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![]() 空気圧送船「AP−2100良成丸」船長 村上 正保(むらかみ・まさやす)氏 小島組に入社したのは1994(平成6)年で、25歳の時。当時、ホテルに勤務していたが、「会社で作業船乗組員を探していると父から聞き、好きな海で働くのもいいかなくらいの軽い気持ちで履歴書を書いた思い出があります」。その時、父は同社の空気圧送船「AP−1000良成丸」の船長を務めていた。会社は地元の愛知県内で大型プロジェクトを抱え、新たな作業船を造船し、船員を募集していた。 入社後、父の指揮する作業船に配属された。20以上も年の離れた先輩方に厳しくも可愛がられ、作業船の甲板での仕事を一つ一つ覚えていった。「まったく畑ちがいの転職だったので、全てが初めての体験でした。ロープやワイヤーの編込みなどは先輩乗組員のように上手くできず悔しい思いもしました。今となってはそれが糧となり良い経験になったと思います」。 入社3年後、新造船の空気圧送船「AP−2100良成丸」に父とともに転属。新造船では主に重機オペレーターを担当した。2003(平成15)年には父の跡を継ぎ船長に就いた。空気圧送船は、搭載した大型のバックホウで土運船が運搬してくる浚渫土をすくいあげてホッパーに投入し、排砂管を使って埋立地まで空気圧送する。なかでも同船はロータリーフィーダ式搬送機を搭載。ロータとケーシングの隙間を自動調節し、搬送効率の低下を防ぐ独自の機構が特長で効率的な土砂搬送が可能となる。 「大量の圧縮空気の力によって土砂を搬送するため、埋立地での余水を極力減らすことができ、埋立地周辺海域の汚濁を防ぐのがこの船の特長です。このため、環境には常に配慮するよう心がけています」。この方法を応用して、浚渫土とセメントミルクを混ぜ排砂管で空気圧送して高品質な改良土をつくり、それを埋め立てる固化処理システムも実現。空港島造成などに活用された。 これまで東海地方をはじめ、東北、関西、中国、九州と各地の港湾工事に携わった。今年4月からは愛知県発注の統合治水対策特定河川工事(全国防災)に従事している。「この工事は大雨等による出水時も河川の正常な流れを保ち災害を防ぐための工事です。浚渫する場所の水深が浅く、土運船が橋下を通過するため、通常より小型の土運船を使用しています。このため、船底部揚土時はアームシリンダーが土運船コーミングとわずか数センチしかなく、神経を集中させる作業となっています。ただ、災害を防ぐという社会的に意義のある仕事で、やりがいも感じます」。 親子二代で同じ作業船に乗り、船長を務めている心境を聞くと、「船長と言ってもまだまだ勉強中です。作業船に乗って20年以上経ちますが、情報通信技術や設備は進歩したものの、作業の技術や知識は先人の方々にはとても及びません」。さらに「幾つもの現場をやり抜けてきたのは強い信頼関係にある乗組員がいたからです。この苦楽を共にしてきた大切な仲間を無事に家族のもとに戻すことも私の役目。些細なケガもさせないように安全作業にいつも心がけています」。
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