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近藤 敬士(こんどう・けいじ)氏
 1986年芝浦工業大学工学部土木工学科卒、五洋建設入社。北陸支店土木部長、土木部門土木本部副本部長、執行役員土木部門担当土木企画部長兼土木部門担当(土木)。2021年4月から土木部門担当(環境)を兼務。宮崎県出身、58歳。
苦労の積み重ねが技術を発展
 1986年の入社から35年の会社人生のうち、現場勤務は約10年になります。橋梁や造成工事、海岸整備、沈埋トンネル、液化天然ガス(LNG)基地プロジェクトなど、それぞれの現場に思い出はありますが、中でも現場所長として最後に担当した構造物直下の液状化対策工事は苦労した分、特別な現場となりました。
 地盤内の不可視領域での改良となるため、地中構造物との干渉やその出来形、品質には細心の注意が求められ、施工方法に頭を悩ませました。最終的には周辺の建屋や構内施設が密集しているわずかなスペースを活用し、曲がり削孔工法を用いた浸透固化処理工法による地盤改良を提案しました。3D曲がりセンサーとジャイロセンサーを組み込んだ削孔ロッドを鉛直・水平に同時に曲げながら、建屋の基礎杭などの障害物をかわし、80m先にある対象構造物の直下に特殊な薬液を低圧で浸透注入する計画。約100本の曲がり削孔で改良規模は約1万㎥に上ります。
 さまざまな難題をクリアする必要があり、技術研究所の担当者らの支援を受け、若手からもアイデアを募りました。施工計画や実験などに費やした期間は1年ほど。削孔ロッドの挿入角度を確保するため、地盤を約3m掘り下げてドリリングマシンを配置。障害物調査では、構造物建設時の昔の写真録をすべて取り寄せ、土留めの板やH形鋼などの残置場所の把握に努めました。
 設計ライン通りにロッドを挿入するには、熟練オペレーターの腕に寄るところも大きい。栄養ドリンクを差し入れしたり、休暇の過ごし方をアドバイスしたりするなど、オペレーターの体調管理にも気を遣いました。
 薬液の注入圧力で直上の構造物が浮き上がる可能性があり、プリズムを多数設置して変位をリアルタイムで自動計測しながら構造物の挙動を把握しました。豪雨の時には掘り下げた現場に雨水が流れ込み、周辺施設への影響が心配され、徹夜で監視することもありました。
 削孔から薬液注入まで1本当たりの作業時間は、うまくいくと1昼夜、手こずれば3昼夜を要します。試掘から曲がり削孔を打つまでに1年、作業完了までさらに1年ほどかかりました。
 新技術による難工事への挑戦は当時、本当にできるかどうか正直、自信がありませんでした。工事を進める上で、それぞれが当事者意識を持ち、協力業者も含めて現場の一体感を高めることをより強く意識しました。途中トラブルはありましたが、現場技術者にとって計画から施工まで携われるのは一番面白く、忘れられない現場となりました。
 浸透固化処理工法など薬液注入による地盤改良は、海岸や港湾構造物の背後地のほか、空港の液状化対策などで施工箇所が増えています。曲がり削孔技術も進化し、最大180mまで削孔でき、施工延長は累計16万mに達しました。地盤改良工事の見える化技術「Gi-CIM」やAI(人工知能)活用による操作の高精度化など、不可視領域での施工技術の進展は、これまでの苦労の積み重ねから生まれてくるものだと実感しています。
構内の地盤を掘り下げての削孔作業
Gi-CIMによる削孔軌跡の3Dモデリングイメージ

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