うみの現場見学会

さる2009年12月9日(水)、社団法人日本埋立浚渫協会主催の「うみの現場見学会」が開催されました。
日ごろなかなか見ることができない港湾工事の現場を訪れ、最先端の港湾土木技術に触れるとともに、社会インフラ整備の重要性を知ってもらうこの見学会も11回を数えます。今回は九州地区で初の沈埋トンネル建設プロジェクトである「新若戸道路沈埋トンネル部(4・5号函)築造工事」の現場を見学していただきました。

挨拶する(右)津田企画広報委員長
(左)松尾九州支部長

位置図
当日はあいにくの小雨が降りしきる中、ご参加いただいたのは福岡県立八幡工業高等学校の土木科2年生の生徒さんたちと先生、約40名。見学会では、当協会の津田映企画広報委員長が「今回の貴重な体験を大切にし、完成後の道路を通る際には建設中に見たこの現場のことを思い出してください」とあいさつ。続いて松尾耕三九州支部長が「国内有数の港湾土木プロジェクトを肌で感じ、皆さんの今後の進路を決める一助になれば嬉しい」と述べた後、事業者である国土交通省九州地方整備局北九州港湾・空港整備事務所の担当者から新若戸道路建設事業の背景、役割などについて説明がありました。
北九州市の洞海湾の両岸に位置する若松、戸畑の両地区をつなぐ若戸大橋(昭和37年完成)では、1日の交通量が約47,000台に上り、特に朝夕の交通渋滞が慢性化し、地域経済発展の妨げとなっています。周辺沿岸部にある「ひびきコンテナターミナル」はコンテナ船の大型化に対応できる日本海側で初の大水深-15m岸壁を備えた港で、貨物を運搬する大型車両が円滑かつ安全に走れる交通インフラの整備・拡充が喫緊の課題となっていました。
今後の港湾整備の進展に伴い、交通量の増大が予想されることから、響灘地区から戸畑・小倉方面へのスムーズな交通アクセスを確保するため、若戸大橋北側に洞海湾を横断する新たな臨港道路として、新若戸道路の建設が計画されました。
若松と戸畑の両地区を海底トンネルで結ぶ同道路の第一期整備(港湾施工分)事業の延長は1,181mで、うち海底部が557mとなります。海底部のトンネルは鋼・コンクリート合成構造(フルサンドイッチ構造)のブロック7函を沈設し、片側2車線の臨港道路を構築する計画です。

新若戸道路の平面図

沈埋トンネルの断面図
既に1〜5号函の沈設が完了し、順調に工事が進んでいます。残りの6・7号函では、本年度の国土技術開発賞・最優秀賞に選ばれたキーエレメント工法を採用。沈埋トンネルでの最終継ぎ手工の省略などにより、工期短縮・コスト低減などに寄与します。今夏にはすべての沈埋函の沈設作業が完了し、若松・戸畑間が海底トンネルでつながる予定です。
見学会では、4・5号函築造工事を担当する東亜・若築JVの篠崎照美作業所長から工事内容などの説明を受けた後、若松側の坑口からトンネル内に入りました。沈設が完了した沈埋函の函内を歩き、海の下にいることに興奮し、あらためてそのスケールの大きさに驚いた様子でした。
坑内の壁面に掲示されたこれまでの施工状況の写真などを見ながら、現在歩いているトンネルがどのように形づくられてきたかを確認し、沈埋函の水圧接合時に使用する伸縮性止水ゴムの模型を押したり引いたりして現場で使われている技術を体感しました。
現場見学後には近くにある「わかちく史料館」を訪ねました。洞海湾の開発事業の歴史や、地域と港湾のかかわりなどについて説明する白石泰隆館長の言葉に、興味深そうに耳を傾けていました。
過去・現在・未来へとつながる国土づくりに対する熱い思いが、ここ洞海湾でも脈々と受け継がれています。この見学会も次代の建設技術者たちの青春の良き思い出の一つとして残っていくことでしょう。

[写真左]熱心に説明を聞く高校生
[写真右]集合写真