸地震) | 6.6 | 3.2〜5.8 |
牡鹿半島東部 | 5.9(明治三陸地震) | 6.9 | 4.4〜5.1 |
牡鹿半島西部 | 5.0(チリ地震) | 6.0 | 2.9〜4.6 |
万石浦 | 1.5(チリ地震) | 2.5 | 2.6 |
石巻海岸 | 3.4(明治三陸地震) | 4.4 | 4.5〜6.2 |
松島湾 | 3.3(チリ地震) | 4.3 | 2.1〜3.1 |
七ヶ浜海岸① | 4.4(明治三陸地震) | 5.4 | 3.1〜5.0 |
七ヶ浜海岸② | 5.8(明治三陸地震) | 6.8 | 5.0〜6.2 |
仙台湾南部海岸① | 5.3(明治三陸地震) | 6.3 | 5.2〜7.2 |
仙台湾南部海岸② | 5.2(明治三陸地震) | 6.2 | 6.2〜7.2 |
●各港湾ごとに「産業・物流復興プラン」を作成●
こうした各種の提言や基本方針を踏まえ、各港湾・海岸管理者は現在、港湾施設や海岸保全施設の災害査定を実施しながら、今後の整備方針を検討中だ。同時に国土交通省では、被災地の産業復興にあわせた各種施設の復旧・復興が必要と判断し、被災した各港湾ごとに地元関係者らで構成する「復旧・復興協議会」を4〜5月にかけて設置した。各協議会では「新たな港づくり」の観点を取り入れながら、産業復興を支える物流機能のあり方や、産業活動・まちづくりと連動した津波防災のあり方を検討し、8月中に「産業・物流復興プラン」をそれぞれ策定した。各港湾の産業・物流復興プランに示された港湾施設の復旧スケジュールは表ー2の通り。また、プランの中にはふ頭や岸壁などの工事や供用時期なども示した詳細の復旧計画も盛り込まれている。
各港湾ごとの動きと並行して国土交通省東北地方整備局も、それぞれの港湾の役割や港湾相互の連携、共通課題に対する解決の方向性などを検討するため、「東北港湾復旧・復興基本方針検討委員会」(委員長・稲村肇東北工業大学工学部都市マネジメント学科教授)を5月に設置。同プランを踏まえた上で、東北の港湾の復旧・復興の基本的な考え方などをほぼ固めている。
同検討委員会が作成中の基本方針案では、東北の重要港湾9港の復旧方針と復興の方向性を提示。岸壁などの港湾機能をおおむね2年以内に本格復旧するスケジュールを明記する。港湾機能や各施設ごとの復旧スケジュールなどを示すことで、産業活動の再開時期などと歩調を合わせていく考えだ。
例えば、エネルギー産業では小名浜港、相馬港背後地に立地する火力発電所の復旧が進み、小名浜港の石炭輸入が増加、相馬港も年内に石炭輸入が再開される見込みになっているため、両港で石炭の輸入受け入れに支障がないよう必要な港湾施設の整備を進める。畜産業でも、飼料工場の生産再開にあわせ釜石港、石巻港、仙台塩釜港の港湾施設を復旧させる計画だ。

●産業復興にあわせて港湾施設を復旧●
製造業では内陸部にある自動車工場が4月中旬に、タイヤ製造工場が5月上旬にそれぞれ生産を再開。ただ、現状では代替港を利用しており、仙台塩釜港をできるだけ早期に復旧させ、コンテナやRORO、フェリーの航路の再開に向けた施設整備を急ぐ。地場産業でもある水産業は、久慈港が3月30日に、宮古港が4月11日にそれぞれ魚市場を再開しており、他港でも漁港機能を有する施設の整備を進める。
係留施設や防波堤の復旧では、必要なものから段階的に復旧を進める。岸壁やふ頭用地などの一部が地盤沈下した釜石港や大船渡港などでは、船舶の係留や荷役作業に支障が生じない高さまでのかさ上げを行う。
ただし、背後用地との連続性を確保する観点から、港湾利用者の意見を踏まえながら必要に応じて港湾施設の技術上の基準の範囲内でかさ上げ高さを調整する。
防波堤は、八戸港や釜石港、大船渡港、相馬港などで甚大な被害が発生した。このうち、八戸港は八太郎地区北防波堤が被災し、港内の静穏度が悪化。入港できない、あるいは沖待ちする船舶や荷役障害が頻発していることから、防波堤中央部から段階的な復旧を進め、早期に必要最低限の静穏度を確保する。相馬港も石炭取扱施設での静穏度確保を最優先として、早期に効果が発現する区間から着手し、段階的な復旧を行う。
岩手県の釜石港、大船渡港にある湾口防波堤は本格復旧工事を今秋に開始し5年以内に完成させる。これまで大津波に対し無防備だった宮城県の石巻港、仙台塩釜港を防潮壁で守る考えも提示。各港の防波堤などの施設高は現在進められている災害査定の中で定める方針だ。
●最大クラスの津波に「粘り強い構造」で対抗●
一方、災害に強い港づくりの視点からの検討も進め、その基本的な考え方も示す。地元自治体が作成する復興計画や防災計画などに盛り込まれた土地利用見通しなどを踏まえた上で、市街地の復旧状況などを加味した防護ラインの見直しを実施。防護ラインを形成する施設は、被災前の防波堤・防潮堤の機能を基本として、費用対効果なども評価しながら必要となる防護ラインや施設規模を決定する。
さらに、津波防災のソフト対策として「防災教育訓練」「情報提供」「港湾BCP(事業継続計画)」「避難対策」の検討事項なども盛り込む。このうち、「情報提供」ではGPS波浪計の観測データをリアルタイムで公開する情報伝達システムの導入について今後検討する。
また、想定を超える津波への対応では、最大クラスの津波に対しても倒壊しない「粘り強い構造」を目指すとし、防波堤マウンドの腹付け強化、ケーソン底部への摩擦増大マットの敷設、ケーソン中詰材の重量化などによる滑動抵抗の増大などの実験を通じて具体的な手法を確立していく。構造物の洗掘対策では、八戸港、相馬港の防波堤の復旧にあたり、マウンド被覆材の重量を増すなどの工法の導入に取り組む。このほか、地震時における港湾機能維持の観点から、耐震強化岸壁の配置などの検討も進める。
●物流機能の拠点である港湾の着実な整備を●
「東北港湾の復旧・復興基本方針」は近く、成案がまとまる予定。東北地方整備局は、この基本方針に沿って港湾施設の復旧を順次進めていく方針だ。
青森県八戸港から茨城県鹿島港までの21港(地方港湾含む)の公共岸壁373バース(水深4.5m以深が対象)のうち、8月24日現在で199バースが吃水制限や上載荷重制限があるものの、利用が可能となっている。ただ、被災地の産業の空洞化を防ぎ、地域の復興を実現するためには、物流拠点となる港湾施設の本格的な復旧が欠かせない。今回示された各港湾の「産業・物流復興プラン」が着実に進展し、計画的かつ段階的な港湾施設の復旧が進むことを期待したい。

相馬港 2011年6月8日撮影 提供:国土地理院

各港湾ごとに作成された産業・物流復興プラン

東北の各港湾の役割と機能を踏まえ、全体を調整した方針に
国土交通省東北地方整備局 梶原康之副局長
東北港湾復旧・復興基本方針検討委員会(委員長・稲村肇東北工業大学工学部都市マネジメント学科教授)が作成中の「東北港湾の復旧・復興基本方針」について、国土交通省東北地方整備局の梶原康之副局長に基本方針のポイントなどを聞いた。
−基本方針の狙いとは。
「被災した各港湾の復旧・復興計画は、港湾管理者などの各行政機関、港湾利用者らで構成する復旧・復興協議会が検討し、8月に作成している。基本方針は各港を復旧・復興させる上で、基本的な考え方を示したものだ。港にはそれぞれ役割や機能分担があり、それをもう一度整理し、個別の港を復旧・復興させる際の優先順位なども検討している」。
−基本方針に盛り込まれるポイントは。
「柱は3点。一点目は港湾機能を早期に復旧・復興させること。おおむね2年間かけて岸壁などをほぼ元の形に戻す。防波堤は約3年、大型の湾口防波堤などは5年で復旧する。当然、優先順位も考えながら整備を進める。二点目は津波防災をどう進めるのか。数十年から百数十年に1回来る津波は防波堤や防潮堤などハード施設で防御する。高台移転による土地利用など、まちづくりと連携しながら整備していく必要があり、今回のような1000年に1度発生する大規模な津波に対しては多重防御とか、避難ということで対応する。そのためのハードとソフトの両面での対応を示す。三点目は将来も見据えた上で、東北の港づくりをどう進めていくのか。復旧という視点だけでなく、各港湾の機能や役割を再点検し、新たな飛躍に向けた方向性を示す」。
−議論の中で話題になった点は。
「いかに早く港湾施設を復旧するかが、被災地の産業の復旧・復興を牽引することになる。逆に港湾の復旧が遅れると、産業復興の足を引っ張ることになる。会合の中では港湾の復旧だけでなく、復興も含めた方針をどうするのかという指摘もあったが、まずは第三次補正予算でしっかりと復旧に向けた予算を確保し、復興はその後の通常予算も含めた対応を考えていきたいということで理解してもらった」。
−「粘り強い構造」の検討もされている。
「土木学会などでは以前から議論されていたと聞いているが、一定の被害は受けても完全には壊れず、復旧もしやすい構造をイメージしたものだ。例えばケーソンなどはマウンドから完全に落ちてしまうと復旧が難しい。仮にケーソンが移動したり、変形したりしても、完全倒壊しない構造を検討していきたい」。
−民間のプライベートバースの復旧は。
「被災したプライベートバースの大半が、大手ではなく、中小企業で、自ら岸壁を復旧する経済的な余裕のない企業だ。第三次補正予算で、こうした民間の岸壁をどう手当していくかが、復旧・復興の大きなポイントとなる。公共で復旧ができるようにできるだけの対応をしていきたい」。
−災害査定の状況は。
「6月から災害査定に入り、直轄の管轄では8月末で半分以上となっている。進ちょく率は地域によって差があるものの、査定準備が整ってきており、各県とも急ピッチで査定を進めている。遅れている県には国から支援チームを派遣しており、10月末にはほぼすべての査定を終える予定だ。被災地の企業は、企業活動を再開するなど、どんどん前向きに動き出している。物流を支える港湾施設が、それを後押しできるように、しっかりと復旧を進めていきたい」。