注目プロジェクト

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新湊地区に新たなゲートウェイが誕生

 伏木富山港新湊地区(富山新港)の港口をまたぐ臨港道路富山新港東西線が、9月23日に開通した。2002(平成14)年に事業着手され、約10年の歳月をかけて、地元の悲願がようやく達成された。

富山新港は、1968(昭和43)年に国際貿易港として開港した。潟湖であった放生津潟(ほうしょうづがた)を掘削し、海岸線を走っていた鉄道や道路を解体、切断して航路を拓いた。このため、放生津潟を挟んで広がっていた地域は分断され、再び地域間を結ぶ道路建設が地元の悲願となっていた。
 臨港道路富山新港東西線は、総延長3,600m。西側アプローチ部1,350m、主橋梁部600m、東側アプローチ部1,650mで構成される。このうち、航路を跨ぎ主橋梁部となる「新湊大橋」は、日本海側最大級の斜張橋で、海王丸が停泊する西側アプローチから橋を臨むと、背後に美しく佇む立山連峰が見える。

新湊大橋は、2車線の車道(路肩幅員1.25m)の下に自転車歩行者道が入る2層構造の斜張橋。桁は主径間が鋼桁で、側径間がPC桁。主塔に設置した72本のケーブルで桁を支える。車道の下に配置された自転車歩行者道は、主塔に隣接する橋脚に設置されたウォークインスルー形式のエレベータでアプローチする。主径間は360mで、東西の主塔高さは127m。橋桁から海面までの高さは47m(航路部)もあり、大型船もスムーズに航行が可能だ。
 主桁の基礎はニューマチックケーソン工法が採用され、他の基礎はリバースサーキュレーション工法で施工された。ニューマチックケーソン工法は無人化施工で実施。他の基礎工事は施工場所が民家に近いこともあり、リバースサーキュレーション工法を採用し、騒音や振動を最小限に抑えるようにした。
 橋脚の断面を経済性の高い断面に変えるなど、コスト縮減にも取り組んだ。施工期間中に資材高騰などの影響も受けたが、最終建設費は485億円になった。

強風対策は、「フェアリング」と呼ばれる風切り装置を主桁部に設けて、風がスムーズに流れるように配慮したほか、主桁に隅切りを施すことで気流の流れを円滑にし、大振幅振動を抑えている。地震対策も実施。弾性拘束ケーブルやオイルダンパー、免震支承などを採用し、阪神淡路大震災クラスの強い揺れでも壊れないように工夫されている。
 今回の臨港道路富山新港東西線の開通で、地元では商業や文化などの人流・物流が一層活性化されるとともに、同橋が富山県のランドマークとして新たな観光資源になることに期待を寄せている。

 

日本海側最大級の斜張橋の「新湊大橋」。

9月23日に行われた開通式の様子。提供:国土交通省北陸地方整備局