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50m超の鋼管杭を海底に打設
 鹿児島・奄美大島にあり、海上輸送網の拠点として機能する名瀬港(鹿児島県奄美市)。フェリーターミナルがある本港地区の港湾施設は、島民の生活に不可欠な生活物資の受け入れなどで重要な役割を果たしている。株式会社不動テトラが施工を担当し同地区で進む岸壁改良工事は、完成から30年以上が経過し老朽化している岸壁を前出ししながら、上部工を更新するプロジェクトだ。現場代理人の松村明正作業所長は、刻々と変わる天候への対応や的確な資機材の調達・搬入など「現場の状況を的確に把握しどう判断するか、技術者として手腕が問われる」と話す。新入社員の管理本部総務人事部の石埜由莉(いしのゆり)さんが現場を訪れ、工事のポイントなどをリポートしてくれた。
格点ストラット工法で老朽岸壁をリニューアル
石埜 工事の概要を教えてください。
松村 供用開始から30年以上が経過し老朽化が進んでいる岸壁を改良し、海上物流が安全に行える環境を確保しつつ、機能向上を図るのが工事の目的です。既存岸壁の上部工を撤去し新しいものに更新すると同時に、岸壁の前方に鋼管杭を打設して基礎を造り、その上に新しい上部工を設置して岸壁を海側に20mほど拡張する工事も行います。コストや耐震性能を考慮して、上部工には格点ストラット工法という技術を採用しています。
 既設岸壁の上部工はすでに撤去済みで、まずは元々あった鋼管杭を利用して上部工を作り直します。作業ヤードで製作したPC部材を現場に搬入して据え付け、接続部分に型枠を組んでコンクリートを打設し、一体化します。拡張部分は新しく33本の鋼管杭を打ち込むのですが、海底は珊瑚礫層という柔らかい地盤が厚く堆積しています。その層を突き抜けて支持層に達するには、50mを超える杭を打たなければならない場所もあります。
石埜 工事を円滑に進めるため、どのような点に気を配っていますか。
松村 奄美大島という場所柄もあり台風襲来など天候への配慮は欠かせません。台風が接近すれば工程の変更や現場の安全確保などが必要になります。天候の変化をどう予測し対応するか判断力と行動力が問われます。また離島での工事ですから鉄筋や鋼管杭といった資機材の調達にも気を遣います。特に鋼管杭は遠い場所から船で現場に運びます。現場に到着しても作業ができなければそれだけコストが掛かります。現場の作業状況をしっかりと見極め、判断するのは非常に難しいですね。
石埜 現場を拝見して大変なお仕事だと感じました。
松村 既存岸壁のリニューアルと拡張部分の新設を効率良く進めなければなりません。今年は台風の当たり年でもあるので、できるだけ前倒しで作業することを心掛けています。また奄美大島は世界自然遺産への登録を目指しています。環境への負荷をいかに低減して工事を進めるかも現場管理のポイントになっています。鋼管杭の打設といった大掛かりな工程に目が向きがちですが、私はその前段階である準備が何よりも大切だと思っています。段取りをしっかりと行い作業実施に万全を期す。技術者として手腕が試されるところだと考えています。
名瀬港本港地区の施工現場
的確な状況判断が円滑な工事進行のポイント
石埜 この現場には私と同期の今年4月入社の社員が配属されているとうかがいました。
松村 若い人材が育たなければ将来に亘って事業は継続できません。新人技術者を現場で直接指導できる機会は少ないので、私にとっても貴重な経験です。ベテランと中堅の技術者も現場にいて、指導に心を砕いてくれるので助かっています。
 働き方改革が注目される中、現場も時間管理が厳格になっています。限りある時間をどう有効活用し仕事を進めていくのか。海上工事は天候に左右され、潮の満ち引きなどにも影響を受けます。現場での施工管理や作業指示だけでなく、一日の仕事が終われば日報作成や写真の整理、翌日の段取りなどもあります。勇気を持ち的確な判断を下すには経験が必要です。(新人の)佐古稜太君には日々の仕事を通じて「次に何をするべきなのか、自分に必要なのは何か」を学び、成長してほしいと思っています。
石埜 これからのお仕事を教えてください。
松村 鋼管杭の打設が本格化すると大型の作業船が行き来するようになります。11月くらいまで気が抜けない状況が続きます。ただ地元の方々は工事への理解が深く、一日も早い完成を待ち望んでいただいています。地元の方々が喜んでくれるのは、インフラ整備を担う技術者にとって何よりもやり甲斐を感じる部分です。現場で共に汗を流し苦労している多くの仲間と一緒に、しっかりと工事を完成させます。
(右から)岸本さん、貝田所長、けんせつ小町の鳥嶋さん。
上部工新設に向けたコンクリート打設作業
工事概要
工事名 名瀬港(本港地区)岸壁(−7.5m)(改良)工事(第3次)
工事場所 鹿児島県奄美市名瀬塩浜町
発注者名 国土交通省九州地方整備局鹿児島港湾・空港整備事務所
工期 2017(平成29)年3月30日〜2018(平成30)年1月31日
施工内容
 1980(昭和55)年度に供用を開始し桟橋上部工の老朽化が進行している名瀬港本港地区の岸壁をリニューアルすると同時に、桟橋上部工を海側に約20m前出しする。岸壁の耐震性を高めるとともに、「く」の字の岸壁形状による非効率性やふ頭の用地不足の解消を図る。工事内容は鋼管杭製作・打設1式、ストラット製作・設置1式、上部工1式、付属工(電気・被覆防食)1式。
取材を終えて
「ありがとう」に喜びを感じる
 今回、名瀬港の岸壁改良工事を見学させていただきました。
 11月までは台風が多く、特に今年は台風の当たり年ということで、見学当日の名瀬港では台風の接近を感じる風が吹いていました。
 松村所長は、「風通しの良い現場づくりと円滑に工事を進めるためのコミュニケーションを密にとることや、きれいな奄美の海をよごさないよう配慮をしながら工事を終えることを目標としている。また、日々地元のみなさんからの『ありがとう』に喜びとやり甲斐を感じている」とお話をしてくださいました。天候に左右されながらも工期に合わせて段取り八分で準備をし、現場を指揮する所長の細やかで温かい思いが、現場の士気を高め、奄美を豊かな明るい未来へとつなげているのだと感じました。
 技術者のみなさんの丁寧かつ正確な作業、汗と苦労を目の当たりにし、自身の担当業務ひとつひとつを見つめ直す貴重な機会をいただきました。
 今回に限らず、工事内容の異なる現場へ積極的に足を運び、現場のみなさんの声に耳を傾けていきたいです。
(石埜由莉)
 

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