うみの現場見学会

 日本埋立浚渫協会は、第24回「うみの現場見学会」を2月27日に東京都江東区の東京港で進む臨港道路南北線建設工事の現場で開きました。東京理科大学、芝浦工業大学、東京都市大学で土木などを学ぶ男子学生15人、女子学生10人の合わせて25人を招き、会員各社が取り組む海洋工事の意義や役割、仕事の魅力をアピールしました。参加した学生は1~4年生とさまざまで、今後の学生生活や社会生活の参考となる貴重な経験になったようです。

開会のあいさつをする山下委員長

東京港について説明する酒井所長

 東京港は、国際コンテナ戦略港湾である京浜港の一翼を担い、首都圏の経済・産業と人々の生活を支えています。海上コンテナ貨物の取扱量と貿易額はいずれも全国1位です。コンテナ貨物の取扱量の増加に伴い、新たなコンテナターミナル整備が中央防波堤外側地区で進むなど、港内では機能強化に向けたさまざまな事業が展開されています。
 中央防波堤地区と有明・青海地区とを結ぶ南北のアクセスは現在、青海縦貫線だけで、コンテナ車両の集中により交通渋滞が慢性化しています。幹線道路の渋滞緩和や新しい物流ルートの確保を目指すために計画されたのが臨港道路南北線です。2019年度中の完成を予定しており、2020年東京五輪・パラリンピック開催期間中は臨海部にある競技会場への関係者の輸送ルートとして活用されます。
 臨港道路南北線は延長約2.5kmの片側2車線で、海上部(延長930.8m)、アプローチ部(1,458.7m)、それらをつなぐ接続部(70.0m)の三つで構成されます。海上部は沈埋トンネル工法、アプローチ部は開削トンネル工法、接続部はニューマチックケーソン工法が採用されています。本体工事は2016年度にスタートしました。
 見学会ではまずテレコムセンターに集合し、東京港の成り立ちや進行中の事業などについて説明が行われました。冒頭、本協会の山下朋之企画広報委員長は「海上や海中の工事はどのように進められているのか、どんな技術が使われているのか、完成するとどういった役割を果たしていくのかなど、社会の皆様に海の工事を知っていただくことを通じて、建設産業の魅力を伝えたい」と見学会の主旨を話しました。
 東京港の整備を担当している国土交通省関東地方整備局の酒井敦史東京港湾事務所長は「港は船が大きくなっていくとその都度、新しいものを造っていかなければならないところが他のインフラとは違います」と港湾整備事業の特徴を紹介しました。
 見学対象の工事は、沈埋トンネル区間のうち「東京港臨港道路南北線沈埋函(4号函・5号函・6号函)製作・築造等工事」で、五洋建設・東洋建設・新日鉄住金エンジニアリングJVが施工しています。沈埋トンネルは全部で7つの沈埋函を使用します。この工事ではそのうち3つの沈埋函の製作と据え付けを担当しています。
 沈埋函を設置するためには、まずグラブ浚渫船によって海底を溝状に浚渫します。浚渫後にトレミー船を用いて基礎砕石を平坦に敷きならします。ドックで鋼製の沈埋函を組み立て、岸壁まで曳航した後、内部にコンクリートを充填します。沈埋函を沈設場所まで曳航し、鉛直・水平方向の位置を調整しながら沈設していきます。着底後、沈埋函同士はジャッキを使い水圧により接合します。沈埋函1つの長さは、サッカー場のゴールとゴールの間より長い延長134mで、国内の沈埋函では過去最長となります。
 学生たちは、水上バスのパレットタウン桟橋から見学船「ペルソナ」に乗船。船上デッキで南北線の現場職員から施工手順の説明を受けながら、沈埋函の設置場所や6号函の浮遊打設の状況を見学しました。
 中央防波堤外側埋め立て地で整備が進む新海面処分場や国際コンテナターミナル整備事業の関連工事なども見学しました。海上では作業船が何隻も稼働しており、配布された双眼鏡を使って船の様子を熱心に確認する学生もいました。
 その後の質疑応答で、学生からは新海面処分場の整備に導入されている地盤改良工法「サンドコンパクションパイル工法」について、大学で教わった内容を踏まえた質問などが寄せられました。施工管理を担当する会員企業の入社2年目の女性職員が、一日の仕事の流れも紹介しました。
 閉会のあいさつで本協会の町田周一関東支部長は、国交省が推進する「新3K(給料・休暇・希望)」を紹介し、藪下貴弘企画広報委員会副委員長からは、「マリコン業界は社会インフラの整備に貢献しているという自負を持っています。きょう参加してくれた学生の皆さんにもぜひ理解していただきたい」とあいさつがありました。

事業概要についての説明を聞く学生たち

6号函の浮遊打設現場

見学船をバックに