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玉井 昭治(たまい・しょうじ)氏
 1983年東海大学工学部土木工学科卒、五洋建設入社。東京、大阪、九州・沖縄で多くの沈埋函工事に携わり、北九州市の新若戸道路沈埋トンネル(1号函)製作工事でも監理技術者を務めた。2009年4月九州支店土木部長、15年4月同副支店長、18年4月から現職。東京都出身。57歳。
新技術を成功させるために
 1983年に入社し、東京土木支店、本社土木設計部、大阪支店、九州支店を経て今年4月から25年ぶりに東京土木支店に在籍しています。これまで沈埋トンネルの工事を多く手掛けてきました。どの現場にもたくさん思い出がありますが、2001年の那覇港沈埋トンネル(現・那覇うみそらトンネル)3号函製作工事は、初めて現場の工事所長を担当し、新技術が多く採用されたこともあって印象深い工事です。
 那覇港臨港道路空港線は那覇港と那覇空港・本島南部とのアクセス強化が目的で、那覇ふ頭港口部を海底トンネルで横断して那覇空港側と波之上地区(三重城側)を直結します。海底トンネル部は空港側と三重城立坑間の724mを8函の沈埋函で結びます。沈埋函には全て鋼コンクリート構造(フルサンドイッチ構造)が採用され、本州の海洋ドックや造船ドック、製作ヤードなどで鋼殻が製作されました。7号函には最終函の接続工法として新規開発の「キーエレメント工法」が採用されています。
 3号函製作工事は、三重県津市の海洋ドックで鋼殻を製作して半潜水式台船に積み込み、那覇港まで約1400㎞を回航。鋼殻を桟橋に係留してコンクリートの打設などを行い、沈埋函を仮置きするというものです。フルサンドイッチ構造、国内に2隻しかない半潜水式台船を使った「すくい上げ方式」による鋼殻の搭載と外洋回航、1万160m3という大量の高流動コンクリートの浮遊打設は初めての経験でした。
 鋼殻の積み込みから回航・係留まで、大型台風の襲来確率の高い時期に当たったため、長期にわたる気象海象予測を行った上で可否を判断しました。すくい上げ方式は、浮遊状態の鋼殻を潜水状態の台船に積み込むため、位置の精度確保が課題です。台船と鋼殻の重心がずれていると、回航時の波浪や風浪で鋼殻や台船が損傷する恐れがあるからです。そこで、本来は積み込み後に台船に設置する固縛材の一部を利用し、事前にストッパーを台船に設置して位置決めをし、外洋からの波浪の影響を最小限に抑えるために海洋ドック内ですくい上げ作業を行いました。作業当日は台風通過後のうねりが若干残り、台船と鋼殻のクリアランス調整が難しい状況でしたが、台船に鋼殻が重なり始めると鋼殻の動揺も収まり、作業は無事完了しました。
 大型工事で初めて行う作業は誰でも不安です。新技術となるとなおさらです。失敗を恐れず、事前にトラブルへの万全の対策を練り、手順が変わっても臨機応変に対処していく。その大切さをこの現場で学びました。苦労と困難を克服した時、そして何より無事竣工した時の爽快感と充実感は忘れられません。工事にご協力いただいた関係者には今も感謝しています。
 2011年8月28日に那覇うみそらトンネルは開通しました。那覇空港からほぼノンストップで那覇市街にアクセスできるようになり、沖縄の経済に大きく貢献していると考えます。幾多の厳しい自然条件に立ち向かって竣工を迎えられたことを今でも誇りに思います。苦労した新技術がその後、新若戸道路トンネルや東京港臨港道路南北線沈埋トンネルにも採用されたことは技術者冥利に尽きます。工事を経験した皆さんの今後の活躍に期待しています。
沈埋トンネルの縦断図
すくい上げ方式による鋼殻の積み込み作業
回航後の高流動コンクリート浮遊打設状

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