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日本海工株式会社
サンド・コンパクション・パイル船「第60光号」船長
川戸 辰郎(かわと・たつろう)氏
 岩手県内の水産高校を卒業し、船舶の勉強をしていた時に出会ったのがサンド・コンパクション・パイル(SCP)船。「最初見た時、この船はいったい何をする船なのだろうか」と考えたという。起重機船や浚渫船などは見たことがあり、なんとなく作業内容が想像できたが、この船は皆目見当もつかなかった。海底の地盤を改良するという作業自体も知らなかったという。その時の好奇心がこの道に入るきっかけとなり、20歳で日本海工に入社した。
 入社後、最初に乗船したのがSCP船「第50光号」。甲板員を数カ月間務め、すぐにオペレーターになった。「地盤改良を行うケーシングパイプごとに1人のオペレーターが操作します。人にもよりますが、操作自体は概ね1~2年も担当すればできます。ただ、正確かつスピーディーに施工するにはもちろん経験が必要です」。
 SCP船のオペレーターはワイヤーの弛みや圧力のかけ方などに注意を払いながら、地盤の変化に対応する。ケーシングパイプで地盤を掘り、パイプの中に砂などの中詰材を入れて地中に砂柱を造成し地盤改良を行う。「通常、中詰材料は砂ですが、カキの殻の粉末やスラグなども使ったことがあります。カキの殻の粉末は堅くて操作に苦労しました」。
 約15年間、オペレーターを務めた。この間、関西国際空港や中部国際空港、羽田空港再拡張事業などの大規模プロジェクトの地盤改良にも携わった。「羽田空港再拡張工事ではSCP船だけでなく、サンドドレーン(SD)船にも乗りました。他社の地盤改良船も多数導入され、他社の施工スピードがどうしても気になりました」という。その後、シンガポールの港湾工事にも従事。「24時間稼働で作業を行いました。通訳を介してローカルスタッフに操作や作業方法を教えるのですが、なかなか伝わらず大変でした。今思えば良い勉強になりました」。
 35歳でいまの第60光号の船長に就任した。船長になって心がけたことはまず「品質」。「高品質のものを作り続けることが信頼につながります。安全な施工と品質の確保に細心の注意を払っています」。もう一つはコミュニケーション。就任当時、全船員が年上で、自分の考えを伝えるため、コミュニケーションに努めたという。
 いま船員の中には21歳と25歳の若手オペレーターも在籍する。2人とも学生時代にSCP船を見学し、この仕事に興味を持って入社した。「船の案内を自分がしたので、入社してくれた時はうれしかった。いまも熱心によく働いてくれています。このまま順調に育ってくれると思います」。
 船長になって約10年が経ち、これからの夢を聞くと「もし新しいSCP船を建造する時が来れば、これまでの経験を生かし、いろいろな提案をしたい。それと若い人を育て、次の世代にSCP船の技能をつなげていきたい。それにはまず地盤改良船という面白い作業船があることを、もっと多くの人に知ってもらうことが大切です」。
SCP船 「第60光号」
サンド・コンパクション・パイル船「第60光号」
【船体概要】
全長61.0m、幅27.0m、深さ4.0m、吃水2.3m。最大打込深度50.0m
排水トン数3,600t、連装数3基、総出力数5,550ps。
 SCP船は所定の場所にまず船を固定し、ケーシングパイプ内を圧気しながら貫入を行い、ケーシングパイプ内に中詰材(砂など)を投入する。先端に侵入したシルトを排除した上で、所定の深度まで再貫入する。中詰材料の吐出量を確認し、ケーシングパイプの引き抜きと打ち戻しを繰り返しながら、砂柱(サンド・コンパクション・パイル)を造成し、地盤改良を行う。


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