海洋土木技術

⑥浚渫

 浚渫は、航路、水路、泊地などの水底や川底の土砂を取り除くことです。もともと浚渫には、水底の土砂をさらう(浚う、渫う)という意味があります。
 浚渫作業には、大型船舶が航行するための航路や泊地の増深・拡幅、表層に堆積した土砂の除去、河川や湖沼の泥や有害汚染物質の除去などがあり、目的に応じた作業船や工法が用いられます。
 浚渫技術は日々進化しており、これまで大規模な港湾整備に対応するため浚渫船の大型化や高効率化が図られてきました。現在では環境問題に対応するための技術開発が進んでいます。

1.グラブ浚渫

 グラブ浚渫は、グラブ浚渫船に装着されたグラブバケットで水底に堆積した土砂を掘削する浚渫方式です。
 浚渫深度はバケットを吊るロープの長さで調節するため、大水深や深さの変化が多い場所で効率よく浚渫することができます。また、グラブバケットの揚重比(バケット容量とバケット重量の比率)を大きくすることによって、硬土盤地質でも浚渫が可能です。作業時の船体固定および移動方式により、船体をアンカーで係留するアンカーチェーン方式と、船体から海底へ脚注を立てて船体の移動を止めるスパッド方式(アンカーレス方式)があります。
 近年、グラブバケットの密閉性を高めて汚濁の発生を抑え、水平掘り機構を付加して余掘り土量を低減することが可能な環境対応型グラブバケットが開発されるなど、環境負荷の低減が図られています。

グラブ浚渫船

環境対応型グラブバケットの例

2.バックホウ浚渫

 バックホウ浚渫は、船首端の低い位置に搭載したバックホウと呼ばれる油圧ショベルで水底の土砂を掘削する浚渫方式のことで、硬土盤土質や軟岩の浚渫に適しています。他の浚渫船に比べ掘削面を平坦にしやすく、狭い河川や湖沼での浚渫作業で広く活用されています。

バックホウ浚渫船

3.ポンプ浚渫

 ポンプ浚渫は、ポンプ浚渫船のラダーの先端に取り付けたカッターを回転させて海底地盤を掘削し、土砂を船内にあるサンドポンプで吸い上げ、排砂管を通じて埋立地まで排送する浚渫方式です。
 船体の後部に設けられたスパッドを用いて船体を固定し、スパッドを中心に船体を左右にスイングさせながら作業を行います。施工能力の高さが最大の特長で、大規模な浚渫工事で威力を発揮します。
 自航式のドラグサクション浚渫船や環境保全型の機能を備えた高濃度浚渫船もポンプ浚渫船の一種です。

ポンプ浚渫船

ポンプ浚渫船の浚渫状況

先端部分

・ドラグサクション浚渫
ドラグサクション浚渫は、ドラグサクション浚渫船から海底に下ろしたドラグアーム先端のドラグヘッドを通じてポンプで土砂と水を吸い込み、船内の泥艙に積載して埋立地や土捨場まで運搬する浚渫方式です。
非自航式であるポンプ船と異なり、ドラグサクション船は自航式で機動性が高く、航路の浚渫に適しています。近年、日本国内での稼動実績は少なく、主に海外で活躍しています。

ドラグサクション浚渫船の浚渫イメージ

海外での施工状況

・高濃度浚渫
高濃度浚渫は、従来の浚渫技術に加え、環境保全の機能を備えた浚渫方式です。カッターの周囲にフードを取り付け、浚渫土砂と水の接触時間を少なくし、余分な水の吸引を防いで高濃度に浚渫します。それにより、含泥率が向上し(50%以上)、水質汚濁による環境への影響を低減します。
高濃度浚渫方式には、気密バケットホイール式、ロータリーシェーバー式、回転バケット式などがあります。また、浚渫された土砂は、高濃度軟泥圧送船を用いて、圧縮空気を利用した混気圧送方式により、水を加えることなく高濃度のまま送泥することが可能です。

高濃度浚渫船