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長尺アンカーで既存岸壁を耐震補強
 日本海に面し、本州のほぼ中央に位置する伏木富山港。恵まれた地理的な条件から古くから国内外の交易拠点として栄えてきた。2006(平成18)年には5万トン級船舶が係留できる万葉ふ頭多目的国際ターミナル(水深ー14m岸壁)が供用を開始。ロシアや中国などとの交易を深めている。国土交通省北陸地方整備局は防災・減災対策の一環として、大規模地震時でも一部の岸壁(万葉ふ頭3号岸壁)が使用あるいは早期復旧できるように耐震補強工事を進めている。施工はあおみ建設(株)が担当。同現場の山本治朗監理技術者(所長)に本社土木本部土木部の米島秀香さんが工事の話を聞き、我が社の現場をリポートした。
延長64.1mのグラウンドアンカーを24本打ち込む
米島 工事内容を聞かせてください。
山本 伏木富山港は伏木、富山、新湊の3地区に分かれていますが、この工事は伏木地区(伏木港)の万葉ふ頭3号岸壁を耐震強化する工事です。岸壁は水深ー14m、延長280m。供用したまま工事を行うため、4工区に分けて実施されています。現在東側2工区が施工中で、当社はそのうちの1工区(延長60m)を担当しています。工事は既設の岸壁舗装版や既設ケーソンの蓋コンクリート、中詰材を撤去し、ケーソンと一体となる上部工をつくり直し、長尺のグラウンドアンカーを地中に打設して、既設ケーソンを緊張します。それによって大規模地震時の岸壁に対する被害を最小限に抑えます。

PC鋼材の緊張力で固定

米島 グラウンドアンカーで緊張するとはどういうことですか。
山本 グラウンドアンカーは山留工法の一種で、簡単にいうと、地震発生時に岸壁の基礎部のケーソンを動かないようにさせるものです。テンドンと呼ばれるPC鋼材(PC鋼より線)をケーソンと地盤の支持層に固定させ、PC鋼材の引っ張り力(緊張力)でケーソンの動きを止めようというものです。
米島 グラウンドアンカーはどのようにして施工するのですか。
山本 この工事では直径216mm、延長64.1mのアンカーを支持層まで打ち込みます。施工は専用の削孔機(ロータリーパーカッション)で行います。削孔は外管(ケーシング)と内管(インナーロッド)との二重管構造で、ケーシングを回転させ地盤を切り、インナーロッドは叩いて地盤を砕きます。削孔土砂は外管と内管の間を通って排出されます。
米島 工事の進捗はどうなっていますか。
山本 昨年9月から本格的な工事を開始し、1カ月もかからないうちに舗装版や既設ケーソンの蓋コンクリートなどを撤去し、その後ケーソンの補強工や上部工の施工を実施しましたが、その工事も11月中旬に終了しました。上部工コンクリートの養生や既設ケーソンのコア抜き、周囲の埋戻しを終えて、今年1月からアンカーの打設を開始します。アンカーは長尺のため、1本当たり1.5日〜2日かかります。全部で24本打設しますので、2月中旬までアンカー打設にかかります。今のところ工事は順調です。
裏込石部や定着付近の砂質層の削孔が施工のカギに
米島 工事の課題や難しい点があれば教えてください。
山本 供用している岸壁での工事施工ですので、施工方法や内容などは事前に関係者と十分に打ち合わせをしながら工事を進めています。それとこの施工場所は前方に防波堤があるため、波浪の影響は少ないのですが、強風が吹くので風速が10mを超えるとクレーン作業は中止しています。天候が急変しますので、職員には危ないと思ったら躊躇せずに作業を中止するように指示を出しています。施工面では長尺のグラウンドアンカーの施工実績は全国でも数カ所しかなく、またケーソンの裏込石部(区間18m)や定着付近の砂質層の削孔は難しく、アンカーの削孔が円滑に進むかどうかが、工事の進捗に大きな影響を与えます。
万葉ふ頭3号岸壁(伏木港)
提供:伏木富山港湾事務所
宮入  台風の影響はなかったのですか。作業で留意したことは何ですか。
北村  7月初旬と8月に台風が来ましたが、ちょうどその合間に作業ができました。7月初旬の台風で開始時期はずれましたが台風の直接の影響は受けませんでした。ただ、風によるうねりなどが激しく、事前の天気予報と、現地で実際の波の状況などを確認した上で、その日の作業実施を判断しました。何日も連続して作業ができない時は、少し焦りもありましたが、安全を最優先して作業を進めました。
 5函のうち、2函は据付場所に段差があったため、先行した3函の据付作業と並行して段差部分のマウンド整備を行いました。作業が錯綜していたため、作業工程の調整や安全対策には気を遣いました。また、工事周辺海域は漁船や遊覧船、作業船、海上保安庁の巡視船などが頻繁に航行するため、作業の進捗状況の周知を徹底して行い、航行船舶の安全確保を行いました。幸い監理技術者(有薗芳久氏)が、ケーソン据付などで豊富な経験を持っていたので、随分助けてもらいました。
無理は禁物、安全第一で施工
前日の雪が残る中、現場の施工状況を見る山本所長と米島さん
米島 最後にこの工事で気を付けていらっしゃることを教えてください。
山本 すべての工事で同じことが言えるのですが、とにかく安全第一で作業を進めています。無理をしてひとたび事故を起こせば、大変なことになります。作業所には私を含め、いま3人詰めていますが、自分が危ないと思ったら、工事を止める勇気をもつようにと言ってあります。天候によって作業ができないこともあるので、できるだけ早く工事を進めたい気持ちはありますが、無理は禁物だと思っています。私は神戸港でグラウンドアンカーの施工経験があります。ただ、今回のような裏込石部などでの削孔は容易でないことが想像されますので、機械オペレーターらとコミュニケーションをとりながら、慎重かつ安全に施工していきたいと思っています。
上部工施工状況
工事概要
工事名 平成26年度伏木富山港(伏木地区)岸壁(ー14m)(改良)耐震工事
工事場所 富山県高岡市伏木万葉ふ頭(3号岸壁)
発注者 国土交通省北陸地方整備局伏木富山港湾事務所
工期 2014(平成26)年7月18日〜2015(平成27)年
施工内容
 伏木富山港の伏木地区(伏木港)万葉ふ頭3号岸壁(延長280m)の一部を耐震補強する。施工延長は60m。岸壁舗装版や既存ケーソンの蓋コンクリートなどの構造物撤去工は702m2。ケーソン補強工や上部工などの本体工は延長60m。グラウンドアンカー工は直径216mm、延長64.1mを24本を打設する。アンカー削孔は日本に数台しかない大型のロータリーパーカッション(タイタン)を使用する。付属工として係船曲柱を4基(1,500KN)設置する。
取材を終えて
地域社会に貢献している海洋土木
 現場見学をさせていただくと、活字でしか知らないものを実際に見ることができ、大変貴重な経験となります。今回見学した万葉ふ頭(3号岸壁)に、来年320m級の客船が入港することが決定していると聞きました。そのため岸壁の耐震補強はもとより、係船施設の施工が急ピッチで進められていました。施工されている工事関係者の方々の姿を拝見すると、このようにして地域社会のインフラ整備が行われているのだと実感しました。供用中の岸壁のため、当日は隣接した場所で岩塩の積み込み作業が行われていました。輻輳する現場でのトラブルを未然に防ぐため、荷役関係者の方との調整・打ち合わせの大切さを知りました。これからの時期、日本海側特有の強風、降雪が懸念されます。本工事が無事に竣工を迎えられるよう、微力ではありますがサポートできればと感じました。(米島秀香)
 

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