うみの現場見学会

2014(平成26)年11月21日、一般社団法人日本埋立浚渫協会は第16回「うみの現場見学会」を開催しました。普段は入ることのできない港湾工事の現場を見てもらい、先端技術と施工中の雰囲気を体験してもらうとともに、社会インフラの重要性を認識してもらうことが目的です。今回は、国土交通省中部地方整備局名古屋港湾事務所の後援で、取扱貨物量、貿易額で国内トップを誇る名古屋市港区の名古屋港外港で進められている高潮防波堤嵩上工事を、地元の大学生と大学院生たちに見学していただきました。

あいさつをする鐘崎道生企画広報委員長
秋晴れの下、ご参加いただいたのは名古屋工業大学と名古屋大学の学生や大学院生、引率の教授など計40人。見学会の開会にあたり鐘崎道生企画広報委員長は「現場見学会は、当協会の広報活動の大きな取り組みの一つです。インフラ整備の必要性や会員各社が果たしている役割を実際に見てもらい、理解を深めてもらうために企画しています。土木を勉強されている皆さんには、今まで学んできたことが現場でどのように活かされているのかや、現場の運営で取り入れられている工夫などを自分の目で確認するとともに、ものづくりの喜びを感じてもらい、今後の研究にも役立ててほしいと思います」と、あいさつしました。
続いて、工事発注者の板生考司名古屋港湾事務所企画調整課長が名古屋港の開発の歴史と進行中の事業の概要を説明。施工会社を代表し、東亜建設工業㈱名古屋支店の太田喜之弥富作業所長が施工方法や手順のほか、現場近くを航行する大型船舶の航跡波予測、衝突予防などの安全対策を紹介しました。
愛知県の名古屋市、東海市、知多市、弥富市、飛島村にまたがる名古屋港は、陸域面積(臨港地区)約4,200haで日本一の広さです。自動車関連製品を中心に取扱貨物量も全国トップで、2013(平成25)年の貿易額は16.3兆円に達しました。2011(平成23)年5月には国際戦略バルク港湾(穀物)にも選定され、「貿易の要」としてさらなる発展に期待が寄せられています。
名古屋港沖の高潮防波堤は、1959(昭和34)年の伊勢湾台風で沿岸部を中心に甚大な浸水被害を受け、1964(昭和39)年に建設されました。完成から50年が経過し、老朽化が進んでいることに加え、大規模地震時には液状化によって大きく沈下し、機能が十分に果たせないことが危惧されています。
このため、2011(平成23)年から改良事業を行っており、伊勢湾台風クラスの高潮に対応すると同時に、想定される南海トラフ巨大地震などによる地震・津波に対して粘り強い構造にすることが目的です。
今回は、改良事業の一環として進められている「平成26年度名古屋港外港地区防波堤(中央堤)嵩上工事」(施工・東亜建設工業)を見学しました。沖合の人工島「ポートアイランド」から東西に伸びる中央堤の高さを6mから8mに嵩上するものです。上部工の延長は東側509m、西側289m。天端の高さからそれぞれ約2.5m、約1.7mコンクリートを打ち足す計画で、使用するコンクリートの量は約1.4万m3に上ります。工事は西側を先行し、10月中旬に着工しました。
作業はまず、防波堤に型枠材を取り付けるところから始まりました。当日、西側の底版部のコンクリート打設を台船バケット方式で行っていました。本方式は、コンクリートを入れたホッパーを船で防波堤まで運び、ホッパーをクレーン船でつり込み打設する方法です。
底版部の打設が完了すると、壁部の打設に移ります。コンクリート打設と並行し、断面の補修や防波堤先端にある信号所のケーブルの入れ替えなども行います。12月からはコンクリート製造設備を搭載したコンクリートミキサー船が現場に投入される予定で、工事の完成は2015(平成27)年3月を予定しています。
当日、学生たちは、当協会が用意した旅客船に乗り、現場へ移動。高潮防波堤の近くに到着後はデッキに上がり、嵩上工事の様子を間近で見学しました。現場に向かう途中、出番を控えているコンクリートミキサー船の近くを通り、学生たちは現場職員の説明に熱心に聞き入っていました。見学後の質疑応答も活発に行われ、参加者の中から建設業に就職を希望する人が出てくることに期待したいと思います。

名古屋港防波堤(中央堤)の施工場所

コンクリートミキサー船の説明を受ける学生たち

コンクリート打設が進む現場

名古屋工業大学と名古屋大学の学生や大学院生など40人が参加した。