東日本大震災 復旧・復興だより

東日本大震災 復旧・復興だより

 2011年3月11日、東日本東北地方太平洋沖を震源とした大地震が発生し、地震による津波などで東北、関東の沿岸地域が壊滅的な被害を受けました。東日本大震災のマグニチュード9.0は国内観測史上最大、世界観測史上でも4番目となる大規模なものでした。津波により各地の港湾施設で甚大な被害が発生し、物資輸送等のために応急復旧が急がれましたが、震災直後から日本埋立浚渫協会および会員各社は、国土交通省各地方整備局との災害応急対策協定に基づき復旧作業に乗り出しました。ここでは協会の初期対応を中心に紹介します。

関係団体で災害対策本部を設置

港湾関係団体が合同で立ち上げた災害対策本部。当初は毎日開催された。

 3月11日、午後2時46分に発生した東北地方太平洋沖地震から約1時間後の4時、日本埋立浚渫協会は協会内に「東北関東大震災港湾関係団体災害対策本部」を立ち上げました。災害対策本部は、港湾関係の災害復旧に迅速に協力・支援するための組織ですが、大きな特徴は日本埋立浚渫協会をはじめ日本海上起重技術協会、日本潜水協会、海洋調査会、港湾関係建設会社を構成員とする体制を敷いたことです。本部長には日本埋立浚渫協会の平尾壽雄専務理事、副本部長には日本海上起重技術協会の青木道雄専務理事が就任しました。
 港湾関連団体による合同の対策本部の設置は、過去にあまり例のない事です。その背景には、今回の災害が広域な沿岸域で起きており、個別の対応よりも、合同での組織をつくることで、より機能的な対応ができると判断したためです。東北地方の太平洋沿岸域で多くの港湾施設が同時に被災したということもあり、震災発生直後の初動対応では情報の錯綜など多少の混乱はありましたが、その後は現地(東北支部、関東支部)と本部および国土交通省との情報共有と意志の疎通という面で大きな効果がありました。

いち早く各港に作業船等を投入

港湾の啓開作業の様子(仙台塩釜港)

 日本埋立浚渫協会では11日に合同災害対策本部を立ち上げる一方で、国土交通省の各地方整備局と締結している災害応急対策協定に基づき、会員各社に対し支援体制を整えるよう要請しました。同協会東北支部も東北地方整備局港湾空港部に対して、災害応急対策の支援・協力体制を整備したことを説明しました。それ以降、整備局と東北支部は毎日、港湾施設の啓開作業等について連絡調整を行いました。関東地方整備局港湾空港部と同協会関東支部でも同様の対応がとられました。
 3月12日には、国土交通省港湾局から協会に対し「会員各社において手配可能な資材、機材、作業船を調査報告するよう」との要請があり、これを受け翌13日に第1回災害対策本部会議が開かれました。この間、関連団体の会員各社は社員の安否確認や現場の被害状況等のほか、資機材、作業船の手配状況等を把握、会議に臨む体制を整えました。会議には構成員等約30人が参加、今後の対応を協議しました。14日には各被災港湾に起重機船、ガット船、台船、曳船、潜水士船、ダンプトラック、バックホウなどが順次投入されました。なお、災害対策本部会議は13日の初会合の後、25日までは毎日開催され、28日からは週2回(月、木)の開催としました。この会議には当初から国土交通省港湾局の村岡猛建設企画室長らも参加し、国土交通省の方針の確認と徹底を図りました。

現地での燃料確保に苦慮

港湾内には浮遊物が散乱している(仙台塩釜港)

 3月16日、国土交通省から今後の災害対応方針か示されたのを受け、会員各社は緊急輸送路の確保を目的に各港の啓開作業を本格化しました。東北地方では八戸港(青森県)、久慈港、宮古港、釜石港、大船渡港(以上、岩手県)、石巻港、仙台塩釜港(以上、宮城県)、相馬港、小名浜港(以上、福島県)です。
 関東地区の港に関しては、18日に関東地方整備局との間で茨城港、鹿島港など管内の港湾施設の啓開作業および被害調査等の情報交換を行い、東北の支援活動にも協力しつつ関東支部を中心に引き続き支援活動を行うことを確認しました。
 被災地での啓開作業は浮遊物の撤去、水中障害物の撤去、水中での潜水調査、港内の水深測量および各港への必要な作業船の手配などでした。作業船の種類は起重機船、ガット船(グラブ付自航運搬船)、ガットパージ船(台船上にグラブ付クレーンを装備した押航式作業船)、潜水士船など、さまざまな作業船が投入されました。
 この頃、応急復旧作業に取り組む会員会社にとって大きな課題となっていたのが、現地での災害活動や現地入りに要する燃料確保でした。3月17日の第5回会合では、主にこの燃料確保の対応策が協議され、軽油10kℓの陸上輸送の実施や石油連盟への供給打診を行うことを決めました。実際に会員企業が啓開作業を行う際には、国土交通省の燃料船から給油を受けることもありました。また、作業船の燃料であるA重油1000kℓ(タンクローリー50台分相当)のタンカーと、A重油320kℓのバンカー船(給油船)を確保し、4月上旬に現地で燃料を供給できるよう体制を整えました。

被害状況調査にも着手

津波の被害で海底にはさまざまなものが沈んでいる(仙台塩釜港)

 被災地での啓開作業を続ける一方で、3月22日には被害状況調査や緊急復旧工事、応急復旧工事に向けた活動も始めました。これら作業は東北地方整備局から「沿岸技術研究センター、港湾空港建設技術サービスセンター、港湾空間高度化環境研究センター、日本埋立浚渫協会、海洋調査会、日本潜水協会、港湾技術コンサルタント協会が連携して至急あたるよう」との要請を受けての対応です。27日には仙台塩釜港(仙台港区)で被害状況調査として岸壁エプロン部の空洞化調査、岸壁部潜水調査による構造変状調査を行っています。空洞化調査では地中レーダー探査を行いました。その他の港でも被害調査に着手しました。
 また、24日には水産庁漁港整備部を訪問し、漁港に対する復旧支援についても要請があれば協力を惜しまない旨を伝え、日本埋立浚渫協会の取り組みや方針について説明しました。今後、漁港の復旧は基本的に県からの要請により対応していくことになります。
 広範で甚大な被害に対し、協会の全国の支部からも支援が行われました。各支部は国土交通省の各地方整備局からの要請を受け支援物資などをトラックで運搬しました。

会員会社も現地投入部隊を編成

海底から障害物を引き上げている(仙台塩釜港)

 日本埋立浚渫協会の今後の作業展開では、各港において引き続き供用可能な岸壁を拡大させていくことや、その作業に必要な作業船・燃料油の確保、復旧に必要な資機材の調達、作業員の生活物資・宿泊施設の確保が重要となります。協会ではこれらの課題について検討していくとともに、港湾施設の応急復旧に向け施設の被害状況調査や復旧工法の検討などに迅速かつ全面的に協力できるよう部会等の活動を進めていく方針です。また、協会会員各社でも応急復旧について技術、施工部隊を編成し活動中です。今後の東北地方整備局港湾空港部等からの具体的な各種要請に対し他団体とも連携をとりながら、いつでも協力・支援できる体制を常時整えています。

あいさつする室井国土交通大臣政務官

東北関東大震災港湾関係団体災害対策本部の対応状況(3月21日〜29日)

※おことわり 一部空白部分は、正確な情報が入手できていないため未記入としましたが、作業は毎日行われています。