外洋に面し、伊豆半島(静岡県)の先端にある下田港。入り組んだ地形は自然の良港で、古くから荒天時の航行船舶の避難場所として利用されてきた。国土交通省中部地方整備局は避難船舶が近年増えていることや、近い将来発生が予想される大規模地震による津波被害を軽減することを目的に、防波堤の建設を進めている。平成26年度下田港防波堤築造工事はその一環となるもので、防波堤の開口部に方塊ブロック(海底に沈めるコンクリート製の塊)を据え付け、防波堤を補強するものだ。施工を担当する若築建設(株)の北村拓也現場代理人(所長)に、東京本社総務人事部総務人事課の宮入布幸(ふゆき)さんが工事の話を聞き、我が社の現場をリポートした。
宮入
工事概要を説明していただけますでしょうか。
北村
下田港では現在、湾中央部に航路幅120mを確保し、その両側に防波堤を建設しています。防波堤は西側が延長500m、東側が延長400mになります。また、航路部の海底に方塊ブロック14函を据え付け、大規模地震に伴い発生する津波による被害を最小限にとどめるよう補強する計画です。今回の工事はその工事の一環で、すでに製作済みの7函の方塊ブロックのうち、5函を起重機船で作業ヤードから所定の位置に据え付け、2函を仮置き場に据え置きするものです。
3,000トン級の起重機船を活用
宮入
方塊ブロックというのはどういうものですか。
北村
ケーソンなどと違い、鉄筋の入ったコンクリートの塊です。1函の大きさは横9.7m、幅9.1m、高さ7m。7函のうち、重さ約1,400トンが5函、約1,100トンが1函、約1,000トンが1函となります。この重さは方塊ブロックとしては国内最大級です。水深−21mの海底にまず基礎マウンドを整備し、その上に方塊ブロックを据え付けます。高さは7mしかありませんので、据付後も方塊ブロックが海上に頭を出すことはありません。
宮入
方塊ブロックの据付作業は終了しているのですか。
北村
5月から捨石を投入し、基礎マウンド作りに着手しました。7月初旬には基礎マウンド整備が終了。7月19日に3,000トン級クラスの起重機船を使い、第1函目の方塊ブロックを据え付けました。作業ヤードから所定の据付位置までの距離は1kmもないのですが、ちょうどこの日が下田港カジキ釣り大会と重なり、プレジャーボートの航行が激しく、事故がないように細心の注意を払いながら作業を行いました。1日1函ずつ据え付ける計画で、最初の3日は連続して据え付けができたのですが、その後は気象や海象に恵まれず、最後の1函を据え付けたのは結局7月31日でした。
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下田港での施工場所 |
宮入
台風の影響はなかったのですか。作業で留意したことは何ですか。
北村
7月初旬と8月に台風が来ましたが、ちょうどその合間に作業ができました。7月初旬の台風で開始時期はずれましたが台風の直接の影響は受けませんでした。ただ、風によるうねりなどが激しく、事前の天気予報と、現地で実際の波の状況などを確認した上で、その日の作業実施を判断しました。何日も連続して作業ができない時は、少し焦りもありましたが、安全を最優先して作業を進めました。
5函のうち、2函は据付場所に段差があったため、先行した3函の据付作業と並行して段差部分のマウンド整備を行いました。作業が錯綜していたため、作業工程の調整や安全対策には気を遣いました。また、工事周辺海域は漁船や遊覧船、作業船、海上保安庁の巡視船などが頻繁に航行するため、作業の進捗状況の周知を徹底して行い、航行船舶の安全確保を行いました。幸い監理技術者(有薗芳久氏)が、ケーソン据付などで豊富な経験を持っていたので、随分助けてもらいました。
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現場で工事概要を説明する北村所長と宮入さん |
宮入
方塊ブロックは海中に据え付けられるため見えません。どう施工管理しているのですか。
北村
海中の見えないところで、どう設置精度を高めるかということでさまざまな工夫をしました。この工事の据付精度は20cm以内でしたが、自社開発したシステムを活用し、要求精度を満足できたと思います。見えないところの作業を、いかに見えるように管理するかが海洋工事の難しいところです。
宮入
現在行っている工事と今後の工事スケジュールはどうなっていますか。
北村
現在、方塊ブロック周囲の捨石を潜水士が荒均し作業をしています。水深−20m以深での作業ですので、潜水士の作業時間などの管理を徹底しています。自社開発した『WIT潜水深度監視システム』を使い、潜水士の深度や作業状況をリアルタイムで監視し、潜水時間、減圧時間なども管理しています。捨石荒均しの作業終了後は、被覆石を設置します。工事は今のところ順調に進んでおり、工期末である12月中旬にはすべての工事を終える予定です。