title
title
title
Back Number
大型クルーズ船受け入れへ専用岸壁を構築
 本州と九州の結節点に位置する下関港は、交通ネットワークや豊富な観光資源といった地理的優位性を生かし、東アジア周遊クルーズの拠点化を目指している。水先人の乗船が必要な強制水先区である関門海峡内は、背後地の不足に加え、船舶航行が5万t未満に限定されるなどの制約があることから、日本海側の新港地区でクルーズ船専用岸壁の築造工事が進められている。人工島(長州出島)に水深12mの岸壁を築造する工事は、あおみ建設九州支店が担当。同社管理本部総務部の吉見早友理さんが施工現場を訪ねた。
気象・海象を見極め、ケーソン運搬・据え付け
吉見 工事の内容を教えてください。
永松 関門海峡を望む下関港は、いくつかの地区に分かれていて、西山・荒田・福浦地区、本港地区、東港地区、岬之町地区、長府地区とたくさんある中の新港地区に、クルーズ船専用岸壁を築造する工事です。新港地区は「長州出島」という名称の沖合人工島です。国際コンテナ貨物の増大や船舶の大型化に対応するため、関門海峡内に比べて制約が少なく、将来への発展可能性が高い響灘側に造成され、下関市の新たな国際物流拠点として2009年3月から一部供用が始まりました。長州出島はホームベースを逆さにしたような形状で、その左下の部分に延長380m、水深12mの岸壁を2019~22年度の3カ年の国土交通省直轄事業で築造しており、当社は中間に当たる20年度の発注工事を施工しています。
吉見 岸壁はどのようにして築造するのですか。
永松 潜水探査工に始まり、海上地盤改良工、基礎工、本体工、上部工、付属工、裏込・裏埋工といった工程で進めますが、ここでは本体工にケーソン工法が用いられています。今回は1函の大きさが長さ19.8m、幅5.2m(底面8.2m)、高さ14.0m、重さ995.5tのものを全体で16函使用します。ケーソン製作は別工事で他社が担当しており、長州出島内の陸上作業ヤードで製作されたケーソンの運搬・据え付けを当社は6函分、施工しました。
吉見 1,000t近い重量物の運搬方法は?
永松 大型のクレーンが搭載された起重機船(2,200t吊)でケーソンを吊り上げ、そのままの状態で曳船が据え付け箇所まで曳航します。製作ヤードから据え付け位置までは約1.7kmあり、およそ75分かけて慎重に運搬し、最終据え付け箇所にセットした後、海水を注水して沈設します。一連の作業工程で最も気を配ったのが、風の影響です。風が強いと、ケーソンを吊り上げた状態の起重機船が揺動したり、流されたりする危険があるからです。特に冬場は強風が吹きますので、4月の第1週に1日1函ずつ、比較的静穏な朝6時から正午までに運搬・据え付けを実施し無事完了することができました。

ケーソン曳航・据付状況

感染防止と熱中症対策、体調管理も万全に
吉見 港湾の工事はとりわけ気象・海象による影響が大きいですね。
永松 冬季波浪といって冬場は日本海特有の季節風によって15m/s以上の強風で作業中止となることが多く、工程の遅れが生じないよう、気象・海象の情報を常に把握しながらの施工となりました。上部工は6月から9月に実施しましたが、梅雨時から台風シーズンにかけてのコンクリート打設となり、天候による遅延が生じないような工程調整を心掛けました。また、隣接している国際物流ターミナルが稼働しながらの工事となるため、週2日の定期コンテナ船の運航スケジュールを考慮して工程の進捗を管理しました。現在の進捗率は90%。上部工の施工が完了し、付属工として防舷材や車止めの取り付け、仕上げの裏込め材の投入などを残すところとなりました。
吉見 施工現場にWebカメラが設置されていましたが。
永松 ICT(情報通信技術)を活用した次世代施工管理手法のモデル的運用として、モバイル端末があれば、どこでもリアルタイムで作業の進捗状況が確認できるようにしてあります。海上に岸壁が出来ていく様子を定点記録し、映像を残すことで担い手確保につなげる狙いもあります。
吉見 現場の責任者としてどんなことに苦労されましたか。
永松 コロナですね。当作業所の工期は、新型コロナウイルスの感染が拡大していく時期に重なっていたので、作業員、職員の体調管理にいつも以上に気を使いました。感染者が出て現場が止まることがないよう、手洗い・消毒、近接作業時のマスク着用、事務所・詰め所の換気の徹底を励行しました。さらに夏場は熱中症への注意も欠かせません。熱中症対策設備の使用や塩分・水分の補給を行い、健康面に気を配りながら作業を進めたおかげで順調に工事が進み、残り3週間ほどとなりました。最後まで気を抜かず無事故無災害で引き渡したいと思います。
吉見 早くコロナ禍が収束し、クルーズも再開して、長州出島が来訪者で賑わうといいですね。
(取材は9月16日に行われました)

施工現場で作業所スタッフと

工事概要
工事名 令和2年度下関港(新港地区)岸壁(-12m)築造工事
発注者 国土交通省九州地方整備局
施工場所 山口県下関市長州出島町1番地先
工期 2020年9月15日~2021年10月25日
取材を終えて
苦労と共に達成感も詰まった現場
 折しも台風が接近中だったため、現場では周囲の安全に配慮しながらクルーズ船専用岸壁の施工作業を進めていました。ケーソン6函を吊り上げ、据え付け場所まで船で運ぶ際に、10m/s以上の風で現場は止まるため時間との勝負だったとお聞きしました。
 新型コロナウイルスの影響でクルーズ船の往来がない分、港内の作業はスムーズに進んだとのことですが、熱中症も含め社員や作業員の方の体調管理や、天候を見極めながらコンクリートを打つ作業は大変だったと思います。実際に施工中の岸壁を歩いてみて、出来上がるまでの工程には苦労と共に達成感もたくさん詰まっているんだなと実感し、初めて現場見学をした私にとって良い経験になりました。永松所長をはじめ現場の皆様、お忙しいなか貴重な時間をありがとうございました。ご安全に!!
(吉見早友理)
 

Back Number