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石井 誠一郎 氏
 1980年に東亜建設工業入社。95年インドネシア・パイトン火力発電所建設工事副所長、00年国際事業部工事部プロジェクト室長、04年サハリン工事事務所副所長、08年から現職。東工大卒、ワシントン大修士取得。東京都出身。55歳。
良好な人間関係をどう構築するのか
 極寒の地であるロシア・サハリン(樺太)に赴任したのは2004年3月のこと。「それまでシンガポールで仕事をしていたので、気温差が50℃ぐらいありました」。
 新たに携わった事業はサハリンⅡプロジェクト。サハリン島の北東部で石油・天然ガスなどを採掘し、それを南部のアニワ湾まで約800㎞のパイプラインで運んで精製する事業。ロイヤル・ダッチ・シェル(オランダ)、三井物産、三菱商事、ガスブロム(ロシア)が共同出資する「サハリンエナジー・インベストメント」が事業主体となり、日本の千代田化工建設・東洋エンジニアリング・ロシア企業2社の企業連合(CTSD)が天然ガス液化(LNG)プラントの設計・調達・建設(EPC契約)を担当した。
 東亜建設工業はCTSDからLNGの積み出し桟橋建設工事、OET(オイル・エクスポート・ターミナル)土木建設工事、コンクリート生産・支給工事の3件を受注。このうちのOET土木建設工事の所長として現地に乗り込んだ。
 「何もない原野の中から建設を進めていくのを海外では〝グラスフィールド〟というが、ここはまさにそういう現場。工事開始後、数カ月経って現場に赴任したが、この時はすでに多くの問題を抱えていた」
 その一つが下請けのロシアの建設会社との関係。「旧社会主義国と民主主義国ではワーカーに対する文化の違いがある。すでに元下請関係は最悪な状況で、お互いに不信感が芽生えていた。まずはその解消から始めた」。部下に下請企業を変えないことを宣言した上で、自ら下請企業の会合に参加し、対話を心がけ信頼関係を築いていった。
 次に手を打ったのが使用骨材の確保。「計画では現場で掘削した土や石、砂を一部使う計画となっていたが、地盤が悪く、足りなくなると思った。そこで地元の石材屋らと連携して採掘許可を取った」。これが奏功し、骨材の確保は円滑にできたという。
 工事が軌道に乗り始めてからは、採算性の確保に頭を悩ませた。海外工事ではHSE(ヘルス・セーフティ・エンバイロメント)、品質、工程という課題に加え、採算性の問題が必ずつきまとう。「利益確保に明確な答えはないが、その一つは発注者やコンサルタント、取引業者らと、良好な人間関係を構築できるかどうかだ。これには語学力など関係ない。相手のふところに自ら飛び込んでいけるかが大切になる。その意味でこの現場は、さまざまな厳しい課題も多かったが、周囲の人たちと良い人間関係ができたと思っている」。
 LNGプラントは当初計画よりもかなり遅れたものの、2009年2月に無事完成。そのプラント基地から日本や韓国などに出荷されている。

 
LNGプラントは不凍港であるアニワ湾に建設された。
写真提供:SEIC
サハリンIIの推定可採埋蔵量は石油約1.03億トン、天然ガス約5000億m3。サハリンには3〜6のプロジェクトが計画されている。

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