うみの現場見学会

 日本埋立浚渫協会は2017年11月27日、川崎港で進む臨港道路東扇島水江町線の建設現場で「第22回うみの現場見学会」を開きました。港湾整備の重要性や港湾土木技術の成果を広く周知することを目的にした見学会には、東京工業大学と横浜国立大学の学生と教員計27人が参加。海中という厳しい条件下で進む橋脚建設工事を見学してもらい、交通インフラの重要性とその整備に当たる建設業の役割に理解を深めてもらいました。

国土交通省関東地方整備局
川田貢京浜港湾事務所長

稲富路生企画広報委員長

 川崎港臨港道路の建設は、大規模な冷凍冷蔵倉庫などが集積する川崎港東扇島地区の物流・防災機能の強化を目的に、京浜運河で隔てられている東扇島地区と内陸部の水江町を延長約3kmの道路橋で結ぶ事業です。
 今回見学したのは、東扇島地区で東亜建設工業・若築建設・みらい建設工業JVが施工する「川崎港臨港道路東扇島水江町線主橋梁部(MP3)橋梁下部工事」。京浜運河に架かる5径間連続複合斜張橋で、延長約870mの主橋梁部に設けられる6基の橋脚のうち、東扇島側の主塔下部に当たるMP3橋脚を施工しています。橋脚基礎の施工では、長さ64.5mの鋼管矢板を井筒状に打設して内部に施工空間を確保する鋼管矢板井筒工法を採用。現在は外周90本、隔壁82本、合計172本の鋼管矢板の打設、井筒内での底盤コンクリートの打設を終え、頂版コンクリート工に向けた準備を進めています。
 見学会ではまず、東扇島のコミュニティー施設・川崎マリエンで現場の概要などを説明しました。冒頭あいさつした稲富路生企画広報委員長は「今回の現場見学を通じて、国民の生活・安全を支える社会資本・交通インフラ整備がどのように進められているのかを理解し、その中で果たしている建設業の役割、現場で駆使されている技術などを学んで下さい」と呼び掛けました。
 続いてあいさつした発注者である国土交通省関東地方整備局の川田貢京浜港湾事務所長は「港湾は国民が直接利用する機会が限られ、身近に感じる場面も少ないと思いますが、今回の貴重な機会を通じてインフラ整備の重要性を認識して下さい」と述べました。
 引き続き川田所長が、川崎港臨港道路をはじめとした管内のインフラ整備事業概要を紹介した後、東亜建設工業の吉田宏巳東扇島MP3作業所長が工事概要を説明し、一行は現場に移動しました。
 井筒内支保工を施工中の現場では、井筒内の安定と施工の合理化を図るため、工場製作した大組支保工(約40m×35m)を海上から起重機船を使って水中一括架設することを計画しており、当日は潜水士によるブラケットの溶接作業が行われていました。
 水中という厳しい条件下での作業を目の当たりにした学生たちからは、「潜水士は1日どれくらいの時間潜っているのですか」「水中での溶接はどのように行うのですか」「大組支保工にしているメリットはどんなものがありますか」「鋼管矢板の打設はどれくらいの精度で行っているのですか」といった施工に関する質問から、「潜水士の給料はどれくらいですか」「マリコンならではの仕事のおもしろさはどんなところにありますか」といった建設業の魅力に関わる質問までいただき、吉田所長をはじめ現場職員の方々が丁寧に答えていました。
 最後にあいさつした河瀬伸幸企画広報副委員長は「マリコンの仕事では、巨大な防波堤など地上では考えられない大きさの施設を浮力を利用したり、起重機船を使って造ったりと、スケール感の大きな仕事があります。現場では厳しい条件で作業することもありますが、自分で考えて、汗をかいて何十年も後世に残るものを造れることが大きな魅力です」と建設業の仕事をアピールして見学会を締めくくりました。

潜水士による大組支保工の架設準備を見学する学生たち

鋼管矢板井筒状内の水中で橋脚基礎工事が進む現場

学生たちからの質問に答える吉田所長(右から2人目)

見学会には学生ら27人に参加していただきました