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日本海工株式会社
サンド・コンパクション・パイル船「第80光号」船長
高木 一真(たかぎ・かずま)氏
 高校を卒業した後、外貿貨物船の船員になり航海士を目指していた。日本海工に入社したのは27歳の時。友人の話を聞いて「船に乗るのは貨物船も作業船も同じ。共通点が多かったので転職を決めた」という。小さな頃から乗り物が大好きで機械操作にも興味を引かれた。職場が貨物船から作業船に移っても「比較的すんなりと仕事になじむことができました」と振り返る。
 海上土木工事は天候の影響を受けやすく、海が荒れれば待機しなければならない。「船の年間稼働率は半分程度。待機時間を利用して仕事に必要な資格をとにかく取得しました。最初はガスと電気関連の資格だけでしたが、今では10種類以上の資格を持っています」。仕事の幅を広げるために、陸上での地盤改良工事に必要なスキルも磨いた。「地盤改良工事は『大地を造る』仕事。すぐに結果を求めることはできないかもしれないし、地味かもしれないですが、やりがいを感じられる」と話す。
 これまでさまざまな現場に赴任し経験を積んできた。その中で最も印象に残っているのは、シンガポールで手掛けた護岸築造工事だという。「シンガポールとマレーシアの国境が確定した直後から、国境線の代わりになる護岸を造り始めました。護岸は総延長が10kmを超え、5年間、ひたすら海底の地盤改良を行いました」。サンド・コンパクション・パイル船は日本から持ち込んだが、船員の多くは現地で登用。「考え方や習慣が異なる多国籍の陣容で、日本の常識は通用しません。互いに歩み寄る姿勢が不可欠な状況の中で、船長としてどう対応すればいいのか、さじ加減が難しかった」という。大規模工事での経験は船長、そして技術者としてのスキルを高める上で、何物にも代え難い貴重なものになった。
 将来を担う若い人材を育てていくことも船長としての大切な仕事になっている。工事が始まれば一日のほとんどを船の中で過ごし、時間と空間を共有する環境の中で「人と関わり、コミュニケーションを取ることが苦手な若者が増えている」と感じることも多い。「インターネットで検索すれば疑問の答えはあっという間に見つかるし、誰かに教えてもらうのも当たり前」という時代にあって、「世代の違いを認めながら、若い人たちの背中を押してあげたい」と語る。
 この仕事を始めてもうすぐ30年を迎える。船長として初めて作業の指揮を執った日のことは今でも忘れていない。「アンカーをどこに設置し、船を所定の位置にどう固定するのか。ベテラン船員が見守る中で、震えるような緊張感を味わった」。海上も陸上も関係なく、オールラウンドで地盤改良工事に携われる、社内でも貴重な存在。年齢に関係なく仲間の力を借りて現場を動かす。「何よりも経験が大切な仕事。これからもかじ取り役として責任をしっかり果たしたい」と決意を新たにする。
 自分がそうだったように、若い世代には「一人でも多くの人が仕事と正面から向き合い、技術者としてのスキルを積み上げてほしい。自分の殻に閉じこもらず、世界を広げて総合的な力を付けていろいろなことに挑戦してほしい」と願っている。

サンド・コンパクション・パイル船「第80光号」
サンド・コンパクション・パイル(SCP)船「第80光号」 【船体概要】
 全長66m、幅27m、深さ4.5m。船級55m級、排水トン数4,090t、連装数3基、総出力数4,600kW。
 巨大な3連装のリーダーを備えた地盤改良船は海底の柔らかい沖積層を貫き、強固な支持層に達する円柱状の砂杭を打ち込む。日本海工は3隻のSCP船を保有し、海上に建設される重要構造物を支えるための地盤改良工事を国内外で手掛けている。


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