北関東の物流と首都圏のエネルギー供給で重要な役割を担う茨城港常陸那珂港区。港区内にある火力発電所で発生する石炭灰を安定的に処分するため、中央ふ頭地区沖合で次期処分場の建設プロジェクトが進む。東洋建設・株木建設・りんかい日産建設JVが施工する「茨城港常陸那珂港区中央ふ頭地区廃棄物埋立護岸築造工事(その2)」は、次期処分場の外周部2カ所を鋼板セル工法で整備。2019(平成31)年度内の全体完成に向け最盛期に入っている現場を、経営管理本部人事部の佐藤夏美さんが訪ね、作業所長の前田悦雄氏に工事内容などを取材した。
佐藤 工事概要を教えて下さい。
前田 現在、この現場では県発注で5工事、国発注で3工事が同時進行しています。次期処分場は全周3,000m、面積56haの規模で、われわれは護岸築造工事のうち、東側に位置する部分と北側手前部分の2カ所を担当しています。鋼板セル工法を採用したプロジェクトでも特に規模が大きい上、長周期の波が入ってくる海域で鋼板セルを海底に設置する工事は、非常に珍しいといえます。
佐藤 具体的な工事手順は。
前田 まず陸上に設けた作業ヤードで縦23〜26m、横16.5mの鋼板を円弧状に加工し、4ブロックを組み合わせて直径が20mを超える巨大な円筒(セル)を組み立てます。重量はブロック1基が約65t、セルは260tにも達します。このセルをグラブ浚渫船で床掘りし基礎捨て石を敷き均した現場に運んで据え付け、内部に中詰め材を投入します。次にアークと呼ばれる円弧状の鋼板を所定の位置に設置してセルと一体化し、中詰めを行います。その後蓋コンクリート、上部コンクリートを打設し、最後に電気防食装置を取り付けて作業が完了します。工事では、ひと月に2函のペースで据え付ける計画を立てています。
佐藤 工事を進める上でのご苦労は。
前田 鋼板セルは3函同時に陸上で加工・組み立て作業を進めています。セルの据え付けは天候に大きく左右されます。この海域のベストシーズンは6〜8月で、波が穏やかになり天候にも恵まれやすくなります。ただ工事ではそうも言っていられません。気象を読み、確実に準備をしてこれと決めた日に、海上作業を行います。起重機船や土運船など数多くの船舶が同時に動く作業ですので、コントロールは非常に大切です。 また機械化やICT(情報通信技術)化によって、作業の多くは以前に比べ効率的になっていますが、数千という工程を確実に行うにはやはり現場の最前線に立つ人間の経験や知識が絶対に必要になります。アークを設置するために不可欠な継ぎ手のセルの向きを考えながら、巨大なセルを高精度に据え付けるのがこの工事のポイントです。自動追尾装置でセルの向きを確認し、波の高さや向きも見極めてミリ単位で作業を進めます。