PORT REPORT 新みなとまち紀行

PORT REPORT 新みなとまち紀行

Cover Issue  清水港は駿河湾の西岸に位置し、三保半島が“天然の防波堤”となって古くから栄えてきた。国際貨物への対応や港を核とした地域振興への積極的な取り組みは、みなとまちとしての長い歴史、そしてそこで培われてきた成果と地域住民たちの港に対する愛着が、後押ししたものと言えるだろう。
 国内外へ開かれた東海の玄関口に、今日も貨物や大勢の市民、観光客が集う。


清水港の歩み
 江戸時代、江戸や大坂、東海各地との物産取引の拠点として、清水は千石船などの出入りでにぎわった。1878(明治11)年、清水波止場を築造。1899(明治32)年に開港場に指定され、のちにアメリカへの静岡茶の輸出が盛んになる。
 1952(昭和27)年、特定重要港湾に指定。長期にわたる整備計画を経て、港内の各地区でコンテナ取扱施設が拡充される。1999(平成11)年、開港100周年に向けた集客・観光施設の整備が完成。現在は、物流ニーズの向上に対応するためのコンテナターミナルの整備が進められている。


アクセス
[車]東名高速道路 清水I.C.から約10分
[鉄道]JR東海道本線 清水駅から徒歩5分


美しい港に人の心と地域経済がうるおう

由緒ある国際貿易港

 2007(平成19)年は、清水の街にとって記念すべき年であった。「大御所四百年祭」、つまり400年前に徳川家康が将軍職を息子の秀忠に譲り、駿府(現・静岡市)へ移ったのである。
 家康は大御所として力をふるった。駿河を拠点とする「国際貿易構想」を立て試行錯誤を重ねたが、計画は失敗に終わる。しかし、その取り組みは清水の名を「駿府の港」として全国に広め、発展の礎が築かれる契機となった。
 1901(明治34)年、地元の名産品であるみかんが清水港から米国へ輸出された。また、1906(明治39)年には静岡茶を載せた船が米国へ。双方とも現地で好評を博し、日本の食文化を海外へ広めた。昭和に入ると、県の水産試験場で米国輸出向けにマグロの油漬缶詰が開発され、清水港から出発。これも“チキン・オブ・シー”と呼ばれ高い人気を得た。
 現在、清水港は清水駅からほど近く、国道1号・150号と東名高速道路からも好アクセス。人流・物流ともに盛んな街の様子は、家康の描いた夢が400年を経て実現したかのようだ。
 国土交通省中部地方整備局清水港湾事務所の太田聡企画調整課長は、次のように語る。
 「清水港にはよく学校から見学の申し込みがありますが、市内や県内だけでなく、東京や横浜など地元に大規模な港がある都市の学校も少なくありません。港に求められる機能が比較的コンパクトなエリアに集約されていて、それぞれにうまく機能している点が教材として好適なのでしょう」(談)
 清水港が人流と物流、文化交流において上げつづけてきた成果の大きさは計り知れない。

国土交通省中部地方整備局 清水港湾事務所 太田 聡 企画調整課長

[写真左]静岡県を代表する集客拠点となった清水港の日の出地区 [写真中左]江戸時代、江戸と大坂を結ぶ拠点として繁栄
[写真中右]大正初期、輸出茶積み出しの様子 [写真右]日の出地区には大型客船も着岸できる岸壁が整備されている

人と物と文化が港で交流

 清水港を訪れれば、だれもが「美しい港」という印象を抱くことだろう。背景には霊峰富士山がそびえ、主な港湾施設は港のシンボルカラーである白とアクアブルーに統一され、景観の魅力をさらに際立たせる。
 これは1992(平成4)年に開始された「みなと色彩計画」によるもの。港湾施設は経年とともに改修が必要になり、塗り替えをおこなうにあたって色調が統一されてきた。周辺企業や関連機関の自主的な協力によって実践されており、市民からも好評だ。
 清水港の日の出地区には、年間約470万人が訪れる。開港100周年にあたる1999(平成11)年に完成した、10年越しの「日の出地区再開発プロジェクト」によって、清水港は県を代表する集客拠点に生まれ変わった。
 一帯には緑地やボードウォーク、回廊式のプロムナードが整備され、小売店や飲食店、アミューズメント施設などが軒を連ねる。海辺のベンチでくつろぐ人々の姿が絶えない。
 日の出地区のランドマークであるショッピング・アミューズメントの大型複合施設「エスパルスドリームプラザ」によると「地元のお客様のニーズに応えられるよう2006(平成18)年の暮れに海鮮市場から上質スーパーへのリニューアルを行いました。地元の人々のコミュニティとしての憩いの場所、親しめる場所としてご利用いただきたいと考えて運営をしています。地元の商店会とも県外の施設を一緒に視察するなど交流を図っています。また『すし横丁』『ちびまる子ちゃんランド』などは、観光客誘致としても力を発揮しています」(販売促進部の談話)。
 同店の港側のスペースは、地元の学校の吹奏楽部や有志による「シーサイドライブ」、みなと祭り、大晦日のカウントダウンなどの会場に供され、地域振興に一役買っている。

[写真左]大型複合商業施設「エスパルスドリームプラザ」 [写真中]「みなと色彩計画」実施前の様子
[写真右]海を間近に感じられるボードウォーク

[写真左]実施後は海と空に調和した色彩に生まれ変わりつつある [写真中]日の出地区にほど近い巴川河口が清水港開港の地
[写真右]開港100周年を記念して造られたモニュメント