2017年の訪日クルーズ旅客数は前年比27.2%増の253.3万人、クルーズ船寄港回数は同37.1%増の2,765回といずれも過去最高を記録した(国土交通省港湾局産業港湾課)。港湾別では博多港に次いで長崎港が3年連続第2位。一度に多くの観光客が訪れ、地域経済に活況をもたらしている。長崎港へのクルーズ船寄港回数は15年131回、16年197回、17年267回と年々増加の一途をたどり、10万総トン級を超える大型客船の増加が顕著となっている。長崎港の松が枝地区では、クルーズ船の大型化に対応する岸壁改良工事がりんかい日産建設の施工で進んでいる。総務部総務課の四家万梨子(しけ・まりこ)さんが現場を訪ねた。
四家 どのような工事内容か教えてください。
久保田 長崎港での大型クルーズ船の受け入れ環境を改善するために、係留ドルフィンと呼ばれる係船設備、つまり船をロープで岸壁につなぎ止め、固定しておくための係船柱を増設したり、水深が浅かったところを浚渫して深くしたりして、既設の岸壁をより使いやすく改良する工事です。現在の工事は総仕上げに当たる第4期目の工事で、工期は7月いっぱい。竣工まで残りわずかです。
四家 現場を見せていただいたときも大型客船が停泊していましたね。
久保田 あの船(コスタセレーナ)は総トン数が11万4,500総トン。全長は290mあり、乗客と乗組員を合わせて約5,000人を乗せてくる。船が泊まっていたことで分かるように、供用中の岸壁で改良工事を行っているのが当現場の特徴です。一番大きい船だと16万8,000総トン。全長は348mもあります。16万総トン級も月に3,4回入ってきます。
四家 クルーズ船が寄港するときは工事を中止するのですか。
久保田 大きい船が入ってくるときは、その1時間前までに現場を片付けます。出港するときも同様です。海上部での鋼管杭打設や浚渫工の際には、クルーズ船の入出港に合わせて作業船を出し入れする必要がありました。海上で杭打ち作業を行うための杭打ち船は、頻繁にクルーズ船が出入りするこの現場の事情を考慮して、限られた施工場所内にも配置が可能な船舶を選択しました。
四家 浚渫工はどのように行うのですか。
久保田 水深がマイナス5.5mと浅いところの海底地盤を大型客船に対応してマイナス12mまで掘削しました。海底の土砂を大きなかぎ爪を備えたバケットでつかみ上げることができる「グラブ浚渫船」が活躍します。そのほかに掘削した土砂を運ぶための「土運船」、自力で航行できない作業船を移動させるための「押船」、周辺を航行する船舶への安全監視を行う「安全監視船」を配置して工事を進めます。作業範囲には作業時の濁りが周囲に広がらないようにする汚濁防止枠を設置し、その枠の中でグラブ浚渫船を使って海底地盤を掘削し、土運船に積み込み、土運船がいっぱいになったら押船を接続して揚土場所まで運搬します。