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防波護岸の遮水対策で津波に強い水産ふ頭を整備
 太平洋に面した茨城県の東部。鹿島灘の北端に位置する大洗町は、豊かな水産資源に恵まれ、県内外から多くの人が訪れる有数の観光スポットになっている。地域の発展を支える茨城港大洗港区は、2011年3月11日の東日本大震災で津波が押し寄せ、大きな被害が発生。中でも漁船が並ぶ水産ふ頭地区では、津波の引き波によって港内の海水が流失。物揚場や漁船などに甚大な被害が出た。こうした被害を教訓に茨城県は、透過構造の防波護岸に遮水改良を施すとともに、防潮壁の整備や上部工の嵩上げを行う事業に着手した。今回の工事もその一環で、津波と高潮に強い水産ふ頭の整備が着々と進んでいる。株木建設東京本店管理部の糸島瑛莉香さんが現場を訪ねた。
裏込め部を掘り下げ、コンクリートに置き換え
糸島 8年前の東日本大震災の時には、この港でも大変な被害が出たと伺いました。
塚本 大洗港区の水産ふ頭地区を外海と隔てている南防波護岸は、堤体が透過構造になっています。簡単に言うと、堤体の中を海水が行き来できる構造になっているのです。東日本大震災の際、ここには高さ4.2mの津波が押し寄せました。その引き波によって、水産ふ頭地区内の海水が港外へ流失し、物揚場や漁船などに甚大な被害をもたらすことになったのです。
糸島 それを教訓に事業が始まったのですね。
塚本 震災後、茨城県では津波高潮対策事業によって大洗港区の防潮堤整備を進めることになりました。
糸島 水産ふ頭地区ではどのような事業が行われるのですか。
塚本 水産ふ頭地区は、魚市場や飲食店などが立ち並び、漁船やふ頭を眺望できる県内でも有数の観光スポットになっています。県には、地元から「景観を損ねないように防潮堤を整備してほしい」との要望が寄せられたと聞いています。そこで、水産ふ頭地区の外郭を防護ラインとし、透過構造の南防波護岸に遮水対策を施すことになりました。堤体を遮水構造にすれば、津波が来ても引き波の際に地区内の海水が流失せず、港内を静穏な状態に保つことができます。それによって水産ふ頭地区内と港湾の後背地を守ることができます。最終的には水門を設置して港内を完全に締め切ることができるようにする計画だそうです。
糸島 今回はどのような工事なのですか。概要を教えてください。
塚本 今回の工事は南防波護岸のうち一部区間の津波高潮対策工事です。延長は220mで、当社JVが100m、他社JVが120mを分担して施工することになりました。物揚場の遮水対策として、護岸背面の裏埋め土砂と石材を取り除き、コンクリートに置き換えることで堤体を遮水構造に変えます。防潮壁の整備として、東日本大震災時の津波の高さを考慮し、4.5mの高さのコンクリート壁を構築し、さらに高潮と越波対策のため、上部工と消波工の高さを従来よりも約1.1m嵩上げします。
工事の手順などについて熱心に質問する糸島さん
防潮壁と上部工・消波工の嵩上げも実施
糸島 どのような手順で工事を進めてきたのですか。
塚本 まず遮水対策工を行いました。延長が100mありますから、1ロットを10mとして施工しました。既設コンクリートを撤去した後、海抜1.5mの現況地盤から約6.3mの深さまでバックホウで掘削します。水深4.8mまで掘り下げて砂層を確認した後、漏洩防止シートを敷き、裏込め部に水中コンクリートを打設すると遮水対策が完了します。次に上部工の嵩上げを行い、消波工の嵩上げ腹付けのため12.5t型の消波ブロックを据え付けます。並行して防潮壁を構築し、最後にコンクリート舗装を行うと完成です。
糸島 苦労したのはどのような点ですか。
塚本 やはり遮水対策工に最も苦労しました。掘削中に昔の大きなコンクリートブロックが出てくるなど予想外の出来事もあり、100mの区間をすべてコンクリートに置き換えるのに5カ月かかりました。もちろん作業は気象・海象に大きく左右されます。のり面に大きな凹凸があると漏洩防止シートがきれいに敷設できないため、袋詰めした玉石を使って平らにするなどの工夫も取り入れました。コンクリート打設は潮位に合わせてスケジュールを組む必要がありました。このような遮水対策工は全国でも非常に珍しい工事だそうです。
糸島 いろいろ苦労があるのですね。
塚本 港湾工事は自然が相手ですから人間の力業は通用しません。長年の経験が物を言う世界でもあり、独断ではなく経験者や作業員の意見をよく聞きながら作業を進めることが大切です。今回は予想以上に海の状態が良い時期に作業ができました。
糸島 安全面ではどのような点に注意をしましたか。
塚本 海の工事では無理は絶対に禁物です。陸上と違い、ちょっとしたトラブルが大事故につながる危険性があるからです。作業員とのコミュニケーションを密にし、風通しの良い明るい現場にすることを常に心掛けてきました。
糸島 2月末の完成がもう間近です。
塚本 最後まで気を引き締めて作業に当たります。
コンクリート舗装を終えた物揚場で
工事概要
工事名 南防波護岸津波高潮対策工事(その1)
発注者 茨城県
受注者 株木建設・鈴縫工業特定建設工事共同企業体
工事場所 茨城港大洗港区
工期 2018年3月16日~2019年2月28日
取材を終えて
チーム力の強さ、ひしひし感じる
 現場を取材して興味を持ったのは、気象を考慮した工事の段取りと地元の人や協力業者とのコミュニケーションの大切さです。今回の工事では、堤防を掘削して出来た法面にゴム製の遮水シートを張り、その上にコンクリートを流し込む作業がありますが、台風などでシートが浮いたり流されたりしてしまうと工程に甚大な影響が出るそうです。そこで一年を通した気象の把握が重要なカギを握ります。その上で作業の安全と工事の進捗などを考慮した次の段取りを考えることが必要です。所長の決断の責任の重さを感じました。 急な天候変化で工程を早める場合、協力業者との日ごろの打ち合わせとコミュニケーションがカギになります。急な工程の変更があっても工事がうまく進んだのは協力業者の理解があったからだと思います。そこに強いチーム力を感じました。 そうして出来上がった堤防の堂々としたたたずまいに、大きな津波から街を守る安心と力強さを感じました。当社がこの工事に携われたことを誇りに思います。次の工事もご安全に。
(糸島 瑛莉香)
 

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