PORT REPORT 新みなとまち紀行

PORT REPORT 新みなとまち紀行

Cover Issue 明治43年、岡山県宇野との国鉄宇高連絡船が就航し、高松港は四国の玄関口として本格的に稼働し始める。以来、商港、観光港、工業港と、時代に呼応した機能を備えるべく整備が重ねられてきた。そして昨年5月、「サンポート高松」がグランドオープン。ターミナル駅や公共施設、アメニティスポットを背後に携え、高松港の新しい歴史が幕を開けた。


高松港の由来 高松には12世紀すでに港が存在し交易が行われていたという。1588(天保16)年に讃岐国主の生駒親正が内町港を築造。近代港湾としての整備は明治期から本格化し、昭和26年に重要港湾に指定される。また、平成9年に韓国釜山港、同14年に中国上海港、同16年に中国青島港との国際定期航路が開設されている。


アクセス [空路]高松空港からリムジンバス約40分 [車]高松中央I.C.、高松西I.C.からそれぞれ約20分 [鉄道]JR高松駅前から連絡通路2分、琴電高松築港駅から徒歩4分 [海路]宇野、阪神(大阪・三ノ宮)、小豆島、直島、女木島・男木島、大島、豊島、神戸(朝日地区)間に定期船運行


瀬戸の都の新たな魅力が人々を誘(いざな)う

高松シンボルタワーは、地上30階のタワー棟と地上7階のホール棟、地下2階の駐車場を備えるランドマーク

人と情報の交流拠点の誕生

 本州と四国を結ぶ交通の要衝として栄えてきた高松市。高松港とJR高松駅、海陸双方のターミナルが位置する臨海エリアに新しい都市機能を備え、拠点性を高めるための再開発プロジェクトが昭和58年にスタートした。

 岸壁や浮桟橋、臨港道路などの港湾基盤施設、広場や地下駐車場などの都市基盤施設、新駅舎や旅客ターミナルビル、商業施設、宿泊施設などの上物施設の整備が段階的に進められ、平成16年3月、地上30階のタワー棟と地上7階のホール棟からなる「高松シンボルタワー」が竣工、同年5月“瀬戸の新都”サンポート高松がグランドオープンした。

 高松シンボルタワーは、香川県と高松市、民間の複合施設。タワー棟には国際会議場など県の施設や企業のオフィス、展望レストランが、ホール棟には市が運営するサンポートホール高松、民間のショッピングモール、レストランなどが設けられている。

 駅前広場に面したエントランスからエスカレーターでホール棟2階のショッピングフロアへ上ると、高松港旅客ターミナルビルへ直結、さらにその動線はフェリー発着所や瀬戸内海のおだやかな景観と空気が楽しめる親水ゾーンへと延びていく。市民はもちろん離島からの通勤通学者、観光客など、サンポート高松を訪れるすべての人々のアクセスを助けながらも、そのまま通過することなく滞留し、人・情報の交流が生まれるよう配慮されたランドマークである。

[左]「せとしるべ」は世界初の総ガラス張り灯台
[中]高松シンボルタワーの6階7階に設けられた「かがわ国際会議場」は最大300席を設置できる本格コンベンションホール
[右]サンポート高松オープン記念事業として、半年以上にわたり当地の文化をアピールするさまざまなイベントが開催された

香川県観光交流局 にぎわい創出課 國土(こくど)富男 副主幹

 サンポート高松及び瀬戸内海・文化振興の推進を目的に、平成15年4月、にぎわい創出課が発足。翌年5月のグランドオープンから年末にかけての記念事業では、当地ゆかりの世界的芸術家イサムノグチの展覧会をはじめとするアートイベント、うどんフェスティバル、海の催事などを開催し、多くのお客様にお越しいただきました。今後も「魅力とにぎわいのあるまちづくり」を進めていきます。(談)


最新の街並みに息づく歴史と風土

 サンポート高松のまちづくりのコンセプトは「21世紀の城『新玉藻城』づくり」。玉藻城(高松城)は、高松港の発祥である内町港と同時に築城された日本三大水城のひとつで、北は海、三方の濠に海水を引き入れて軍船が停泊できるようになっていた。このような構造を持つ城は、全国でもここだけである。

 海辺という地理条件を活かした築城。その精神が400余年の時を経て、海側から眺める洗練された景観、さわやかな潮風と陽光を堪能できる解放感あふれる都市設計、2万t級バースには国内はもとより外航の大型クルーズ船が寄港し、海外へも開かれたターミナル機能を有するなど、サンポート高松の特徴として具現化されたといえる。

 海辺で憩うもよし、ウォーターフロントで感性を刺激するもよし。海辺に現れた新しい街は多様な楽しみを市民に提供している。

海側からの洗練された都市デザインは四国の玄関口の新しい顔。写真手前は2万t級バース

高く吹き抜けるコンコースを備えたJR高松駅。駅内はもちろん駅前広場までの動線もバリアフリー化されている

[左]高松漁港
[中]高松漁港で収穫された鮮魚を自転車で売り歩く「いただきさん」。その場で魚をさばいてくれる。最盛期には200人ほどいたというが、いまでは約30人を残すのみ。「若い売り子がすっかりいなくなりました」(談)
[右]現在も玉藻公園内に残る玉藻城址の濠は、瀬戸内海の海水をたたえる

北浜アリー

サンポート高松の東に位置する北浜町で、使われなくなった古い倉庫群を複合商業施設としてよみがえらせた「北浜アリー」。錆びたトタンと剥き出しの梁の倉庫にカフェや輸入雑貨店、アンティーク家具ショップなどが出店し、若者の人気を集めている。高松ウォーターフロントのもうひとつの顔だ。

北浜アリーは私の父で建築家の井上秀美が、サンフランシスコのフィッシャーマンズワーフをヒントに設計したもの。運営も父の事務所がやっています。おかげさまで週末には県外からもお客様がお越しくださりにぎわっています。
テナント料を格安にして、意欲のある若いショップオーナーさんに参画してもらい、高松をもっと元気な街にしようと頑張っています。(談)

井上裕美子さん
「Naja」では廃材を利用した家具やインテリア、雑貨などを販売。井上さんはウェブデザイナーとして北浜アリーのインターネットテレビの運営にも携わる

ライフスタイルワークショップ「Naja」