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川原 正三 氏
 1970年大本組入社。1990年東京支店土木部機電課長、1997年土木本部港湾機械部機械課長、2002年土木本部土木部次長、2003年同港湾機械部部長。津山高専機械工学科卒。岡山出身。62歳。
〝機械屋〟の醍醐味を味わえた現場
 1994(平成6)年9月に開港した関西国際空港。大阪湾泉州沖5kmに建設された国内を代表する人工島空港で、その規模は約511haにも及ぶ。1期工事(人工島造成工事)は1987(昭和62)年1月に工事着手。大水深(平均水深18m)、軟弱地盤(沖積層厚20m、洪積層厚100m)という施工条件のもと、5年弱という短工期で完成にこぎ着けた。その背景には大量・急速施工に向けた技術革新があった。
 大本組は、人工島造成でさまざまな工事に携わったが、なかでも注目したのが敷砂工の施工。高精度かつ高効率に砂撒きが可能な技術の開発に取り組んだ。
 「地盤改良前に行う敷砂工は、砂撒船で海底地盤に約1.5mの厚さで行い、その総量は1130万m3にもなる。当社はこの敷砂工で、新技術を取り入れた新たな作業船を造りました」。
 新造船は、ロータリーフィーダー(RF)による砂撒船。敷砂工は従来、ガット船による直投方式が主流だったが、施工精度や海面汚濁などの問題があった。このため、「ポンプ式バージアンローダーによる方法やコンベアバージによる方法も考えたが、まったく新しい技術でやってみようということで、RF式の砂撒船を検討した」。
 RFは、水車の歯車のような形状のホッパー部に一定の砂を入れ、ローターで回転させながら連続して海底に敷砂を行う仕組み。セメントなどの粉体の移送には多用されていたが、土木工事で砂を大量に供給した例はなかった。
 「RF式砂撒船(新大栄丸)の設計、造船所の艤装監督、現場担当のすべてに携わりました。事前の各種実験で、定量排出や動力、砂の挙動などを慎重に確認し、その上で実用化したのですが、現場に投入すると、さまざまな問題が発生しました」。
 敷砂高の管理は砂撒船の前進速度やローター回転数を調整して行う。だが、砂は産地によって形状や粒径が異なるため、その調整は難航した。「工事の序盤は苦労しました。ただ、何度も施工するうちに、この産地の砂はこの運転方法で対応すれば良いことが分かってきて、中盤以降満足のいく出来形が確保できました」。
 砂がローターの軸受け部に侵入し軸受けが摩耗し、運転不能になったこともあった。「当社の不備で砂を持ってきたガット船に迷惑をかけることができないので、作業終了後の夜中に羽根の取り替えや調整を行いました」。光波船位システムのバッテリー不足やデータの途切れ、レンズ汚れなどにも悩まされた。
 「現場に常駐していたので、機械類の故障は何でも対応しました。苦労もありましたが、今となっては良い経験でした。〝機械屋〟は余り表舞台には出ませんが、新技術を開発し、実用化するという醍醐味を味わえた現場でした。若い〝機械屋〟にも同じような経験を是非させたい」。
 同社は、このRF式砂撒船で敷砂工全体の約1割弱に当たる97万m3の施工を無事故で終えた。「新大栄丸はいまも現役。大規模工事が増えれば、この船の活躍の場ももっと増えるんですけどね」。

 
造成工事中の関西国際空港 RF式砂撒船「新大栄丸」

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