title
title
title
Back Number
沈埋トンネルで東京港へのアクセス充実
 国内最大の物流拠点として、大量のコンテナ貨物が集まる東京港。新たなコンテナターミナルの整備も進む中、背後圏とのアクセス道路の充実が大きな課題になっている。首都高速道路が通る有明地区とコンテナターミナルのある中央防波堤地区とを結ぶ道路は現在、青海縦貫道路(第二航路海底トンネル)の1本だけ。コンテナ車両の集中で大渋滞を引き起こしている。そこでこれに並行する形で計画されたのが臨港道路南北線だ。第二航路を横断する沈埋トンネルの工事現場を、東亜建設工業経営企画部広報室の菊島沙織さんが訪ねた。
各地の工場でブロック製作、精度確保を徹底
菊島 東京港臨港道路南北線はどのような事業なのですか。
鈴木 有明地区と中央防波堤地区を結ぶ延長約2,500mの道路を新設する事業です。青海縦貫道路と合わせて東京港の南北軸が2ルート確保されることになり、物流が円滑化すると期待されています。周辺には2020年東京五輪の競技会場も整備されており、そのアクセス道路にもなると想定されています。ルートは第二航路を横断する海上部と、その両側のアプローチ部、これらをつなぐ接続部で構成され、海上部が約931mの沈埋トンネルになります。沈埋トンネル区間は4工区あり、うち一つの工区を当JVが施工しています。
菊島 沈埋トンネルはどのように造るのですか。
鈴木 ドックなどで製作した複数の沈埋函を海底に掘った溝に沈めて連結し、土砂をかぶせてトンネルを構築します。海底下の浅い場所に設置できるので、トンネルを掘削する工法に比べて延長を短くでき、建設費の縮減につながります。沈埋函は造船所などで製作するので、高品質なトンネルを築造できるのも大きなメリットです。
菊島 随分大きな工事ですね。
鈴木 沈埋工法によるトンネル建設は少なく、特に今回のような大規模なプロジェクトは珍しいので全国から職人さんに集まってもらいました。培われてきた技術やノウハウは貴重です。
菊島 沈埋函のスケールの大きさに驚きました。
鈴木 ここの沈埋トンネルは、南から北に向かって1号から7号まで七つの函を連結して全体を構築します。当JVが担当しているのはこのうち2号函と3号函の二つ。どちらも長さが134m、幅が27.8m、高さが8.35mという巨大な構造物です。
菊島 沈埋函の造り方を教えてください。
鈴木 一つの函をいくつものブロックに分け、各地の工場でそれぞれ厚さ8mmの鋼板を加工して製作します。それらを1カ所のドックに運び、組み立てていきます。組み上がったものは、床、壁、天井が二重の鋼板の枠でできた鋼殻と呼ばれ、中に水が入らないよう両側にバルクヘッドと呼ぶふたを取り付けると水に浮かびます。これを岸壁まで曳航し、浮かべたまま枠の中にコンクリートを打設します。
菊島 技術的に難しいところはどこですか。
鈴木 沈埋函の製作には非常に高い精度が求められます。全長134mで許容される誤差が2cm程度という厳しさです。この工事では2号函を計59ブロック、3号函を計80ブロックに分割して全国各地の工場で製作し、2号函は千葉県市原市、3号函は横浜市のドックで組み立てました。ブロック製作の段階から事前打ち合わせを徹底して高い品質を確保しました。船の往来が多い東京湾内で沈埋函をどう安全・円滑に移動させるか、さらに隣接工区との調整も気を遣うところです。今年は台風が例年になく多いことにも悩まされています。海上作業は天候と海象に大きく左右されますから、台風が頻繁に来ると、なかなか工程通りには作業が進まなくなります。周辺では五輪施設の工事も本格化しているため、生コンの確保などにも苦労しています。さまざまなことを常に臨機応変に判断しなければなりません。
沈埋函にウインチタワーを設置する作業
台風で工程管理に苦労、熱中症対策にも注力
菊島 安全対策も重要ですね。
鈴木 熱中症対策には特に気を配りました。本体コンクリートの打設作業では、コンクリートの硬化熱で函内の気温が50度にも達することがあります。函上での作業も炎天下では鉄板上で焼かれるような暑さになります。休憩を多く取れるよう、一回の作業時間を短くしたり、溶接作業を涼しい時間帯に行ったりといった工程上の工夫をしたのに加え、クーラーハウスを設置したり、飲料水や冷たいおしぼりをいつでも使えるようにしたりと、作業環境の改善にも力を入れました。
菊島 竣工まで約半年。いよいよ追い込みですね。
鈴木 まず仮置きしていた沈埋函を岸壁に移動させ、沈設作業に必要なウインチタワーなどを函上に設置します。準備が整うと、所定の位置へ函を曳航して沈設作業を行います。高い精度が必要な緊張する作業です。シミュレーションを何度も繰り返し、天候と海象条件をよく見定めた上で実行します。ここから先は函内で行う作業も増えていきます。足元が悪く、狭くて暗い空間でさまざまな作業が同時並行で進みますから、安全には十分に気を配らなければなりません。絶対に事故を起こさずに完成させること、それが最大の目標です。
沈埋函の接合方法を聞く菊島さん
ドックで組み立て中の沈埋函
工事概要
工事名 東京港臨港道路南北線沈埋函(2号函・3号函)製作・築造工事
発注者 国土交通省関東地方整備局東京港湾事務所
施工者 東亜・鹿島・若築特定建設工事共同企業体
工事場所 沈埋函築造/東京都江東区青海地先
沈埋函製作/千葉県市原市八幡海岸通(2号函、三井造船千葉事業所)、
神奈川県横浜市中区錦町(3号函、三菱重工業横浜製作所)
本体コンクリート/千葉県船橋市高瀬町(浮遊打設、京葉食品コンビナート岸壁)
工期 2016年4月13日〜2019年3月15日
取材を終えて
気を抜けない作業、どうぞご安全に!
 経験者が少ない沈埋工法。職人さんも全国から集めなければならず、それ故、同じものでも人によって呼び方が異なるなど、初めは理解するのに苦労したという鈴木副所長。通常なら10年ほどかかる工事を4年で完成させる工期の短さと資材調達の難しさ、例年より多い台風、隣接区間との工程調整。作業を進めながら決めることも多く、臨機応変が大切だと聞きました。
 いよいよ見せ場の沈埋函の沈設。「接合」は一番緊張する工程だそうです。シミュレーションを何度も行い、さまざまな管理手法を用いて位置を正確に確認しながら慎重に。最後まで気を抜けない作業がとても多いようです。どうぞご安全に!
(菊島 沙織)
 

Back Number