臨海部の交通渋滞を緩和し、東扇島地区から川崎市内への災害緊急輸送ルートを多重化するため、国土交通省関東地方整備局が「川崎港臨港道路東扇島水江町線」を整備している。総延長約3kmのうち約0.9kmが京浜運河を渡る橋梁部だ。6本の橋脚下部工事が進んでいて、五洋・清水JVが担当する「主橋梁部(MP2)橋梁下部工事」は、海上部で橋脚基礎を完成させる技術的にも難しい工区だ。現場で指揮を執るのは、五洋建設東京土木支店の西川泰之所長。同じシビルエンジニアとして入社し、東京土木支店土木部で工務業務を担当している飯塚正実さんが、「我が社の現場」を紹介する。
飯塚 この工事の特徴は何ですか。
西川 大深度の鋼管矢板井筒工法を採用しています。鋼管矢板の長さは67.0m。上杭と下杭を2分割で海底地盤に約50mも打ち込むのですが、固い層があり、3種類の試験施工を行い鋼管矢板の打設工法を決定しました。当初は全てをバイブロハンマで(振動により)打設し、先端コンクリートを打設する工法でしたが、上杭は油圧ハンマで打設し、打撃により地盤の支持力を確保する工法に変更しました。これにより工期短縮にも寄与し、その方が地盤の支持力も確保できると判明したからです。
飯塚 他JVと工区が隣接していますが、気をつけていることはありますか。
西川 現場につながる共用通路があるのですが、通行する時には協力業者を含め走行速度などに気をつけてもらっています。また、隣接工区に行くには、われわれの工区を通らなければなりません。自分たちの作業エリアでありながら、他工区の関係者も通路として使用し、材料を運ぶ車輌が行き来します。横断歩道をつくったり、バリケードで工事区域を明示したりして、事故が起きないようにしています。
飯塚 現場で苦労していることはありますか。
西川 若い職員が多い現場です。五洋建設の職員は6人いますが、3人が20代です。「大丈夫だろう」と見ているだけだと、思わぬ方向に現場が進んでいく可能性があります。細かいところまで現場を見て、指導するよう心がけています。私がいつも言うのは、「5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)の徹底」です。現場をきれいにすることで、事故の発生リスクが減ります。また、「作業は基本ルールを徹底し、手順書通りに行う」ということも、日々、伝えています。若い職員には、仕様書の見方や施工計画書の書き方などの技術的能力を身に付けてほしいと思っています。書類が多く、現場に出る機会が減りがちですが、できるだけ協力業者と一緒に仕事をして、現場でいろいろなことを学んでほしいのです。
飯塚 この現場には「けんせつ小町」がいますが、女性の部下を持って変わった点や、今後の改善点はありますか。
西川 田中晴子は入社2年目の技術職ですが、男女の区別なく仕事をしてもらっています。女性だからと必要以上に気を遣わないよう心がけています。建設業も女性の活用を目指すのであれば、各現場に女性技術者が2〜3人いて、特別ではない形になるのが望ましいですね。建設現場は男社会でやってきましたから、女性目線で気付いてもらうことがあれば、相乗効果で現場が変わっていけるかもしれません。