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大本 泰久(おおもと・やすひさ)氏
 1985年愛媛大学土木工学科卒、三井不動産建設(現・みらい建設工業)入社。九州、北海道、大阪、東京で港湾工事、シールド・推進工事に従事。2016年本社総合評価部長、2020年から現職。愛媛県出身、57歳。現在、住まいのある大阪から東京へ単身赴任中。
仕事への取り組み方の根幹学ぶ
 20代前半に関西空港の1期工事に従事し、2期工事と合わせて約13年、土木屋人生36年のうち3分の1以上を関空工事に携わったことになります。長く仕事をしていると、「世のため人のため、孫・子のために100年200年と後世に役立つ土木構造物をつくる」という使命感はいいなと思いますし、それを「みんなでつくる」という一体感と醍醐味も好きだなと改めて思います。
 関空工事の中でも2期空港島護岸築造工事(その5)は、1期島と2期島の間の内水面に面した護岸を築造する工事です。私は1期島側の内水面に面した護岸も施工したため、非常に深い思い入れがありました。1期工事の時は上司から「三手先を読め」と指導されましたが、一手先を読むのが精一杯で、自身の力不足と勉強すべきことが山ほどあることを痛感しました。分厚い青本(技術基準書)を渡され、必死に読み込んだのを思い出します。現場では砂撒船やSD船、揚土船などの大型作業船を使ったダイナミックな施工、根気の要る圧密沈下管理を行いました。海上に初めて捨石が現れた時の感動は忘れません。仕事以外でも、魚のさばき方や漁師料理を覚えたり、ゴルフやテニスをしたりと充実した現場でした。2期工事は監理技術者として従事しました。最盛期は30人近くの大所帯でした。所長からは「最終的には人である。信頼感、連帯感を大事に、開かれたJVと情報の共有化を目指せ」と指導を受け、発注者の思想、地元の考え、今後の課題、他工区の展開などを職員に繰り返し周知し、議論しました。その甲斐あって、全職員が関空工事の重要性と厳しさを意識しながら施工できたと思います。
 他工区の技術委員会のメンバーもそうですが、発注者との協議のための検討課題は技術検討からイベントものまで多岐にわたり、資料作成に明け暮れる日々が続きました。赤本(積算基準書)や仕様書の一つ一つの数値の根拠も一から考え直すなど、それまで考えたことがないような検討もしました。
 そんな時、関空の専務から「雑務という仕事は無い」との言葉を掛けられ、「一生懸命やっていれば誰かが見てくれている。また頑張ろう」という気持ちになったことを思い出します。後で知ったのですが、「雑草という草は無い」という昭和天皇のお言葉と同じ深い意味があり、今でも大切にしている言葉です。
 発注者や各工区の所長からも優しい言葉やアドバイスを頂き、工事をやり遂げることができました。精神的にも肉体的にも大丈夫だったのは、JV職員や協力会社はもちろん、関係各所の皆さんのお陰であり、感謝しかないというのが素直な気持ちです。
 関空工事で学んだことは「全体1工区の精神」「基準やマニュアルをうのみにしない」「自分の頭で考える」「プロセスが大事」「新しいことに挑戦する」など多くあり、今の仕事への取り組み方の根幹となっています。
 建設業界はこれからICT、AR、BIM/CIMなど新しい技術を取り入れなければ生き残っていけませんが、どれも関空工事でチャレンジした技術や着想でした。若い方たちにも、思い切って新しい技術にチャレンジしてもらいたいと思います。「昭和的」と思われるかもしれませんが、いろいろな人との出会いを大事にし、どんな仕事でも額に汗すれば必ず信頼を得られます。
海上に初めて捨石が現れた現場で
(後列左から5人目が本人)
1期島・2期島間の護岸工事の位置s

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