四日市港(三重県四日市市・川越町)の霞ヶ浦南ふ頭と伊勢湾岸自動車道とのアクセス向上、一般道路の負荷軽減などを目的に整備している臨港道路「霞4号幹線」。2006(平成18)年度に着工した事業は、2017(平成29)年度末の道路本体完成に向け山場を迎えている。延長約4.1kmのうち、若築建設は長さ358mの4径間連続箱桁PC橋の上部工を施工。工事では上部工と下部工の一体化に、車道橋として国内で3例目となる「後ラーメン化工法」を採用している。東京本社経営企画部で役員秘書業務を担当している髙森愛弓さんが現場を訪れ、角田哲也所長に工事のポイントなどを聞いた。
髙森 工事の概要を教えて下さい。
角田 四日市港の霞ヶ浦南ふ頭と町道川越中央線を結ぶ臨港道路のうち、長さ358mのPC橋梁の上部工事を行っています。名古屋支店がこの規模の上部工を手掛けるのは初めてだと聞いています。上部工だけでなく下部工も当社が施工を担当しました。当社は下部工を施工するケースが多いのですが、桁を構築する今回の工事は『橋を造っている』という感覚がとても強いですね。
髙森 工事の特徴は。
角田 造っている橋梁は支間長に対して橋脚が短い設計になっています。施工期間中に上部工と下部工を一体化する通常のラーメン構造で造ってしまうと、時間と共に進行するコンクリートの乾燥収縮やクリープによって、橋桁と橋脚の接合部分などに大きなひびが入ってしまったり、橋が壊れてしまったりする可能性があります。 ですからこの工事では特に短いP50という橋脚部分で、橋桁を本来位置から34mmずらして造っています。橋脚と橋桁の間には滑り板を使った仮支承が設置してあり、時間が経ってコンクリートの乾燥収縮が進むと、橋桁が自然に滑って本来位置まで移動します。今回は工事完了から150日後にコンクリートを打設して上部工と下部工を一体化する計画です。
髙森 コンクリートの橋が縮むなんて驚きです。
角田 後ラーメン化工法は施工例が少ない技術で不安がなかったわけではありません。ただ当社は鹿児島県内の橋梁工事でこの工法を施工した経験がありました。品質や工程の管理は大変ですが、難しい仕事に挑戦できるのは技術者として楽しく、やり甲斐を感じます。もちろん現場には、鹿児島の工事を担当した技術者が赴任しています。
髙森 現場運営で気を配っている点は。
角田 多い時には60人余りのメンバーが現場で仕事をします。コミュニケーションを密にして意思の疎通を図ることが所長としての重要な役割です。また隣接地に中部電力の川越火力発電所があり、施工現場の直上を高圧送電線が通っています。送電線にクレーンなどが触れれば大事故になります。ですから送電線との間隔が狭い場所にレーダーを設置し、クレーンのブームが一定以上の高さにならないよう、細心の注意を払って作業しています。