PORT REPORT 新みなとまち紀行

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Cover Issue 中津港は、全国で最も新しい重要港湾である。江戸時代以前から近畿・中国地方との交易拠点として発展したが、近代に入ると周辺の大港湾に役割の一部を譲った恰好となった。しかし、自動車メーカーが港の近接地に進出し、東九州自動車道など広域交通網の整備が進むなか、中津港は再び脚光を浴びることとなった。国際・国内海上輸送ネットワーク拠点としての将来像に、市民が寄せる期待も大きい。


中津港の歩み 大分県の北西部、福岡県との県境に位置する中津港は、古くから海上交通の要衝として利用され、藩政時代には領内物資の移出入港としてだけでなく玖珠、日田ほか港を持たない背後地と、上方や江戸を結ぶ海上ルートの中継港として発展した。
 戦後の経済発展に伴って工場進出が相次ぎ、1959(昭和34)年に地方港湾に指定され、さらに近年は自動車関連産業などの新規立地や背後地の道路交通体系が進み、1999(平成11)年、重要港湾に指定された。


アクセス
[空路]新北九州空港・大分空港からシャトルバスでそれぞれ約45分
[鉄道]JR日豊本線 東中津駅下車
[車]宇佐別府道路 宇佐I.C.から約20分


地域の期待を担って生まれ変わった港

[写真右上]市や県はもとより九州北部地区の期待を担う中津港
[写真右下]多目的国際ターミナルは25,000総tクラスの大型船に対応
[写真左上・下]連日、大量の完成車が貨物船に運び込まれる

急ピッチで進められた整備

 2004(平成16)年12月、ダイハツ車体(株)大分工場が中津港に隣接する昭和新田に竣工、本格稼動を開始した。群馬県前橋市にあった本社も同じ敷地内に移転し、また関連の部品メーカーも市内に進出。完全に中津を本拠とした形になる。1年あまりが過ぎた現在も、市内のホテルは常に関係者の宿泊で満室だという。

国土交通省 九州地方整備局 別府港湾・空港整備事務所 高田忠宏 工務課長

 ダイハツグループが中津へ進出を決定したのは1991(平成3)年。アジアを重要マーケットとして視野に入れる同グループにとって、中津の地の利は格好の条件を備えていた。アジア諸国へ好アクセスであることはもちろん、中津港の利用により物流の合理化を図ることができ、また九州北部エリアには自動車部品メーカーが集積しており部品の調達が容易になる。
 1998(平成10)年に中津港の新しい港湾計画が策定され、急ピッチで整備が進められた。そして2004(平成16)年、水深−8mの複合一貫輸送ターミナルと水深−11mの多目的国際ターミナルの供用開始にこぎつける。後者は25,000総t級の自動車航送船に対応できる九州屈指の規模である。
 「わずか5年ほどでここまで整備が進むのは異例」と国土交通省九州地方整備局別府港湾・空港整備事務所の高田忠宏工務課長は語る。「ダイハツ車体さんは12万台生産体制でスタートしましたが、今年度は25万台体制と急成長を遂げているそうです。
中津港では将来の需要増を見据え、さらに新しいふ頭の整備を計画しています。具体的な時期は決定していませんが、この勢いだとなるべく早く完成させる必要があるでしょう。」

[写真左]中津港の南東に隣接するダイハツ車体(株)
[写真中・右]ダイハツ車体は、中津市民の大きな期待をもって迎えられた

幅230mの航路は、現在水深−11mに整備中

本年3月オープンの新北九州空港も各地から中津へのアクセスを助ける

周辺都市との共栄をもたらす道

 昭和30〜40年代、中津および周辺地域には紡績工場や住宅機器工場、自動車部品工場などが多数進出した。しかし、やがて国内企業が海外に生産拠点をシフトしはじめると、水深の浅い中津港は大量輸送や国際輸送を担う大型貨物船が接岸できなかったため、他の大規模な港へ需要が流れた経緯があった。一昨年末に供用された二つのターミナル、そして現在進められている暫定−11m(最終−12m)の航路整備も合わせて、中津港再活性化のお膳立ては整っている。

大分県土木建築部 港湾課企画調査班 三代清六 参事

 さらには、周辺地域で幹線道路の拡充が進んでいることも、中津の将来に明るい光を投げかける。南東に隣接する宇佐市まで開通している東九州自動車道は、中津を経由し北九州市と結ばれる予定。本年3月に開港した新北九州空港を含む北九州・博多・関門地区とのアクセスが大幅に向上する。また九州横断自動車道へ連絡する中津日田道路の建設も進められている。
 「幹線道路ネットワークと連携する臨港道路の整備を進めています」と大分県土木建築部港湾課企画調査班の三代清六参事は語った。「県内の5つの重要港湾は、それぞれに機能分担ができています。大分港は大手企業の専用バースが中心、別府港は国際観光、津久見港はセメントや石灰、佐伯港には大水深バースが建設予定。そして中津港は自動車関連となるわけですが、九州北部には自動車メーカーの拠点が点在しています。これらが結ばれれば当該地域全体の活性化につながります」。
 新しい自動車産業ネットワークの完成は、残すところ中津と各地を結ぶルートの確保のみといった状況。大詰めの段階を迎えている。

[写真左]中津日田道路が開通すると、九州北部有数の観光名所・耶馬渓へのアクセスも向上する
[写真中・右]港湾区域内の田尻ファミリー公園では、毎年4月最後の土日に「中津みなとふじまつり」が開かれ、みなと見学会も行われる