大分県南部、佐伯市にある重要港湾・佐伯港。穏やかな佐伯湾の奥部に位置し、地形と水深に恵まれた天然の良港として古くから栄えてきた。戦前は軍港として整備され、戦後は高度経済成長と共にパルプ、造船、セメント、合板などの工場が背後地に進出。近年は東九州自動車道の全線開通などに合わせ流通機能の高度化を図る港湾施設整備が進められている。1970年代半ばに木材埠頭として岸壁が整備された女島地区では、貨物量の増加や船舶の大型化に対応するため、未整備区間も含めた岸壁の改良工事が行われている。みらい建設工業が施工する今回の工事もその一つ。管理本部経理部の相場祐希さんが現場を訪ねた。
相場 工事の概要を教えてください。
小笠 この工事で整備しているのはジャケット式の岸壁です。海底に鋼管杭を打設し、別の場所で組み立てた鋼管トラス構造のジャケットをその上に据え付けた後、コンクリートの床版を敷いて岸壁を造ります。ジャケットは別の場所で製作するので、現場で行う作業を省力化できるのが特徴です。
相場 作業はどのように進めてきたのですか。
小笠 まず海底の障害物を取り除いた後、径が1,000mmの鋼管杭を14本打設しました。杭は1本の長さが55.5mと56.5mの2種類あり、どちらも一度で打ち込むことはできません。下杭を打った後に溶接で上杭を継ぎ足し、所定の支持力が得られるまで打ち込みます。杭の打設作業を行っている間に、北九州の工場でジャケットを製作し、据え付け作業を行う日に合わせて現場まで海上輸送しました。据え付け作業では、700t吊りの起重機船を使ってジャケットを吊り降ろし、杭と一体化しました。
相場 技術的に難しいのはどういうところですか。
小笠 鋼管杭をいかに精度良く打ち込むか、そこに非常に気を遣いました。杭を普通に打ち込むと、どうしても少し位置がずれたり傾斜が付いてしまったりします。設計図通りの位置に正確に打ち込んでおかないと、運んできたジャケットの接合位置と合わなくなる恐れがあるのです。
相場 どのように解決したのですか。
小笠 通常、位置のずれや傾斜は10㎝、2度以内というのが許容範囲ですが、今回は5㎝、0.5度以内とより厳しい目標を設定して管理を行いました。下杭の打設はバイブロハンマーで傾斜・位置の調整を行い精度を確保し、上杭をフライングハンマーで打撃して所定の支持力を確保しました。