プロムナード 人と、海と、技術の出会い

プロムナード 人と、海と、技術の出会い

1960年代後半、輸送革命の波が世界的なスケールでおし寄せた。
コンテナ輸送の台頭である。
これによりわが国の港も新たな機能が求められ、港の景観は大きくさま変わりした。
コンテナターミナル(コンテナ埠頭)は輸送革命を象徴するもので、海上輸送と陸上輸送を結節する重要な役割を担う。
わが国の物流と経済活動を支える心臓部ともいえるこの施設にスポットをあてる。

コンテナ埠頭と一般定期船埠頭の設計例

コンテナ埠頭(神戸港第2号岸壁)(単位m)

一般外航定期船埠頭(単位m)

オーバーパナマックス対応の時代に突入

 海上輸送されてきた貨物を降ろして陸送したり、逆に陸送してきた貨物を船積みして海上輸送するには、貨物の受け渡しをする場所が不可欠になる。コンテナ貨物に対応したこの受け渡し場所がコンテナターミナルだ。

 基本的な構成には岸壁を中心とした係留施設、コンテナヤード、コンテナフレートステーション、荷役機械、管理施設などがある。さらにアクセス道路、その背後に位置する倉庫、総合物流センター、空コンテナやシャーシ(海上コンテナ用トレーラー)置き場など物流関連施設も必要となり、これらが一体的に整備されて初めてコンテナターミナルとして機能する。

 輸送コストを低減するため、コンテナ船の大型化はますます顕著になってきた。コンテナに対応した埠頭としては、これまでパナマ運河を通過できる最大の船であるパナマックス型(船幅32m以上5万t〜8万t級の船舶)を対象に考えてきたが、今日ではオーバーパナマックスと呼ばれる大型船が登場し、こうした大型船を係留できるバースの整備が世界的な趨勢となっている。オーバーパナマックスに対応するとなると、バースの水深は15mが必要となる。パナマックスへの対応は今や世界的な趨勢となり、わが国でも3大都市圏を中心に15mの水深をもつバースの整備が徐々に進んできた。

カギを握るバースは水深15mが世界標準に

 バース(岸壁)の長さや水深は、対象となるコンテナ船の主要寸法を設定して計画される。ただし、あらかじめ設定できない場合もあり、その際は載貨重量トン数に応じて長さと水深が決められる。3万tの場合、長さ250m・水深12m、4万tで長さ300m・水深13m、5万tで長さ330m・水深14m、6万tで長さ350m・水深15mというのが指標だ。バースの構造は重力式、矢板式等色々なタイプがあるが、大水深化によってその建設にはますます高度な技術が求められるようになってきた。

 重力式のケーソン1つをとってみても水深が深くなればなるほど据付には高度な制御技術が必要になる。鋼矢板の打設も同様で、深くなるにしたがって施工条件は厳しくなり、これを克服する技術も開発されてきた。

 さらに港湾工事に不可欠な水中作業は、大水深化すると潜水士による人力施工では難しくなり、機械化・ロボット化も重要な技術になる。捨石基礎マウンドの構築に機械式の均し機が実用化されるなどこの分野での開発も進んできた。


荷重条件で変わるコンテナヤードの舗装強度

 コンテナターミナルの重要な施設の一つにコンテナヤードもある。本船に積み降ろすコンテナを保管したりする場所のことだ。舗装された広大な空間で、コンテナターミナルの大半の面積を占める。

 計画のポイントになるのは、船へのコンテナの積み降ろしと背後への搬出入の2つ。とくに荷役方式で機械類も変わってくるので、これに対応した施設計画とすることが重要だ。

 荷役方式は、主にトランスファクレーン(セミシャーシ)、ストラドルキャリア方式、シャーシ方式、フォークリフト方式の4方式がある。それぞれに特徴があり、土地の利用効率や設備投資額などの条件をもとに選択する。

 コンテナヤードでは、舗装強度の確保が技術的なテーマになる。通常は全面舗装とし、埋立地の場合は不同沈下防止に対応して地盤改良工事も施される。維持補修を考えて一般的にはアスファルト舗装が主流だ。しかし荷役機械の種類によっては重荷重がかかり荷重条件が厳しくなるため、わだち掘れや磨耗対策が必要になる。場合によっては半たわみ性舗装、あるいはRC・PC舗装が採用されることもある。いずれにしてもコンテナの蔵置方法、荷役機械、その通路や運行方法などをもとに荷重条件に沿った合理的な設計と施工が求められる。

ハブ港湾と地域活性化への期待担う

 コンテナターミナルは、複合一貫輸送が常識となった海上コンテナ輸送システムにおいて、いまや海上と陸上輸送を結ぶ中枢としてわが国の物流経済の心臓部といえる存在になった。コンテナ輸送はますます高度化の一途をたどり、船舶の大型化に対応した岸壁の大水深化だけでなくIT化時代に対応した物流システムの構築が急務となっている。この分野における技術革新も著しい。

 しかしながら厳しい現実もある。韓国、中国をはじめとする北東アジア地域において、大水深コンテナターミナルの整備が積極的に進められており、わが国のターミナルは、その対応力という面で非常に厳しい競争にさらされている。

 わが国の建設分野における技術水準は世界的にも非常に高いレベルを維持している。国際間の競争に勝ち残るためにも、コンテナ輸送に象徴される港の役割を社会的に認識させ、高い技術力を生かした合理的な港湾整備が求められている。