茨城港は茨城県内の3港(日立港、常陸那珂港、大洗港)を統合する形で2008年12月に生まれた重要港湾。このうち常陸那珂港区は北関東の物流拠点であると同時に、港区内の北ふ頭地区では出力200万kWの火力発電所(東京電力常陸那珂火力発電所)が稼働し、首都圏のエネルギー基地ともなっている。港区内の中央ふ頭地区で現在進められている廃棄物埋立護岸工事はこの火力発電所と密接な関係がある。五洋建設・みらい建設工業JVの施工現場を五洋建設東京土木支店総務部の田坂満さんが訪ねた。
田坂 廃棄物埋立護岸を築造していると聞きました。どのような工事ですか。
山口 常陸那珂火力発電所は石炭を燃料とした発電所で、燃料消費によって発生する1日当たり約1,600tの石炭灰は港区内にある管理型処分場で埋立処理されていますが、既存の処分場が今後一杯になってしまうので、隣接して海上に次期処分場の護岸を築造しています。
田坂 海上での処分場の建設方法を教えてください。
山口 次期処分場は上から見ると縦(東西)700m×横(南北)800mの長方形をしています。海底の地形は沖合に向かって緩やかな勾配で深くなっていき、水深は13~19m。処分場外周の護岸は、水深が浅いところはハイブリッドケーソン工法で、深いところは鋼板セル工法で施工し、当JVはセル方式の護岸築造のうち南東の角の部分を担当しています。
田坂 鋼板セル工法というのは一般的な施工法ですか。
山口 工法自体は一般的です。鋼板を陸上の作業ヤードで溶接して、巨大な茶筒のような円筒状に組み立てたものを海上に運搬し所定の海底地盤に据え付け、土砂で中詰めを行う作業を繰り返した後、セルとセルの隙間をアークと呼ばれる円弧状の鋼板で締め切り、同じように中詰めしてセルとアークを一体化させて護岸を構築します。鋼板セルの据え付けにはバイブロハンマーとウォータージェットを使用する「打設方式」が多く用いられますが、地盤条件や水深を考慮し、ここでは基礎の上に鋼板セルを設置する「置きセル方式」を採用しています。その点では適用事例の少ない工法といえます。