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 日本埋立浚渫協会は、第25回「うみの現場見学会」を昨年10月30日に福岡県苅田町の苅田港で進む泊地浚渫工事の現場で開きました。地元の九州工業大学工学部建設社会工学科で学ぶ学生と大学院生、引率の担当教授の計30人を招き、巨大なグラブ浚渫船が稼働する港内の現場を案内し、会員各社が行う海洋工事の意義や役割、そのスケールの大きさ、やりがいをアピール。これから卒業後の進路を決める際に、海洋土木の仕事をぜひ選択肢に加えてほしいと呼び掛けました。学生たちの多くも、最新技術を駆使した迫力ある浚渫工事に大きな興味を持ったようです。
操船室でモニターを見ながら説明を聞く学生たち
 苅田港は、北九州市の南東に位置し、臨港地区には自動車やセメント、電力などの主要企業をはじめ、多くの港湾利用型企業の生産拠点が立地。山口県や沖縄県も含めた九州経済圏を牽引する港湾の一つです。
 苅田港の2018年の総取扱貨物量は3,637万t(外貿787万t、内貿2,850万t)。輸出貨物628万tのうち完成自動車が400万tを占め、完成自動車の輸出台数では全国5位となっています。一方、輸入貨物159万tのうち106万tが石炭で、電力会社やセメント関連企業の生産活動を支えています。
 2018年の苅田港の貿易額は1兆102億円で、特に輸出額は9,972億円と九州の港湾では3位、全国でも16位。貿易黒字額は九州経済圏でも博多港に次いで多い9,442億円に上ります。苅田港が生み出す経済力は大きく、港が位置する苅田町は、製造品出荷額で九州では大分市、北九州市に次いで3位。九州では唯一の地方交付税不交付団体になっています。
 こうした苅田港で今進められているのが、「国際物流ターミナル整備事業」です。後背地への企業集積の進展で取扱貨物量が増え、輸送船舶も大型化。これに対応できるよう航路・泊地の増深・拡幅と大型岸壁の整備を行うのがこの事業です。2018年度には、4万DWT(重量トン数=積載できる貨物の重量)の貨物船が入港できる水深13mの航路の整備が始まりました。
 今回の見学会が行われた「苅田港(新松山地区)泊地(-13m)浚渫工事」もこの事業の一環で、国土交通省九州地方整備局が発注。若築建設が2019年8月6日から2020年1月17日までの工期で施工しています。現場では同社の最新鋭のグラブ浚渫船「若鷲丸」が泊地を増深する工事を進めています。
 見学会ではまず苅田港湾事務所で苅田港の概要や整備状況、見学する工事についての説明が行われました。冒頭、当協会の山下朋之企画広報委員長は「うみの現場見学会は2003年にスタートして17年間続く活動で、今回が25回目の開催となります。全国各地で自然災害の脅威を目の当たりにする中、社会インフラ整備の意義、それを支える技術、そして技術者・技能者についての関心が高まることを願っています」とあいさつ。苅田港湾事務所の八十島義浩所長は、苅田港の整備事業について説明した上で、「かつては3Kと言われた建設の仕事の魅力向上に官民一体で取り組んでいます。海洋土木に興味を持ち、ぜひ進路選択肢の一つにして下さい」と呼び掛けました。
 この後、学生たちは小型船で若鷲丸に渡り、作業中の船内を見て回りました。操船室では、モニター画面で海底の測深値などを確認しながらグラブバケットを操作する施工管理システムを見学。クレーンでつられた巨大なグラブバケットが海中と土運船の間を行き来する様子を間近で見て、多くの学生がスケールの大きさを実感した様子で、グラブバケットが一度にすくう土量がダンプトラック5、6台分との説明に驚きの表情を見せる学生もいました。
 見学後には、今回の浚渫工事でポンプ浚渫ではなくグラブ浚渫が採用された理由や、所定の深さまで掘り下げるための浚渫回数、土運船の運用方法など専門的な質問をする学生も。
 閉会のあいさつをした当協会の藪下貴弘企画広報委員会副委員長は「作業船を初めて間近に見た人も多いのではないでしょうか。見学会を通じて仕事のスケールの大きさやインフラ整備の重要性を知っていただけたと思います。昨今は自然災害が増えています。業界としても責任の重さを感じながら、仕事に取り組んでいきます」と述べ、見学会を締めくくりました。
 見学後のアンケートでは、「浚渫の仕組みや関わっている人の役割がよく理解できた」「スケールの大きさが理解できて良かった」「初体験でとても楽しめた」といった感想が寄せられました。また、多くの学生が「今後も機会があれば『うみの現場見学会』に参加したい」と回答しています。
事業概要についての説明を聞く学生たち 最新鋭のグラブ浚渫船「若鷲丸」
作業中の船内を見て回る学生たち 見学を終えた「若鷲丸」の船上で

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