ポート エコロジー port ecology

ポート エコロジー port ecology

 環境との共生をめざし、国土交通省港湾局が進める環境政策の一つに「海域環境創造事業(シーブルー事業)がある。航路の浚渫で発生する良質な砂を使い干潟や海底のヘドロ等の表面に敷き詰め(覆砂)、海の水質や底質の改善を図ろうという事業で、1988年度から直轄、補助事業としてスタートしている。ここでは、三河湾や松島湾、東京湾での取り組みを紹介する。

 東京湾、伊勢湾、瀬戸内海などの閉鎖性海域では、外海との海水交換が悪いため、以前から水質や海底環境の悪化が問題となっていた。加えて陸域の都市化の進展に伴い生活排水や工場排水などの流入も増加、水質汚染、有害堆積物が湾内の生物生息に深刻な影響を及ぼしていた。また、陸域から流入した栄養塩や有機物により、富栄養化による赤潮発生等の問題が生じていた。
 このような海域環境の悪化を改善し、海や浜辺を親しむ場所にしようというのがシーブルー事業だ。ヘドロなどの堆積した海底を良質な土砂で覆うことで有機物の海水への溶出を抑制し、貝類などの多様な底生生物を呼び戻すことを狙いとしている。湾内の航路浚渫で発生する良質な土砂を再利用することも、同事業の大きなポイントだ。これまで全国各地で国直轄および都道府県が主体となって実施されてきた。現在も事業を継続して展開している所もある。

水質・底質改善に効果 =千葉港湾事務所の取り組み=

 東京湾の物流拠点である千葉港、木更津港の多目的国際ターミナル整備事業を担当する関東地方整備局千葉港湾事務所。同事務所がここ数年、港湾整備事業とともに力を入れているのが東京湾の水質向上をめざした環境再生事業への取り組みだ。その中でも注目されるのは、2005年度から取り組んでいる「東京湾海域環境創造事業(シーブルー事業)」である。
 「シーブルー事業は、東京湾口航路(中ノ瀬航路)の浚渫で発生した良質な土砂を使って覆砂を行い、水質・底質の改善を図ろうという事業です。2005、2006年度に実証実験として浦安市付近の海域45haに覆砂を行い、翌2007年から向こう5ヵ年計画に亘ってモニタリング調査をすることになっています。ちょうど2年が経過した今年の3月に中間評価を行いましたが、うれしい結果がでました」と同事務所の上野雅明副所長は語る。
 これまでのモニタリングの結果、底生生物が増加傾向にあることが判明した。覆砂地域では47種が確認されたが、このうち、アカガイやアサリ、マコガレイなど25種は覆砂地域のみで確認され、覆砂周辺にはいなかった。水産有用種も周辺域に比べ覆砂地区で多く生息していることがわかった。また、覆砂後2年を経過しても溶出抑制機能を維持しており、青潮の発生要因である貧酸素水塊のもとを封じ込めているなど大きな成果が出ているという。
 これらの結果は、近藤健雄日本大学教授を委員長とする東京湾奥地区水底質環境改善効果中間評価検討委員会に示された。これを受け同委員会は、今後の取り組み方針を盛り込んだ中間評価として、▽2011年度末までに覆砂厚の規模に応じた技術的評価の取得を行う▽この事業を単に環境を目的とするのではなく、防災や地域活性化へと多重目的化させる発想の転換をすべきである▽幅広い人たちに参加意欲を持ってもらうなどを提言。同事務所は、この提言を今後の事業に反映していく方針だ。
 「事業が海の中で見えにくいのですが、この事業を知ってもらうためには、自治体はもとより広く一般の方々に参加してもらう工夫が必要だと思います」と上野副所長。「市民と一体となり、『できることを・できるところで』少しでも前進する事に努めたいと思います」と語る。

三河湾・松島湾でも実施

 シーブルー事業では先輩にあたる三河湾と松島湾。三河湾でのシーブルー事業は、中山水道航路の浚渫で発生した砂を利用して、中部地方整備局三河港湾事務所と愛知県が協力して湾内の各地で覆砂および干潟・浅場の造成を行っている。その効果を見ると、例えば愛知県が実施した蒲郡地区・竹島(整備期間は1991年〜1998年)の場合では、人工の干潟や養浜の施工や覆砂、汚染泥の浚渫除去により、水質浄化能力が大きい二枚貝(アサリ、バカガイ等)の生息が確認されたという。三河湾のシーブルー事業は、2006年度の土木学会環境賞を受賞している。
 松島湾でも東北地方整備局と宮城県が連携して同事業に取り組んでいる。松島湾でのシーブルー事業でも高い効果を得た。宮城県が実施した海岸前地区(整備期間1992年〜2003年)での干潟への覆砂によって、それまで底生生物は腐水域の特徴であるゴカイなどの多毛類が大半だったものが、施工後は二枚貝やヨコエビなどの甲殻類が増えた。
 全国各地の港湾で実施されてきたシーブルー事業だが、課題として浮かび上がっているのは事業を終えると、水質や底質が悪化することだ。事業終了後に継続的なモニタリングを実施し必要な対策をとることが望まれている。

底生生物が増加!
覆砂区域では底生生物が増加傾向にあり、水産有用種も周辺域と比べて、覆砂区域で多く生息しています。

千葉港湾事務所が実施中のシーブルー事業の中間評価では高い効果が実証された。