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中野 公聖(なかの・こうせい)氏
 1982年大阪工業大学土木工学科卒、大本組入社。九州自動車道の工事を振り出しに、入社3年目から近畿、中国、九州・沖縄などを中心に各地で港湾や空港島の建設工事に携わり、現場代理人や監理技術者として数多くの現場で工事を指揮してきた。2018年12月から現職。宮崎県出身、60歳。
「閃き」から改善策イメージ、良い結果次々
 学生時代、勉学に熱心とはとてもいえませんでした。入社して最初に配属された九州の高速道路の現場で、土木が数学や物理から化学、地学、果ては歴史まで多くの学問を使う仕事だということを教育係の先輩に教えられました。先輩の大学時代の教科書を借りて読み、分からないところを聞いて覚えるという繰り返し。ついていくのに精いっぱいでした。
 海の工事に初めて携わったのは入社₃年目、山口県萩市沖の見島の防波堤築造工事です。この現場では主任から「なぜそうするのか?なぜならば…」と船舶の配置や作業手順・方法などを理論立てて教わりました。
 こうした経験で基礎知識と応用力が養われ、「イメージする習慣」が身に付いたように思います。その後、多くの工事に関わってきましたが、「閃き」からイメージを広げ、現場作業の改善を次々と進めた思い出が特に多いのが、2001年6月から担当した「液化石油ガス国家備蓄基地(倉敷計画地点)埋立工事」です。備蓄トンネルへの立坑を掘るために、護岸を構築し埋め立てを行うもので、東洋建設さんとのJVで2年半ほどかかりました。
 埋立地の地盤が軟弱でしたから、沈下板を入れて沈下管理をすることになったのですが、「沈下板は下の粘土層から反力として圧密抵抗を受けるので、正確な値と言えるのか」との疑問が湧いたのが最初です。他の管理方法をいろいろ調べるうちに閃いたのが、間隙水圧計を用いる方法でした。計測器具を自作し、データをそろえて提案し、採用してもらいました。
 二重締切鋼矢板の内部を高圧噴射撹拌工法で地盤改良するのですが、港湾技術研究所から「鋼矢板が変形しないよう海底地盤付近にタイロッドを設置するように」との指導を受けました。水中でこれを行うのは大変な作業です。そこでタイロッドを取り付ける腹起し材を、連続梁としてではなく、鋼矢板のセクションを活かした単純梁と考え、腹起しの受け材を取り付けてから鋼矢板を打設する方法を考案しました。次は鋼矢板上部コンクリートのハーフプレキャスト化です。工期が迫る中で支給材が届かず、鉄筋・型枠・足場の組立用地も確保できません。それでも工程通りに構築することが発注者の意向でしたから、コンクリート2次製品を型枠にして内部にコンクリートを打設しました。海上工事に2次製品を使用した事例は無かったのですが、ご理解を頂き採用されました。
 疑問に思った事を投げ掛けると、作業所の全員がいろいろとイメージし、改善策を具体化してくれます。そんな例がこの現場では他にもたくさんありました。閃きを試行錯誤しながらリアルにしていく作業はわくわくしますし、実現した時の達成感はひとしおです。竣工検査後の記念写真はみんな笑顔でした。
 私は勉強が苦手でしたから、若手にも「教える」「教育する」といったことは得意ではありません。日々、先輩方の背中を見て憧れ、もがいているうちに再雇用の年齢になっていました。憧れを抱く先輩や上司に巡り会えた私は運が良かったと思います。若い人たちには「基礎を習得し、疑問を持ち続ければ、閃きは必要な時に自然と思い浮かびます。イメージする力を養って下さい」と伝えています。
腹起こしに取り付けたタイロッドを吊り込む
完成した埋立地

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