PORT REPORT 新みなとまち紀行

PORT REPORT 新みなとまち紀行

Cover Issue  流路総延長およそ230Kmに及ぶ大河・最上川の流れが、日本海へと至るその場所に酒田港は開けている。背後に広がるのは、国内屈指の米穀地帯。米や農産物などが船で全国へ運ばれていた時代、酒田の港と街は大いに賑わった。時は下って21世紀のいま、酒田港は再び繁華の兆しを見せている。そのミッションは、みなとオアシスやリサイクルポートなど、まさにこの時代が求めるテーマ。多くの市民が“みなとまち”酒田の復権に心を弾ませる。


酒田港の歩み
 最上川の河口に位置する酒田港は、古くから日本海沿岸や内陸河川交通の要衝であった。1672(寛文12)年、河村瑞賢による西廻り航路の開拓により港は大きく繁栄し、江戸中期には有力な廻船問屋が軒を並べ、街とともに最盛期を迎える。
 しかし、最上川下流の乱流や大洪水による流出土砂のため、港口の水深維持が困難という特質から、明治時代に入って帆船から汽船へと船舶の大型化が進むと、酒田港の利用は低下。政府は1884(明治17)年、最上川航路の改良を目的とした治水工事を起こした。
 近代設備の整った酒田港には、大型外国船の出入りも盛んになり、1951(昭和26)年、港湾法による重要港湾に指定。1970(昭和45)年には北港地区の建設に着手。1992(平成4)年に中国黒龍江省との新航路「東方水上シルクロード」が、1995(平成7)年には釜山港との定期コンテナ航路が開設された。2003(平成15)年には、リサイクルポート(総合静脈物流拠点港)に指定されている。


アクセス
[空路]庄内空港からリムジンバス30分
[車]山形自動車道「酒田みなと」I.C.から15分
[鉄道]羽越本線「酒田」駅から車10分 


北前船を送り出した港が、いまアジアの拠点港へ

山形県唯一の重要港湾

 東北で2番目の標高2,236mを誇り「出羽富士」と呼ばれる鳥海山の南に庄内平野が広がる。古くから米の名産地として名高いこの地域の中心都市が、酒田市である。
 江戸幕府の命を受けた河村瑞賢は、1672(寛文12)年、酒田港を基地として、全国を巡る海運手段であった北前船の西廻り航路を開いた。そのルートは、酒田から日本海沿岸を廻り、瀬戸内海・大坂・紀州沖・遠州灘を経て江戸に入るというもの。庄内米のほか、染料として使われる紅花などが江戸へと運ばれ、「酒田湊」は大いに潤うこととなる。江戸中期には97軒の廻船問屋があり、嘉永・安政のころ、酒田湊は全盛の時代であった。
現在も酒田港は山形県唯一の重要港湾として地域経済と市民の生活を支える。
 港湾区域の最南部に位置する本港地区は、かつて北前船の基点として開かれたエリア。現在はヨット、モーターボートなどおよそ370隻が係留されている酒田PBS(プレジャーボートスポット)や交流広場、東ふ頭緑地、さかた海鮮市場など、市民や観光客が集う空間を形成している。
 酒田港の中央に位置する外港地区は、穀物や飼料などを取扱う外貿拠点。船舶の大型化やコンテナを中心とした貨物取扱量の増大に対応するため、1993(平成5)年、岸壁延長280m、計画水深−14mの「酒田港国際ターミナル」の整備に着工。2000(平成12)年に水深−10mで暫定供用が開始され、2004(平成16)年には−13mに機能強化が図られるなど、整備を継続しながら、韓国の釜山港との定期コンテナ航路が就航している。また、港や日本海、市街を見おろし、鳥海山まで望める緑地展望台、日本海に沈む夕陽の鑑賞スポットも設けられ、週末には景観を楽しむファミリー客やカップルの姿が見られる。

[写真左]本港地区の東ふ頭緑地 [写真中]港や街を一望できる緑地展望台
[写真右]外港地区の国際ターミナルには釜山港との定期コンテナ貨物船が発着する

1813(文化10)年、港のそばに常夜灯を設置したことが日和山公園の始まり

21世紀の北前船構想

国土交通省 東北地方整備局 酒田港湾事務所 渡辺淳一 企画調整課長

 1974(昭和49)年に開港した北港地区は、2003(平成15)年、リサイクルポート(総合静脈物流拠点港)に指定された。酒田臨海工業団地には廃プラスチック、廃自動車などのリサイクル企業が立地。また、洋上風力発電設備も稼動している。
 リサイクルポートとは、全国規模で循環型社会の構築を図るために、リサイクル施設に対応したネットワーク拠点港のこと。現在、酒田港を含む21港が指定されている。
 酒田港に運ばれた金属くずや廃プラスチックや古紙、エンジン、タイヤなどの中古製品は主に中国・韓国、東南アジアへ輸出され再利用。石炭は姫川港(新潟県)に移出されてセメント材料に活用される。
 こうしたリサイクルポートとしての機能強化を含む「酒田港長期構想」が、昨年3月に策定された。これは国と県、市が協働し、さらに地元の学識経験者、港湾利用者、NPO関係者などを含めた検討委員会によって、30年後を見据えた港とまちづくりを推進する計画。国土交通省東北地方整備局酒田港湾事務所の渡辺淳一企画調整課長に話を聞いた。
 「3年間の検討期間を経て、具体的なアクションに移ったところです。市民の皆様の意見を可能な限り反映させることを基本方針とし、物流、リサイクル、親水、防災と4つの部会を設け、それぞれ下部組織としてサブワーキンググループが活動しています」
 この構想のめざすところは、北東アジア地域へ貢献する「国際公益拠点港」の確立。30年後の酒田港の繁栄を期して、「21世紀の北前船構想」のサブタイトルが冠されている。

リサイクルポートの中枢エリアとなる北港地区