うみの現場見学会

 2013(平成25)年11月1日、一般社団法人日本埋立浚渫協会は第15回「うみの現場見学会」を開催しました。普段は入ることのできない港湾工事の現場で使われている、先端技術と施工中の雰囲気を見てもらうとともに、社会インフラの重要性を認識してもらうことが目的です。今回は、国土交通省中国地方整備局宇野港湾事務所との共催で、中・四国トップの取扱貨物量を誇る水島港(岡山県倉敷市)で建設が進められている臨港道路の建設工事を、地元の大学生、大学院生に見学してもらいました。

あいさつをする佐々木邦彦企画広報委員長

 快晴の天気の中、見学会に参加いただいたのは国立大学法人岡山大学環境理工学部3〜4年生と、大学院環境生命科学研究科博士前期課程1〜2年生、引率の教授など計22人。見学会の開会にあたり佐々木邦彦企画広報委員長は「大規模災害となった東日本大震災から2年7カ月が過ぎました。その間、当協会の仲間は復旧・復興に全勢力を注いできました。そうした震災対応はもとより、物流、産業、生活など地域の発展を支えるインフラ整備に努めています。土木を勉強されている皆さんには、技術に加え、安全や工程、品質管理なども実際の現場で感じてもらいたいと思っています」と、あいさつしました。
 続いて、工事発注者の谷口清文宇野港湾事務所長と和田誠同副所長が水島港の特徴や事業概要を説明。施工会社を代表し、東亜建設工業株式会社中国支店の畠山竜裕水島統括作業所長が工事に採用されている技術などを紹介しました。
 水島港は、我が国の基幹産業が集積する水島臨海工業地帯に位置します。2011(平成23)年の総取扱貨物量は8,924万トンに上り、中国地方整備局管内で最大となります。輸入量は穀物が全国で5位、鉄鉱石が4位で、2011(平成23)年5月には国際バルク戦略港湾(穀物、鉄鉱石)に選定されるなど、今後の発展に期待が寄せられています。
 今回見学した「水島港臨港道路整備事業」は、生産拠点の水島地区と物流拠点の玉島地区間の港湾貨物輸送の円滑化を目指したものです。延長は2,564m。ルートは港湾に流れ込む高梁川の渡河部が約半分を占め、橋長は1,279mです。現在、渡河部で計19基の橋脚の設置工事が進められており、うち橋脚12基を設置する「水島港水島玉島地区臨港道路(渡河部)橋梁下部工事(その4)」、「同(その5)」(施工は両工事とも東亜建設工業・みらい建設工業JV)を見学しました。
 橋脚の施工では、鋼管矢板で土留め壁と基礎を兼ねる「鋼管矢板基礎工法」と呼ぶ技術が採用されています。台船やクレーン付台船、コンクリートミキサー船など複数の作業船を使い、懸命に工事が進められています。
 学生たちは、まず当協会が用意した船に乗り、河川内の作業台船へ移動。見学した橋脚工事は鋼管矢板の打設や鋼管内の掘削、中詰めコンクリートの打設などが完了し、躯体コンクリートの打設が行われていました。作業台船で施工手順や鉄筋などの説明を受けた後、仮設足場に上り、コンクリートミキサー船から鋼管内にコンクリートが打設される様子を間近で見学しました。
 橋脚の設置が完了した後、上部工の施工が行われ、2015(平成27)年度末の工事完成を予定しています。供用後は国道430号と連結されるため、これまで慢性的な渋滞を引き起こしていた国道429号霞橋や水島大橋の交通量が分散されます。港湾関連車両を含む大型車が多く通行する中で、自転車や歩行者の安全性・利便性も向上します。
 見学後の質疑応答では、「鋼管矢板がむき出しの状態でしたが、潮風などの影響で錆びたりしないのですか」「橋脚の寿命はどのくらいですか」「コンクリートのひび割れ対策はどのように行っているのですか」など、次々と学生から質問が出され、関心の高さが伺われました。
 今回の参加者の中には、ゼネコンに就職が決まっている学生もおり、見学会をきっかけに建設業界に入職を希望する人が増えることに期待したいと思います。

水島港臨港道路の位置図

鉄筋の重さを体感する学生たち

台船から橋脚に移動し
コンクリートの打設を見る

橋梁臨港道路の縦断面図