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タチバナ工業株式会社
グラブ浚渫船兼起重機船「讃岐号」 船長
竹内 豊弘(たけうち・とよひろ) 氏
 海が好きで、幼い頃から船乗りになりたいと思っていた。香川県の地元の水産高校を卒業後、エンジニアの専門学校に通い、船舶のエンジニアを夢見ていた。だが、卒業時には希望した船舶会社の求人はなく、高校時代の同級生に誘われるままにタチバナ工業に入社した。
 「船に乗れると聞いたので入社したのですが、作業船がどのようなものかまったく知りませんでした」。初めに乗ったのは非自航船の浚渫船。船内にエンジンはなく、発電機の担当だった。「発電機といっても小さなもので、ほとんど仕事はなく、暇をもてあましていました。数日後、船長に呼ばれ、一級小型船舶免許を持っているなら揚錨船の助手をしてくれと言われ、その2カ月後にはクレーンオペレータの見習いを始めました」。
 思い描いていた仕事とは違っていたが、浚渫船のクレーンを毎日操っているうちに、その奥深さにのめり込んでいった。「入社して6年目頃だったと思います。卒業した水産高校の実習船に乗らないかという話がありました。待遇などの条件は良く、心が揺らいだのですが、その時にはクレーンを操るのが楽しくて、この仕事を続けたいと思いました」。
 クレーンの操作に熱中し過ぎて病気になったこともある。操作中にトイレにいきたくなると、クレーンを止めなければならない。それを避けるため、水分をできるだけ取らない生活を続けていた。「ある日、急にお腹が痛くなり、病院に行ったら、体内に石ができていました。医者にもっと水分を摂取しなさいと、しかられました」。ただ、その後も作業を止めるのがイヤで、何度も石ができた。
 35歳の時に初めて船長に就任した。グラブ浚渫船「鷲羽号」が担当だった。「プレッシャーでした。これまでも他の浚渫船よりも効率的に浚渫するにはどうすれば良いかをずっと考えていたのですが、船団を率いてすべて自分の責任でやるのかと思うと、心配でした」。浚渫作業はクレーンのオペレータだけでなく、スパットの操作、測量の3つの業務をいかにうまく連携させるかが重要となる。「とにかくそれぞれの担当者とコミュニケーションをとることを心がけました」。
 「讃岐号」は、新造された6年前から担当している。これまで瀬戸内海、関東、東北などの各地の港湾工事に携わってきた。今年4月から神戸ポートアイランドの泊地浚渫工事(−16m)を行っている。
 「船に乗っているのは全部で8人です。そのうち1人は料理担当ですから、実質7人で作業を行っています。新入社員の甲板員もおり、安全第一はもちろんですが、作業をどうやってやり抜くかということをいつも考えています。若い甲板員にいろいろな仕事を経験させたいと思うのですが、人数がぎりぎりで、なかなかできない。でも、浚渫船の仕事はきついところもありますが、経験を積むほど面白い仕事だということを若い人に伝えられたらと思っています」。

グラブ浚渫船兼起重機船「讃岐号」
浚渫仕様
 直巻能力 110t
 巻上ロープ速度 毎分0〜55m
 巻下ロープ速度 毎分0〜88m
 浚渫深度 水面下60m(全揚程66m)
 グラブバケット 32m3/58t(軟土用)
起重機仕様
 定格総荷重×作業半径  150.0t×18.7m
〜68.9t×34.4m
船体寸法
 長さ 60.0m
 幅 24.0m
 深さ 4.0m(船尾部4.3m)

「讃岐号」(グラブ浚渫船兼起重機船)
掘削時の汚濁水の流出を防ぐ、環境対応型密閉式グラブバケットや高精度な薄層浚渫が可能な新水平掘制御装置を装備。クラス最長の40m×1.3m丸形スパッドを船体中央両舷に、船尾部には40m×1.5m角形スパッドを配置し、大深度や狭い水域でも掘削が可能。

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