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小寺 哲郎 氏
 1976年国土総合開発入社。77年国土総合建設に移籍。00年東北支店工事部長兼技術本部地盤改良部次長、02年本社技術本部地盤改良部長、09年あおみ建設執行役員地盤改良事業部長、10年6月取締役常務執行役員土木副本部長兼地盤改良部長を経て、同年10月に現職。東京都出身。60歳。
経済性を求めた最適な施工に挑戦
 「被害がないと聞いて、正直ほっとしました」。
 3月11日に発生した東日本大震災は、東北地方の太平洋沿岸部を中心に甚大な被害をもたらした。長年、東北支店に籍を置き、さまざまな港湾工事を手掛けてきただけに、今回の大震災は人ごとではなかった。テレビから流れる被災地の港はどこも見覚えがあり、その思い入れの地が、がれきの山と化した姿は見るに堪えなかった。気になる工事がいくつかあったが、なかでも仙台塩釜港仙台港区のマイナス12m岸壁地盤改良工事は、いろんな挑戦を行った工事だけに被害が気になった。地震発生後まもなく、液状化もなく、無事だったと聞いて胸をなで下ろした。
 同工事は、石炭などの積み下ろしを行うマイナス12m岸壁(向洋地区)の背面埋立地を地盤改良し、液状化を防ぐもの。岸壁に近い部分は、振動による岸壁への影響を抑えるためドレーン工法、その背後は密度増大工法としてサンドコンパクション工法で施工した。
 「ドレーン工法はDEPP工法という過剰間隙水圧消散工法を採用しました。地震時の揺れで砂と水が分離し、水が地表面に上がってくるのをドレーン(管)内に流入排出し、過剰水圧を抑えるものです」。
 施工した1995(平成7)年当時、液状化対策として2種類の地盤改良工法を組み合わせて施工する例は少なく、経済的な施工方法は十分に確立されていなかった。このため、試験施工をしながらドレーン工法の施工範囲を決定する提案をした。
 「設計では地盤改良の断面は二つあり、一つはドレーン工法の施工が岸壁背後から12m、もう一つは14・5mでした。試験施工では、岸壁近くで振動モニタリングを行い、管理値の80デシベルに達するまではサンドコンパクションで施工しました。その結果、ドレーン工法の施工範囲を約8m、約10mまで縮めました」。その時の試験施工データなどは、発注者である運輸省第二港湾建設局塩釜港工事事務所(当時)が報告書としてまとめている。
 東北支店には1983(昭和58)年から、本社に転勤する2002(平成14)年まで約19年間勤務し、数多くの港湾工事、地盤改良工事などに携わった。なかでも同工事は長年の経験を生かすことができた思い出の現場の一つになった。
 「わが国の地盤改良技術は世界でもトップレベルです。今回の大震災でその効果が一層はっきりしました。改良してしまえば目に見えないものですが、地域全体を守る技術として今後もっと活用されることを期待しています」

 
撮影:1996年8月
仙台塩釜港仙台港区(−12m)岸壁
仙台塩釜港仙台港区(−12m)岸壁位置図

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