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家島建設株式会社
フローティング・着底式ドック 「宏洋11000」 船長
松本 光広(まつもと・みつひろ)氏
 この仕事に就いたのは20歳の時、家島建設に勤めていた親戚に声を掛けられたのがきっかけだった。高知県出身で「もともと海好きだった」こともあって入社、まずはクレーン操縦の免許を取得した。「思い通りにクレーンが動かせるようになると仕事が楽しくなり、日本のあちこちに行けることも当時の自分には刺激的だった」と話す。
 入社から5年、25歳になって3,800トンのフローティングドック(FD)を初めて任された。若かりしころの自分を振り返り「船長という肩書に少し浮かれていたところがあったかもしれない。今なら間違いなく説教の対象」と笑みを浮かべる。仕事を積み重ねて失敗と成功を経験し、今の船「宏洋11000」に乗ったのは入社から10年が経過した30歳の時だった。
 巨大なFDを2人で切り盛りする。仕事で最も気を遣うのは船を接岸・離岸する時。「係留する港が違えば船をコントロールする方法も違ってくる。頭の中に思い描いた構図をタグボートに伝えるには経験が必要になる」。大胆かつ慎重に−。細心の注意を払いながら失敗を恐れず挑戦し続けたことが、結果的に成長の糧になったと感じている。
 宏洋11000の船長になって10年。2011年には茨城・鹿島港で仕事中、東日本大震災に遭遇した。「海上で上下にたたきつけられるような、初めて経験する揺れを感じた。船の設備もそのままに避難し、二日後に戻って無事を確認した時は、とにかくホッとした」と当時の思いを吐露する。
 40歳を超えた今も「仕事に対して絶対的な自信、満足は得られていない」と話す。「この船は設備的に見ても日本一のFDだと自負している。日本一に恥じない仕事をし続けることが自分の使命だ」と言い切り、成長の道を探り続ける。
 ドックの中で造ったケーソンを進水させた時は、何物にも代え難い充実感とやりがいを感じる。一方、台風の接近などで海が荒れた時は、大きく揺れる船の中で気が気でない時間を過ごす。「2年前と3年前には心配しすぎて円形脱毛症になった」という。ただどんなに苦労が多くても、途中で仕事を放り出したいと思ったことはない。
 「会社に入ったばかりのころ、その当時の船団長はことあるごとに背中を押してくれた。いつかは自分の手で、直接若い人を育ててみたい」。
 鹿児島・志布志港の後は、6月から宮崎・細島港での仕事が始まる予定。北海道に住む家族と会えるのは年に2〜3回で、8歳になったお子さんは「すっかりママっ子になってしまった」そう。仕事を理解してもらうためにも「いつか自分が任されている大きな船を子どもに見せる」のが、胸に秘めた思いだ。

フローティング・着底式ドック「宏洋11000」
【主要項目】 全長62m、全幅44m、渠内幅34m、渠内深さ23m、 最大沈下吃水26.9m、最大積貨重量11,000t
【主要設備】 主発電機300KVA・440V(2基)、ジブクレーン4.5t×35m〜12t×115m(2基)、ウインチ設備4台11,000トンの積貨能力を持つ国内最大級のケーソン製作用作業台船。作業内容に合わせてフローティング式、着底式のどちらにも対応する。ジブクレーンやウインチなどの設備も充実しており、大型ケーソンを効率よく、安全に製作できるのが特長だ。


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