PORT REPORT 新みなとまち紀行

PORT REPORT 新みなとまち紀行

Cover Issue 1988(昭和63)年の青函トンネルの開通で大きなターニングポイントを迎えた青森港だが、物流・人流拠点として担う役割は依然大きい。石油製品やLPガス、金属、セメントなどの取り扱いが堅調で、またアジア諸国へりんごやほたてなどの名産品の輸出増が期待される。そして毎年夏に350万人以上の人を集める“ねぶたの街”の港として、市民や観光客に愛される港湾空間づくりも成果を上げている。青森港は、地域と手を携えながら発展し続けていく。


青森港の歩み 1624(寛永元)年、津軽二代藩主信牧公が城米の江戸回漕を目的に青森港として開港。1873(明治6)年に青森函館間に蒸気船が就航し、1891(明治24)年に東北本線、1894(明治27)年に奥羽本線が開通され、本州北端の海陸交通の要衝として青森港の重要性が高まる。
 1908(明治41)年に青函連絡船が就航、1917(大正11)年には青森港に対する輸出入貿易制限が全面撤廃され、完全なる貿易港となってからは取扱貨物量が急激に増加し、1920(大正14)には当時の交通史上初めての貨物航送が開始された。1951(昭和26)年に重要港湾に指定。1988(昭和63)年の青函トンネル開通により青函連絡船は廃止されたが、沖館(おきだて)地区のフェリーふ頭を拠点に北海道と本州の結節点として物流を支え続けている。
 青森港の中心であり青函連絡船の発着場があった本港地区では、交流拠点の形成を目指した再開発が行われ、親水空間や観光資源の拡充、アクセスの向上等に注力。県都の市街地や住宅地域に隣接した立地条件を生かし、市民に身近なウォーターフロントとして整備が進められている。


アクセス
[空路]青森空港からシャトルバス約40分
[鉄道]JR青森駅から徒歩5分
[車]東北自動車道青森I.C.から約20分


暮らしの すぐそばに海とみなとが 感じられるまちづくり

[写真左]青森ウォーターフロントの眺望。青森のイニシャル“A”をかたどった「アスパム」、その向こうの「青森ベイブリッジ」も三角形に統一されている
[写真中]歩行者専用の「青森ラブリッジ」。ここからさらに青森駅西側の緑地へアクセスする歩道の整備が、平成18年度の完成予定で進められている
[写真右]1876(明治9)年、青森港を出航した明治天皇が7月20日横浜港に到着。この「海の日」の由来を記念し「海の記念日発祥の地」の碑が建てられた

ちょっと散歩に、みなとまで

 大ヒット曲「津軽海峡冬景色」のイメージをもって青森を訪れると、あまりのギャップに肩透かしを食らうにちがいない。歌の醸し出していた寂しげな雰囲気など微塵も感じられない都会的な街並みである。青森駅前には大きなファッションビルがそびえ立ち、にぎやかな市街がつづく。魚市場の並ぶ一角は、地元の買い物客で盛況だ。
 街の北側に目をやれば青森市街と沖館地区を結ぶ「青森ベイブリッジ」がすぐそばに見える。市街から青森港の本港地区まで徒歩でわずか5分。ここまで駅や市街に隣接している港は珍しい。
 かつてはこの近さが青函連絡船の利用客にとって便宜となっていた。北海道への主要ルートの座を青函トンネルに譲った現在、このような地の利が、青森港を市民が気軽に海に親しめる空間にしている。連絡船の廃止を機にスタートした、元の立地条件を有効活用する“みなとまちづくり”の成果だ。
 敷地面積4.6haの広大な「青い海公園」は港を一望できる憩いの場。初夏を迎えると、ねぶたを製作するスペースとして利用され、普段ののんびりとした雰囲気が一変して活気づく。青森県観光物産館「アスパム」は、青森県の産業や観光物産、郷土芸能などを総合的に紹介する施設で、展望ラウンジからは青森市街や津軽・下北半島、陸奥湾、八甲田の山々などが見渡せる。そのそばには明治天皇の出航を記念した「海の記念日発祥の地」の碑。ベイブリッジの真下には、幅3mの歩行者専用橋「青森ラブリッジ」がかけられ、海上をのんびりと散歩できる。
 そしてさらに一つ、話題の施設が青森港に誕生した。全長310mの北防波堤の上面を開放した「青森ベイ・プロムナード」は、ボードウォークと自然石舗装で仕上げ、中央部の2ヵ所に展望デッキとウッドベンチが設けられている。海側からの市街の姿や津軽半島、下北半島を眺望できる親水防波堤である。

国土交通省 東北地方整備局 青森港湾事務所 齋藤節文 企画調整室長

 本港地区の親水防波堤は2004(平成16)年4月に供用を開始しました。愛称の「青森・ベイプロムナード」は、市民からのネーミング公募によって決定されたものです。4月から11月までの開放期間中、大勢の方が訪れて、散歩やジョギングなど思い思いに楽しんでくださいました。この防波堤と大型旅客船バースは、「青森港本港地区景観形成モデル事業」として(社)全日本建設技術協会から平成15年度に全建賞を受賞し、また、防波堤を含めた周辺が「ユニバーサルデザイン大賞2004」の特別賞をいただきました。
 ベイ・プロムナードを訪れた方は、皆さん眺めのよさに驚かれます。青函連絡船が運航していたころは、船に乗れば海から街並みを臨むことができましたが、いまではなかなかそのような機会がないため、海上からの眺めが新鮮なのでしょう。毎年7月に開催される商工会議所主催の「安潟フェスティバル」では、当事務所の監督測量船を市民の方に開放して1日6回、2日間の体験乗船を実施しています。乗船そのものを楽しんでいただくことはもちろん、一人でも多くの方にいつもとは違った角度から青森の街の美しさを見つめていただけたらと考えています。(談)

観光に物流にふくらむ期待

 陸地から「青森ベイ・プロムナード」へ向かう途中には、−10m岸壁が設けられている。国内外のクルージング需要の増加に対応するため、東北地方で唯一の3万t級大型旅客船対応バースとして2002(平成14)年完成、翌年から供用が開始された。岸壁のエプロン部分には「弘前城の桜」「ねぶた祭」「紅葉と三内丸山(さんないまるやま)遺跡」「厳冬の八甲田」と、青森の四季をデザインしたタイル製のモザイク画が組み込まれている。入港する旅客船の乗客を楽しませ、歓迎の意を表す心憎い演出だ。そして観光面の配慮ばかりではなく、災害時には緊急物資輸送の拠点として機能を果たせるよう耐震強化が施されている。
 この大型旅客船バースは、1997(平成9)年から徐々に整備が進められている新中央ふ頭の岸壁である。これまで本港地区では三つのふ頭で貨物を取り扱ってきたが、いずれも老朽化が激しいことから、約12.5haを埋立てて新しいふ頭を造成し、この地区の取扱貨物を集約しようというものだ。緑地などの付加的な用途については、2001(平成13)年に発足した「みなとまちモニター制度」をはじめとする市民参加型の取り組みを通じて、意見や要望を取り入れながら検討が進められている。
 2010年度末には東北新幹線が全面開通し、新青森駅へアクセスする予定。“人の集まるみなと”青森港への期待はまだまだふくらんでいく。

青森〜函館間、青森〜室蘭間をフェリーが運航する

東北地方で初となる3万t級大型旅客船対応バース

[写真左]「青森ベイ・プロムナード」の灯台も三角形だ
[写真中]ベイ・プロムナードと新中央ふ頭が港の未来を担う
[写真右]青森の四季をデザインしたモザイク画が組み込まれたバースのエプロン部分