若き海洋人たち

若き海洋人たち

海の学校主催のサーフィン教室で指導する堀口真平さん(写真左から2人目)


海の学校 スタッフ 堀口 真平(しんぺい)さん

海の環境保全の機運が、世界的に高まっています。国や自治体などの大規模なプロジェクトから、個人レベルの取り組みまで、すべてに共通しているのは、美しい海を守ることが、わたしたちの豊かな明日へつながるという思い。「そのために何ができるか」を、一人ひとり考えることが大切なのです。

堀口さんは世界レベルの大会で入賞歴もあるプロサーファー


 環境保護、海の文化とマリンスポーツの振興などをテーマに活動する「海の学校」は、葉山・逗子・鵠沼(くげぬま)(神奈川県)や串本(和歌山県)などの海岸でさまざまなイベントを開催し、環境保全活動に取り組むボランティア団体。スタッフの一人、堀口 真平さんは、16年のサーフィン歴を持ち、4年前にデビューを果たしたプロサーファー。海外の大会を中心にエントリーし、数々のビッグウェーブにチャレンジしています。
 「昨年まではハワイをベースにしていましたが、これからはもっといろいろな場所の波に乗ろうと思っていて、今年だけでもすでにオーストラリア、タヒチ、モルジブなどに遠征しています」(堀口さん)
 彼は、海の学校に参加する前から、サーファー仲間とともにビーチクリーン(海岸の清掃)などの活動をしていました。環境というものに関心を持つようになったきっかけを尋ねてみると、
 「小さいころから毎日のように海で遊び、プロサーファーになったいま、海はわたしの人生にさらに深く関わる場所です。自分の成長を支えてくれた海に対して、きちんと恩返しをしたい」。
 幼少期を千葉県鴨川市とハワイで過ごし、現在は和歌山県の串本町に在住。いずれも潮の香りを身近に感じられる場所です。海に生き、海に育てられた彼が、海の自然環境に強い関心を抱くようになったのは当然のことなのでしょう。
 さらに彼はこう続けます。
 「地元の串本町で海洋生態系の保全活動に参画する父の影響も大きい。『環境の先輩』である父から学ぶことは多いですね」
 海の学校では月に1度、夏期は週に1度のペースでサーフィン教室を開催。夏休みになると子どもたちの参加が増え、教室はひときわ賑やかに。満面の笑みでサーフィンを楽しむ子ども、それを見て子ども以上にはしゃぐ親。こうした場面を見るたびに、堀口さんは海の学校の趣旨を再認識するといいます。
 「伝えたいのは、自然があるからこそ豊かな生活が送れるというシンプルなことなんです。自然を守るために、できることからやってみようと。だからサーフィン教室では、楽しませてくれた海への感謝を行動で示すため、講習の後にビーチクリーンを実施します。子どもたちはサーフィンと同じくらい楽しんでやってくれますよ」
 サーフィン教室が終わるたびに、堀口さんの元には子どもたちから多くの手紙が届くそうです。感謝の言葉が綴られたその一通一通に目をとおしながら、彼は次なる目標を立てています。
 「より安全に教えるために、いま、ライフセービングの勉強をしているところです。プロサーファーであると同時に、海のスペシャリストでありたい。そしていつか環境のスペシャリストになりたいですね」
 幼い日の遊び場所からライフワークの舞台へ、そして守るべき自然の象徴へ。彼にとって、海は自身の成長とともに大きな存在に位置づけられていくのでした。


「楽しみながら」が最優先のサーフィン教室では、子どもたちの笑顔が絶えない(06年8月/鵠沼)

紙飛行機教室は、子どもたちにとってシンプルに楽しめる遊びの場(07年6月/千葉)

沖縄の伝統的な漁船「サバニ」を使って行われた海洋環境教室(06年8月/逗子)

海に入る前に、陸上でフォームをしっかり確認(07年5月/鵠沼)


海の学校
 ボランティア有志、自治体、協賛企業、そしてメディアなどが一体となり、小・中学生とその保護者を対象にしたマリンスポーツを中心とするイベントをとおして海洋生態系の保護や環境保全の啓蒙活動を行っている。若者が発案した「海の学校プロジェクト」は、「20年後の未来に向けてできること」をテーマに大勢のメンバーが参加。活動拠点は主に神奈川と和歌山。各イベントの情報は下記URLまで。
●海の学校ホームページ
http://www008.upp.so-net.ne.jp/umi-no-gakko/